秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる(藤原敏行)
藤原敏行の短歌「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」を,サークルで模擬授業しました。

教材の短歌を提示した。
秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる
3回音読したらすわりなさい。
音読の後,歌の大意を説明した。
「さやかに」は「はっきりと」という意味です。
「おどろく」はびっくりするという意味ではなく,「はっと気がつく」。
秋が来たことははっきりと見えないが,風の音に,はっと気がついた…という意味になります。
話者は,秋の訪れを何によって感じたのですか。漢字1文字で書きなさい。
答えは「風」ですね。
立秋の頃を,別名「涼風至(りょうふういたる)」といいます。
歌の世界では,立秋には涼しい風が立ち始めるというのが常識なのですね。
この歌は,その常識をふまえて作られています。
あなたは風の音を聞いたことがありますか。
聞いたことがあるという人に「それはどんな音ですか。」と問うと,「ビュービュー」や「ゴー」という答えが返ってきた。
秋は来たのですか,まだ来ていないのですか。
全員が「来た」と答えた。(が,児童相手の授業なら「来ていない」と答える子も多いだろう。)
「来ているのですね。この歌には『秋立つ日よめる』という詞書つまり前書きが付いています。立秋に詠んだ歌なのです。」
この歌の日は風が強いでしょうか。
「強いとは考えられませんね。風が強く吹いていたなら,木々がゆれていて,秋が来たと目にもさやかに見えたでしょう。」
風の音が聞こえるときとは,どんな天気ですか。
「台風のとき」「風が強いとき」という答えが返ってきた。
「普通は風の音なんてあまり聞こえませんよね。」
話者が見ているのは夏の風景ですか秋の風景ですか。
立秋は,今の暦でいうと8月7日か8日。
暑い暑いときです。
秋が来たと目にはさやかに見えないのですから,まだ夏の風景なのですね。
やはり,風がビュービュー吹いているとは考えにくいですね。
では,「風の音」とは何でしょう。
・風鈴の音
・風によって動いた草の音
・実際に聞こえた音ではなく,風を肌で感じた。
という意見が出た。すべて認めた。
「『風の音』とは,ヒューヒューとかゴーとかいう音ではなく,今出た意見のようなものだったのかもしれませんね。」