短歌に親しむ/短歌を味わう(2024)
【授業時間:5時間】
・短歌を分析するための観点を教え、自力で分析できるようにする。
・分析の観点を習熟できるように、教科書の掲載順を変えて扱う。

1 「蛇行する――」
68ページ。最初の説明を読みます。
6行の説明を一斉音読する。
短歌はどんなリズムですか。(五七五七七)
全部で31文字なので、昔はこれを「三十一文字(みそひともじ)」と言いました。
68ページの短歌を読みます。自由な読み方で読んでごらん。
各自で読ませる。
「四季の変化に…」から鑑賞文を読みます。
「…添えています。」まで一斉音読する。
同様に、あとの4首も短歌と鑑賞文を音読していく。
蛇行する川には蛇行の理由あり急げばいいってもんじゃないよと 俵万智
自由な読み方で音読しなさい。
数名当てて区切り方を確認する。
この短歌に「 」(かぎかっこ)を付けるとしたら、どこに付きますか。
・蛇行する川には蛇行の理由あり「急げばいいってもんじゃないよ」と
・蛇行する川には蛇行の理由あり「急げばいい」ってもんじゃないよと
・「蛇行する川には蛇行の理由あり急げばいいってもんじゃないよ」と …等
理由を聞き、確定できるなら「授業での解」を確定する。「各自の解釈は自由」という前提を押さえておく。
「 」の言葉を言っているのは誰ですか。
・川
・蛇
・神
・他の人
・作者 …等
自由に意見交換させ、考えをノートにまとめさせる。
この短歌に「 」を付けるとしたら、次のようになる。
蛇行する川には蛇行の理由あり「急げばいいってもんじゃないよ」と
この「 」の言葉は、……の言葉だと考える。
なぜなら……
2 「夏のかぜ――」
夏のかぜ山よりきたり三百の牧の若馬耳ふかれけり 与謝野晶子
前回同様に、自由な読み方で読ませ、区切り方を確認する。
・夏のかぜ山よりきたり/三百の牧の若馬耳ふかれけり
・夏のかぜ山よりきたり/三百の牧の若馬/耳ふかれけり …等。
「三百」と「たくさん」では、どちらが良いと思いますか。
理由と共に隣近所で話し合わせ、全体で発表できる生徒に発表させる。
P69の鑑賞文を読み、「数詞」という言葉を囲ませて意味を押さえる。
話者はどこにいますか。
・牧場
・山(頂上、ふもと)
…等。
「牧場にいる」という証拠があります。どの言葉ですか。
「きたり」です。山から風が「来た」と言っているので、牧場にいると考えられます。
話者の視線(=見ているもの)はどのように移動していますか。
山→若馬→耳
この短歌の表現の工夫についてまとめて書きます。
「数詞」か「視線の移動」のどちらかを選んで書かせる。
この短歌に使われている表現の工夫について説明する。
それは( )である。
……(数詞か視線の移動について説明する)
3 「くれなゐの――」「死に近き――」
くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる 正岡子規
前回同様に、自由な読み方で読ませ、区切り方を確認する。
「くれなゐ」「二尺」「春雨」など、難しい語句の意味を確認する。
この短歌にはどんな表現の工夫が使われていますか。
「数詞」が出れば良い。前回の学習を活用できていることを褒める。
「やはらか」なのは何ですか。
・薔薇の芽の針
・春雨
両方出るだろう。それぞれ理由を意見交換させ、全体で発表させる。
どちらの意味にも解釈できます。この「あいまいさ」が、この短歌の表現の工夫です。わざとあいまいな表現にすることによって、自由な解釈を可能にしています。
死に近き母に添寝のしんしんと遠田のかはづ天に聞ゆる 斎藤茂吉
前回同様に、自由な読み方で読ませ、区切り方を確認する。
鑑賞文を音読し、短歌が詠まれた状況を確認する。
「しんしんと」とは何のことですか。
・「かはづ」の声
・夜が更けてゆく様子
…等
この二つは、鑑賞文に書いてありますね。他にありませんか?
