なぜ政党は連立を組むのか~政党政治と連立政権~
政党政治における政策決定の過程を、モデルと実際の政治を通して学習する。

【1】政党とマニフェスト
同じ政策の実現を目指してつくる政治団体を政党といいます。
「今仮に、りんご党、ぶどう党、バナナ党、メロン党、みかん党という政党があったとします。」
パソコンで次の表を示す。(議員数は空欄にしておく)
政党名 議員数 選挙で当選したら実行すると約束した政策
体育着の色 昼食の形式 朝の時間
りんご党 200人 赤 弁当 座禅
ぶどう党 180人 青 給食 読書
バナナ党 120人 黄色 給食 学習
メロン党 30人 緑 弁当 学習
みかん党 70人 オレンジ 給食 学習
各政党は、選挙で当選したら実行すると約束した政策をもっています。
この政策を何というか知っていますか。
「マニフェスト」「公約」である。
生徒から出なければ、教師が説明する。
(「選挙で当選したら実行すると約束した政策」の欄を「公約(マニフェスト)」と書き換える)
みなさんは、どの党を支持しますか。
30秒で決めなさい。
関心のある話題なので、真剣に考える生徒が多い。
あちこちで友達と相談する姿が見える。
では聞きます。りんご党がいい人?(挙手) ぶどう党? バナナ党? メロン党? みかん党?
結構盛り上がる。
選挙の結果、りんご党は200人、ぶどう党は180人、バナナ党は120人、メロン党は30人、みかん党は70人の議員が当選しました。
生徒の挙手数とは無関係に示す。(表の議員数の空欄をうめる)
【2】政策の決定(多数決)
この議員たちが体育着の色について話し合います。何色に決定しますか。
「赤です」
「その通り。多数決で赤が一番多いですね」
では昼食の形式は何に決まりますか。
「給食です」
「給食がいいという議員は何人ですか」
「370人です」
「弁当がいいという議員は何人ですか」
「230人です」
朝の時間は何に決まりますか。
「学習です」
「学習がいいという議員は何人いますか」
「220人です」
「座禅がいいという議員は何人いますか」
「200人です」
「読書がいいという議員は何人いますか」
「180人です」
【3】与党と野党
議会では話し合いの結果、一番議員数の多い、つまり支持者の多いりんご党の意見が通ることになります。このように政権を担い、公約を実行していく政党を与党といいます。それ以外の党を野党といいます。
それでは野党の役割は何ですか。
「与党の政治を監視し、国民の意見をより反映できるように政治を修正すること」
「与党の政策を批判して、自分の政党の政策の方がよいことを国民にアピールすること」
生徒から意見が出てこなければ、教科書の本文から探させる。
【4】連立政権
「体育着の色は赤に決定するはずでした。でも野党のメロン党の議員は、どうしても赤だけは嫌だと思っていました」
メロン党の議員が、赤を阻止する方法はありますか。
「他の党と協力する」
メロン党は本当は緑の方がいいのだけれど、赤よりは青の方がいいと考え、青を支持することにしました。青を支持する議員は何人になりますか。
「210人です」
「赤を支持する議員は200人なので、体育着の色は青に決定します」
このままでは、赤を支持していたりんご党は負けてしまいます。りんご党は、どうすると思いますか。
「他の党と協力する」
りんご党はバナナ党に協力を求めました。青よりは赤がいいと考えたバナナ党は受け入れることにしました。赤を支持する議員は何人になりますか。
「320人です」
「青を支持する議員は210人なので、体育着の色は赤に決定します」
青を支持していたぶどう党とメロン党は、どうすると思いますか。
「みかん党に協力を求める」
赤よりは青がいいと考えたみかん党は、青を支持することにしました。青を支持する議員は何人になりますか。
「280人です」
「赤を支持する議員は320人なので、一歩及びませんでした。従って体育着の色は赤に決定します」
【5】過半数
このように多数決で話しが進められる議会では、半数以上の支持を得た意見は何でも通ることになります。
この議会には全部で600人の議員がいます。半数以上ということは、最低何人の指示が必要なのですか。
「300人」
「惜しいっ」
「301人」
「その通り。300人だと、300対300で同数になってしまうことがありますね」
このように半分を超える数のことを過半数といいます。600の過半数は301です。
【6】実際の政治
平成5年、第40回衆議院議員選挙。議席の合計はで511でした。(政党名、党首、議席数を一覧にした表を示す)
過半数はいくつですか。
「256です」
第一党は自由民主党、議席は223でした。他の党に比べて議席数は圧倒的でしたが、過半数には届いていませんでした。
その自民党に対抗する政党はどうしたと思いますか。
「他の党と協力する」
社会党、新生党、公明党、民社党、社会民主連合は連立を組みました。でも合計195議席で一歩及びません。
この連立グループはどうしたと思いますか。
「残りの政党に声をかける」
日本新党と新党さきがけにも連立に加わるように呼びかけました。そして7つの政党による大連立グループが成立しました。議席数は243。ついに自民党を逆転して、与党になりました。このような複数の政党によってつくられた与党を連立政権といいます。日本新党の細川さんがこのグループを代表して、内閣総理大臣になりました。
平成8年、第41回衆議院議員選挙。議席の合計は500でした。(政党名、党首、議席数を一覧にした表を示す)
過半数はいくつですか。
「251です」
第一党は自民党、議席は239でした。さらに社民党と新党さきがけと連立を組みました。議席の合計は256。この時点で過半数を超えました。自民党の橋本さんが総理大臣になりました。
平成17年、第44回衆議院議員選挙。議席の合計は480でした。(政党名、党首、議席数を一覧にした表を示す)
過半数はいくつですか。
「241です」
第一党は自民党、議席は296でした。この時点で過半数を超えていましたが、さらに公明党と連立を組みました。議席の合計は327。自民党の小泉さんが内閣総理大臣になりました。実はこの327という数字、総議席の3分の2である320を超える数でした。衆議院で3分の2以上の議席があれば、参議院で否決された意見も再可決することができます。つまり、どんな意見も通すことができる数字だったのです。
余裕があれば、現在の政党、議席数も確認するとよい。