「スイミー」実践記録(令和2年度版教科書)
光村図書2年(上)の物語教材「スイミー」の実践記録。言語活動として、討論と紹介文づくりを行った。令和2年度版教科書に対応させ「あらすじ」指導も行った。

教材研究
スイミーの主題について、都留文科大学の鶴田清司氏は『「スイミー」の〈解釈〉と〈分析〉』(絶版)の中で、次の三つにまとめている。
① 仲間がみんなで力を合わせること(協力・連帯)の大切さ
② 主人公が悲しい体験を乗り越えて集団のリーダーとして変化・成長したことのすばらしさ
③ 一人ひとりの個性や資質のちがいが仲間全体の力を高めることになること
2年生の授業で直接主題を扱うことはしないが、3つの主題が読み取れることを教師がを頭に入れておくことで、子どもの感想や授業での話し合いを広げたり、多様な読み方・考え方を提示したりすることができる。
また、表現の要素として、次のような特徴がある。
・文末表現が常体となっていて、ひきしまった感じがする。
・文が短く、文体が常体で締めくくられているため歯切れがよく、リズムがある。
・比喩表現が多く用いられている。子どもたちが情景を想像しやすい。
・倒置法が用いられていて、緊迫感や心情の強調効果を発揮している。
・体言止めが用いられていて、歯切れのよさや余韻を残す効果をもっている。
これらの特徴も、頭に入れておきたい。
■1時間目・・・単元のゴールの設定
黙読、読み聞かせ、初発の感想(考えたこと、思ったこと、はてな)
【単元のゴールの設定】
「お家の人に、スイミーをしょうかいしよう」
家の人に、スイミーを紹介するために、スイミーにお話をまとめたり、内容について考えていくことを予告する。
■2時間目・・・音読
追い読み、一人読み、リレー読み、個別評定を行った。
■3時間目・・・スイミーは、どんな魚か(登場人物について)
単元のゴールは、「スイミーの紹介」である。
・登場人物
・あらすじ
・考えたこと
これが、紹介の骨格である。
まずは、登場人物のことから取り上げた。
スイミーは、どんな魚ですか。
子どもたちば、冒頭に書いてある体の特徴を挙げる。
「一ぴきだけ まっくろ」
「およぐのは、だれよりもはやい」
他には特徴はないか尋ねると、内面について挙げた子がいた。
内面・心の特徴を見付けさせた。
以下、子どもたちの意見である。
・さみしがり
・そうぞう力がある
・心がつよい
・あたまがいい
・ゆう気がある
・リーダーてきそんざい
・あきらめない
子どもが挙げたことに根拠があるか、検討を行った。
【さみしがり】
一ぴきだけになって、海のそこをおよいでいるとき、「さびしかった」「とてもかなしかった」と書いてある。
【そうぞう力がある】
「にじ色のゼリーのようなくらげ」「水中ブルドーザーみたいないせえび」「ドロップみたいな岩」「わかめの林」「もも色のやしの木みたいないそぎんちゃく」と書いてある。
【心がつよい】
一ぴきだけになったけれど、だんだん元気をとりもどした。
【あたまがいい】
大きな魚のふりをしておよぐことをかんがえた。
【ゆう気がある】
みんなに「出てこいよ」と言っている。大きな魚をおい出した。
【リーダーてきそんざい】
大きな魚のふりをしておよぐことを、魚のきょうだいたちに教えた。
【あきらめない】
スイミーはかんがえた。いろいろかんがえた。うんとかんがえた。
教科書から根拠を見付けられたことを褒めた。
単元のゴールは、スイミーの紹介である。
スイミーについて、体の特徴の他に心の特徴について家の人に特に伝えたいと思ったことを二つ選ばせ、「そして」「さらに」という接続語つかって、スイミーを紹介する文をノートにまとめさせた。
【スイミーの紹介例】
スイミーは、一ぴきだけまっくろで、だれよりもはやくおよげる魚です。
そして、あきらめない心をもっています。
さらに、ゆうきをもっています。
■4~5時間目
初めて「あらすじ」という学習用語を教える。