さらに考えさせると、「作者の悲しみ」などが出る。
この短歌も、「しんしんと」という言葉のあいまいさによって、いろいろな解釈を可能にしています。
どちらかを選んで、短歌に使われている表現の工夫について書きなさい。
「○○○○○――」の短歌に使われている表現の工夫について説明する。
それは( )である。
……(意味のあいまいな言葉について説明する)
4 「鯨の世紀――」
鯨の世紀恐竜の世紀いづれにも戻れぬ地球の水仙の白 馬場あき子
前回同様に、自由な読み方で読ませ、区切り方を確認する。
「恐竜の世紀」とはいつごろですか。(何億年か前)
「鯨の世紀」とはいつごろですか。
鯨は今でもいますが、地球に現れたのは何億年か前ですね。
鑑賞文の中で、「鯨の世紀恐竜の世紀」のことを表している言葉は何ですか。
・遠い昔
・とてつもなく長い時間
・大きな時間
「長い時間」「大きな時間」と対比されているのは何ですか。
・一滴の時間
・小さな時間
これらを表しているのは短歌のどの言葉ですか。(水仙の白)
この短歌では、これらの対比が表現されています。
「いずれにも戻れぬ」の主語は何ですか。
・地球
・時代
・自分
…等
この短歌の表現の工夫について説明を書きなさい。
この短歌に使われている表現の工夫について説明する。
それは対比である。
……(対比されている言葉とその意味について説明する)
この対比によって、……ということを表現している。
5 短歌を味わう
72ページの短歌を読みます。
五七五七七で区切りながら、読み方と作者名を確認していく。
区切り方によって解釈が変わりますから、区切り方は自由です。
この中から一つ選んで、表現の工夫について鑑賞文を書きます。
それぞれの短歌のポイントについてヒントを教える。
・「白鳥は――」 … 対比、話者の心情
・「不来方の――」 … 話者の心情、数詞
・「のぼり坂の――」 … 「 」の使い方、話者と「子」の関係
・「ぽぽぽぽと――」 … 「ぽぽぽぽ」のあいまいさ
・「観覧車――」 … 対比、話者と「君」の関係、数詞
・「ゼラチンの――」 … 「満ちる」のあいまいさ
難しい言葉の意味についてはタブレットで調べても良いことにする。
フォーマットを示し、これまで学習したことを活用して書くように伝える。
【生徒の作品】
白鳥は――
この短歌の情景について説明する。
白鳥は真っ白なため、青く澄んだ空や海の青さにとけ込めず悲しいということが読み取れる。このことから、白鳥は海と空のどちらの青さにも馴染めず、空と海の境目を弱々しく飛んでいると考えられる。
句切れは二句切れ。
この短歌に使われている表現の工夫について説明する。
まず、対比を使っているところである。白鳥の白さと海や空の青さを強調していることにより、この短歌の情景によく合うようになっている。
次は、空の青と海のあをと表しているところである。青とあをとで表すと、色が違うことがより分かりやすい。ただし、この短歌は残念ながら、2種類の青にも溶け込めない悲しみを表している。
【生徒の作品】
ぽぽぽぽと――
この短歌の情景について説明する。これは秋によく見られるうろこ雲やひつじ雲の下で子供たちが遊びに行く情景だと考えられる。
句切れは二句切れで「雲浮き」のすぐ後で区切れると思う。
次に、この短歌に使われている表現の工夫について説明する。
まず、最初の「ぽぽぽぽ」の部分である。これは目に見えているものを音のように表現することで相手にどんな雲が浮いているのか、イメージしてもらいやすくするための工夫である。
さらに、「子供」の下に「ら」がついていることから複数人いることがわかる。たぶん作者さんの子供+友達と考えられる。