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高校倫理「青年期」アイデンティティ拡散の危機

□D表25級の頃に作成したコンテンツをブラッシュアップしたものである。
□高校生は、青年期・思春期の発達段階であり、自分とは何か、自己を形成する発達段階である。倫理の授業は、人間とは何か?自分とは何か?など、人間観・人生観を形成するうえで大切な科目である。自分が何者であるかを確立することを「アイデンティティの確立」という。自分が何者であるかという「アイデンティティ」は、自分だけでなく、他者からの承認なくして、形成されない。その一方で、そのような他者からの承認がなければ、自己を見失ってしまう。これを「アイデンティティの拡散の危機」という。では、どうやって、その拡散の危機を乗り越えて生きていけばいいのか。今回の倫理の授業では、自己の悩みを乗りこえて、生徒が成長していくきっかけをつかむ授業にしていきたい。

〈授業の展開〉

指示 . 1

前回の復習をします。ノートに①から⑥と書いてごらんなさい。

発問 . 1

子供が大人に向かう時期を何といいましたか?

指示 . 2

①の横に書きなさい。

*書くのがゆっくりな生徒に対しては、語句が書いてある教科書の箇所を指で示す。

発問 . 2

はい、何といいましたか。

指示 . 3

○○さん。(*生徒と目線をにっこり合わせて指名する)

青年期

*続いて、②から⑥も復習クイズを行う。

説明 . 1

青年期には、自分が何者であるかを考えていくことが大事でしたね。そのためには、自分がどういった自分なのか。自分がどうしたいのか、などを自覚することが大切です。

発問 . 3

このように、自分が自分であること。カタカナ8文字で何といいますか?

指示 . 4

教科書から見つけてごらん。

指示 . 5

はい。(*個別指名する)

アイデンティティ

説明 . 2

そう、アイデンティティ。では意味を確認するよ。

発問 . 4

アイデンティティとはなんですか?

指示 . 6

教科書を見ながらで構いません。横の人に説明してごらん。

説明 . 3

自分が何者であるのか。例えば、私はAであるなど。自分が何者であるのかを確立すること。これをなんとかの確立といいます。さっき出たカタカナです。

発問 . 5

何の確立というかな?

指示 . 7

予想で言ってごらん。( *個別指名を行う)

アイデンティティの確立

発問 . 6

それでは、どうやったら、自分が何者であるのかを自覚できるかな?

指示 . 8

はい、近くの人と意見を出し合ってごらんなさい。

(例)自分の得意は美術だ。だから、絵を描くのが自分は得意だ。

説明 . 4

様々な意見が出ましたね。

発問 . 7

それでは、自分のことを自分が理解した。これだけで、自分を理解したことになるでしょうか?

発問 . 8

ちょっと難しいけど、どう思いますか?

指示 . 9

○○さん。

(例)ならない。

発問 . 9

では、自分だけでなく、誰が理解したらいいかな?

指示 . 10

また近くの人に意見を言ってみて。

(例)周りに認められての自分 など

発問 . 10

同じように考えた人?

*教師が挙手をして、教室全体を見まわし、生徒たちの挙手を促す。

(同じように考えた人は挙手をする)

説明 . 5

人間とは、自分が自分を見つめ、自分とは何なのか、どんな人物なのかなどを自覚すること。それから、他人から見て自分はどんな人間なのか。そういったことによって、自己、つまり自分というものをつくっていきます。

発問 . 11

例えば、○○さん。○○さんに質問します。○○さんは、何の教科が得意ですか?

(例)「数学です」

説明 . 6

ここで、自分が数学が得意だということを自分でわかる。つまり、自覚するということになるよね。更に、例えば、周りから見て、「○○さんは数学が得意だよね」って言われたとしたら、「なるほど、やっぱり自分は数学が得意だ」となりますよね。

説明 . 7

こういったように、人間とは、自分が自分とは何かを見つめること。自分から見た自分。そして、他人から見た自分とは。こういったことによって、自己・自分というものをつくっていきます。

発問 . 12

これを、「○○○○○○○○の確立」いいました。カタカナ8文字が入るよ。何の確立でしたか?

指示 . 11

言えそうな人は、言ってごらん。(*生徒たちに目線を送り、教室全体に発問を投げかける。)

アイデンティティの確立

説明 . 8

でも、その一方で、うまくいくことばかりじゃ…ないよね。人間の社会では、とくに他人との関わりでは、悩みもあると思います。

発問 . 13

例えば、人間。どんな悩みがありそうかな?

指示 . 12

○○さん。 (*列指名で2、3名に問いかける)

(例)人間関係がうまくいかない。

説明 . 9

それで、もし悩みが解決したら大丈夫。でももしも、悩みが解決しなかった場合。

発問 . 14

悩みがどうしても解決しなかったら、皆さんなら、どんな気持ちになりそうですか?

指示 . 13

言えそうな範囲で、気持ちを言ってみてください。 (*2名ほどに指名する)

(例)どうしたいいかわからない、落ち込む。自暴自棄になりそう。

説明 . 10

つまり、自分がどうしたいのか、わからない状態になることがあるんだよね。時には自分を見失ってしまう人もいるかもしれません。

説明 . 11

これは、青年期の課題でもあると述べた学者もいるそうです。青年期が自分を見失い、精神的な危機に陥ってしまうことを、何とかの拡散の危機というんです。

発問 . 15

さっきの確立の反対です。何の確立というでしょうか?

指示 . 14

予想で、カタカナ8文字。言ってごらん。(*個別指名をする)

アイデンティティの危機

発問 . 16

自分を見失う、自暴自棄になる。皆さんはそのようになりたいですか?

(例)絶対に嫌です。

発問 . 17

じゃあ、悩みが解決しない。悩みがたくさんある。そういった場合、皆さんはどうやってその悩みを解決していきたいですか?

指示 . 15

近くの人に意見を言ってみてください。

(例)周りの信頼できる人に相談してみる。

説明 . 12

皆さんも、青年期の時期。これからの成長の時期にあって、様々な悩みや、時には他人との衝突もあるかもしれません。そんななかでも、自分はどんな人間なのか。自分の良さは何か。よりよく自分を見つめて、また他人との関わりのなかで、どのように自分をつくっていけばいいのか。今回の授業が、そのきっかけになったらいいなと思っています。

指示 . 16

では、次回は「現代社会の変容と青年」についても見ていきましょう。