人物がしたことや出来事を中心に、お話を短くまとめたものを、あらすじと言います。
あらすじを書くのは、初めてである。
2年生にとっては、難しい。
短くまとめさせるために、「つぎに」「そして」「さいごに」という言葉でつなぎ、4文であらすじを書かせた。
練習として、子どもたちが知っている「桃太郎」と「大きなかぶ」であらすじをみんなでつくってみた。
~桃太郎の例~
【人物の紹介】
桃太郎は、川から流れてきた桃から生まれました。
【あらすじ】
桃太郎は、おじいさん、おばあさんの家で、すくすく育ちました。
つぎに、おにたいじに行くことになりました。
そして、さる、いぬ、きじをなかまにしました。
さいごに、おにをたいじして、たからものをもらいました。
~おおきなかぶの例~
【人物の紹介】
おじいさんは、おばあさん、まご、犬、ねこ、ねずみとくらしていました。
【あらすじ】
おじいさんは、かぶのたねをうえて、大きなかぶになりました。
つぎに、かぶをぬこうとしたのですが、ぬけません。
そして、おばあさん、まご、犬、ねこ、ねずみと力を合わせてひっぱりました。
さいごに、かぶはぬけました。
そして、スイミーのあらすじ。ワークシートを使用した。

個人学習→グループ学習→全体学習という流れで学習を進めた。
~スイミーの例~
【人物の紹介】
3時間目に各自がノートにまとめたこと
【あらすじ】
スイミーのきょうだいたちは、まぐろにおそれて、のみこまれてしまいました。
つぎに、スイミーは、海ですばらしいものをいろいろ見て、元気をとりもどしました。
そして、スイミーとそっくりな魚のきょうだいを見つけました。
さいごに、みんなで大きな魚になって、まぐろを追い出しました。
■6~7時間目・・・討論
初発の感想で次のように書いた子がいた。
「さいごに、大きな魚をおい出せてよかったです。」
子どもたちに尋ねた。
「どうして、大きな魚をおい出すことができたのですか。」
協力して、大きな魚のふりをしたからだと、子どもたちは答えた。
「どうして、大きな魚のふりをすることができたのですか。」
スイミーがいて、目になったからだと、子どもたちは答えた。
ここで、主発問である。
スイミーは、どうして目になることができたのですか。
自分の考えをノートに書かせ、発表させた。
出された意見を4つに分類した。
【A】一ぴきだけ まっ黒だったから。
【B】はやく およげるから。
【C】リーダーてきそんざいだから。
【D】ちえがあるから。
一番、重要な理由は何ですか。
AからDを選ばせ、その理由を書かせた。
その後、討論を行った。
以下、子どもたちの意見である。
【A】一ぴきだけ まっ黒だったから。
・スイミーが黒くなかったら、目になれない。
・大きな魚の目がなくなってしまう。
・赤い魚は、だれもかわりができない。
・体が黒いから「ぼくが目になろう」と言っている。
【B】はやく およげるから。
・スピードのちょうせいができる。
【C】リーダーてきそんざいだから。
・じぶんで かんがえられる。
・「スイミーはおしえた」と書いてある。
・みんないっしょにおよぐことを、かんがえた。
【D】ちえがあるから。
・大きな魚をおいだすほうほうを かんがえた。
・じぶんが目になること、おもいついた。
・リーダーてきそんざいになるためには、ちえがひつよう。
討論の後、Cに意見を変えた子がいた。
「リーダーがいないと、大きな魚になれない。」
「スイミーが教えて、魚になれた。みんなをまとめていた。」
話し合うことで、見方・考え方が広がる。
そのことのよさを子どもたちに伝えた。
最後に、自分の考えをノートのまとめさせた。
■8~9時間目 ・・・ 紹介文を書く。
3~7時間目までにノートに書いてきたことをもとに、紹介文を書いた。
【紹介文の構成】
人物の紹介(3時間目)
あらすじ(4~5時間目)
どうして魚を追い出すことができたのかの考え(6~7時間目)