着衣水泳-浮いていれば命が助かる-
着衣泳は.命を守るために行う指導です。衣服を着たまま水に落ちてしまった場合は.まずは助けが来るまで水に浮いていられるということが大切です。

1. 着衣泳の基礎基本
着衣泳はいうまでもなく,命を守るために行う指導である。
衣服を着たまま水に落ちてしまった場合は,まずは助けが来るまで水に浮いていられるということが大切である。岸まで泳いでたどり着くということも大切ではあるが,高度な技能を要する。
したがって,着衣泳の基礎基本を
水に浮いていること
ととらえる。
2. 授業の実際
3・4年合同で着衣泳の授業を行った。以下は,その際の授業の記録である(「楽しい体育の授業」№139の村田斎氏の論文をもとに授業を構成した)。
最初に次のような話をする。
日本人は,世界の中で水の事故にあって死ぬ人の割合が一番多いのです。
服を着て泳いだらどうなるかを経験していない人が多いからです。
今日の勉強は,命を守るための,とっても大切な勉強です。
シャワーを浴び,体をよく拭いたあとで衣服を着させる。長そで,長ズボンでの学習が効果的である。
プールサイドに腰を下ろして,ゆっくりとプールに入りなさい。
ゆっくりと歩いて,向こうの岸まで歩いていきます。タッチしたら戻ってきなさい。
いま,体がとっても重く感じて動きにくかった人,手を挙げなさい。
ほぼ全員挙手した。
こんな状態で泳ごうとしたら,重くて重くて前に進めません。クロールなんかしたら,溺れてしまいます。
真剣に話を聞いている子供たち。
こういうときは,長い時間浮いていて,助けが来るのを待っているのがいいのです。
実際に沼なんかに落ちてしまった時,ペットボトルなどが投げ捨ててあるかもしれません。
ペットボトル1本で命が助かるのです。
ペットボトル1本を使って浮いていられる方法を考えてみなさい。
30秒浮いていられたら合格です。
子供たちは,ペットボトルを抱えてのラッコ浮きや,ペットボトルを枕のように使って浮く方法を見つけた。
このような方法があることを子どもたちに紹介する。
上手に浮かんでいた子4人に,見本としてやってもらう。
友達が間違って深い沼に落ちてしまいました。あなたはどうやって助けますか(村田氏の追試)。
友達が水に落ちても,絶対に自分から水に飛び込んで助けようとしてはいけません。
みんなができる一番いい方法は,つかまって浮いていられるものを投げてあげることです。
ペットボトルでなくても,ボールやランドセル,スーパーのレジ袋でもいいのです(村田氏の追試)。
ペアになって,ペットボトルを投げ渡す練習を行う。
岸まで自力でたどり着けそうな場合は,泳ぐということも考えられます。
でも,服が邪魔をして上手に進むことができません。
そんなときは,水中で服を脱ぐのです。
それでは,水中で服を脱いでみなさい。
子供たちは,なかなか脱げなくて苦労している。
高学年ならば,脱いだ服のそで口などを縛って浮き袋を作らせることも考えられる。
実際に水に落ちてしまった時は,パニックになってしまいます。
そんなときは服を脱いでいる間に,水に溺れてしまう可能性も高いのです。
だから,やはりさっきやったように何かにつかまって浮きながら助けが来るのを待っているほうがよいですね。
3. 最後に
着衣泳を実施する学校が最近増えてきている。しかしながら,それは普段の水泳学習のおまけ程度としかとらえられていない。
日本人の溺死者数は他の国に比べて異常に多い。
子供たちの命を守るためには,6年間しっかりと系統立てて指導していく必要がある。
まだまだ教師の意識が低いと言わざるを得ない。