「長恨歌」と『源氏物語』の読み比べ指導ー「翼をならべ、枝をかはさむ」の解釈
「長恨歌」の表現が『源氏物語』に取り入れられていることを理解させ、「翼をならべ、枝をかはさむ(桐壺)」の解釈に活用させる。2つの文章を読み比べて特徴を考えさせることで、共通テスト対策も兼ねる。

「長恨歌」で「天に在りては願はくは比翼の鳥と為り 地に在りては願はくは連理の枝と為らん」を学習した後、『源氏物語』「桐壺」の一節を提示する。(以下の部分をプリントにして配布した。部分的に現代語訳もさせた。詳しくは添付ファイル参照。)
(帝は)亡き人の住み処尋ね出でたりけん、しるしの釵ならましかば、と思ほすも、いとかひなし。
たづねゆくまぼろしもがなつてにても魂のありかをそこと知るべく
絵に描ける楊貴妃の容貌は、いみじき絵師といへども、筆限りありければ、いとにほひ少なし。太液の芙蓉、未央の柳も、げに、かよひたりし容貌を、唐めいたるよそひはうるはしうこそありけめ、なつかしうらうたげなりしを思し出づるに、花鳥の色にも音にも、よそふべき方ぞなき。朝夕の言ぐさに、翼をならべ、枝をかはさむと契らせ給ひしに、かなはざりける命のほどぞ、尽きせずうらめしき。
「長恨歌」と比べて気づいたことを言いなさい。
楊貴妃の例が引用されている。共通する言葉がある。
「長恨歌」が土台になっている言葉をできるだけたくさん見つけて線を引きなさい。
①釵 ②魂 ③楊貴妃 ④太液の芙蓉、未央の柳 ⑤翼をならべ、枝をかはさむ ⑥尽きせず恨めしき など。
⑤翼をならべ、枝をかはさむ を現代語訳しなさい。できた人はノートを持ってきます。
各自の答えを黒板に書かせる。
例1 いつも一緒にいよう(5点)
例2 変わらない愛情を持っていよう(10点)
教師は10点満点で評定する。ポイントは「(深い)愛情」である。根拠は、「長恨歌」の注釈である。(明治書院の場合)
二本の木の枝が結合し、理(木目)が連なった枝。「比翼鳥」と共に、男女の深い愛情を例える。
解答例「いつまでの深い愛情を交わそう(と約束なさったのに)」
このように、『源氏物語』には「長恨歌」をもとにした表現がたくさんあります。
「長恨歌」と比べて、他にどのような特徴がありますか。
いったんノートに書かせて発表させる。生徒から出なければ、「異なる部分はありますか。」と発問すればよい。以下の部分である。
唐めいたるよそひはうるはしうこそありけめ、なつかしうらうたげなりし
(楊貴妃の唐風の装いは端麗だったけれど、桐壺更衣は親しげがあってかわいらしかった)
「長恨歌」をモチーフとしつつ、アレンジも加えたのが『源氏物語』なのですね。