日本軍はなぜ負けたのか
太平洋戦争で日本軍が負けた理由を組織論から考えさせる授業。

日本軍がアメリカ軍に負けた最大の理由は、国力の違いである。
しかし、それだけではない。連戦連敗を繰り返した最大の理由は、日本軍が持つ組織上の欠点にあった。それは,失敗に学ぶ仕組みがなかったからである。
太平洋戦争で日本はなぜアメリカに負けたのか。4つの戦いを元に考えます。
まず、ミッドウェー海戦。ミッドウェー諸島にあるアメリカ軍基地を占領することが目的でした。戦力的には圧倒的に有利。ところが、あることを十分に行っていなかったため、敵空母の待ち伏せに気づかず、日本の主力空母を4隻も失ってしまいました。
あることとは何ですか。
・偵察
この結果、日本軍は太平洋上での主導権をアメリカに渡します。
次に、ガダルカナルの戦い。大本営の陸軍は、ガダルカナル島にアメリカ軍が上陸したという情報を得ました。陸軍内では、その島の名前を知っていた者は 誰一人いませんでした。
あなたが陸軍の幹部ならまず何をしますか。
・偵察
ところが、すぐに900名陸軍の先遣隊を送り、攻撃を仕掛けました。3日で全滅です。敵のアメリカ軍は13000名もいたのです。その後、次々に部隊 を送り込みましたがいたずらに敗戦を重ねるだけでした。
アジアに目を向けてみましょう。インパール作戦。インドのイギリス軍を攻撃することが目的でした。ところが、日本軍の動きを察知したイギリス軍は、国境付近の部隊を引き上げさせ、日本軍を待ち伏せする作戦をとりました。
日本軍はイギリスの動きに気づいていたと思いますか。
・いない
その結果、日本の補給路は2000メートル級の山脈にさえぎられ、食料もなく素手で戦わなくてはならなくなりました。歴史的な大敗でした。
最後にレイテ沖海戦。アメリカのフィリピン侵攻を阻止するのがねらいでした。その日本軍にすばらしい情報がもたらされました。台湾沖航空戦では、空母を11隻撃沈し、8隻を大破したという情報がもたらされました。
この情報を信じられますか。
信じた日本軍は総攻撃を加えました。ところがアメリカの空母は健在だったのです。主力艦隊であった栗田艦隊は、途中で戦闘を放棄して戻ってしまったのです。
4つの戦いから、日本軍の組織にはある共通した欠点がかることがわかります。何ですか。
・情報収集を怠る。
4回も同じような失敗をしているのです。気がついた人はいなかったのでしょうか。
ガダルカナル島の戦いに参加した川口少将。彼は、「日本軍の戦力が貧困である。敵戦力の強大(航空支援、火力、電波探知機等)である。」と進言しました。
彼の進言は取り上げられたと思いますか。
腰抜け呼ばわりされて、罷免となりました。
インパール作戦の佐藤師団長。「このままでは自滅する。」と無線を打ち独断で撤退しました。佐藤師団長はどうなったと思いますか。
通常なら軍法会議にかけられるべきですが、精神錯乱とされてしまいました。このようにして下からの意見は、ほとんど無視されました。
では、司令官の責任はどうだったでしょう。
インパール作戦で3万人もの将兵を失った。牟田口中将は、その後どうなったと思いますか。
陸軍士官学校長に就任しています。ミッドウェー海戦の南雲中将は新しい艦隊の司令長官。敵前で反転をした栗田中将も海軍士官学校の校長になっています。
情報収集の欠落、現場の声の無視、あいまいな責任体制。このような組織上の欠陥を持っていたため日本軍は失敗に学ぶことができない組織になっていたのです。日本軍がアメリカに負けたのは、国力の違いが最も大きかったでしょう。しかし、こうした組織の欠陥も敗因の1つになっていたのです。
戦後、60年がたちました。現在、日本には、さまざまな組織があります。
日本の組織は、日本軍が持っていた組織上の欠陥を克服していると思いますか。
現場からの意見を積極的に取り入れて大成功を収めた企業もあります。どこですか。
・トヨタ自動車
日本が今後も発展を続けていくには、技術とそれを支える組織が重要となってくるのです。
参考文献「失敗の本質」中公文庫