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秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる(藤原敏行)

藤原敏行の短歌「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」を,サークルで模擬授業しました。

教材の短歌を提示した。

秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる

指示 . 1

3回音読したらすわりなさい。

音読の後,歌の大意を説明した。

説明 . 1

「さやかに」は「はっきりと」という意味です。
「おどろく」はびっくりするという意味ではなく,「はっと気がつく」。
秋が来たことははっきりと見えないが,風の音に,はっと気がついた…という意味になります。

発問 . 1

話者は,秋の訪れを何によって感じたのですか。漢字1文字で書きなさい。

説明 . 2

答えは「風」ですね。
立秋の頃を,別名「涼風至(りょうふういたる)」といいます。
歌の世界では,立秋には涼しい風が立ち始めるというのが常識なのですね。
この歌は,その常識をふまえて作られています。

発問 . 2

あなたは風の音を聞いたことがありますか。

聞いたことがあるという人に「それはどんな音ですか。」と問うと,「ビュービュー」や「ゴー」という答えが返ってきた。

発問 . 3

秋は来たのですか,まだ来ていないのですか。

全員が「来た」と答えた。(が,児童相手の授業なら「来ていない」と答える子も多いだろう。)
「来ているのですね。この歌には『秋立つ日よめる』という詞書つまり前書きが付いています。立秋に詠んだ歌なのです。」

発問 . 4

この歌の日は風が強いでしょうか。

「強いとは考えられませんね。風が強く吹いていたなら,木々がゆれていて,秋が来たと目にもさやかに見えたでしょう。」

発問 . 5

風の音が聞こえるときとは,どんな天気ですか。

「台風のとき」「風が強いとき」という答えが返ってきた。
「普通は風の音なんてあまり聞こえませんよね。」

発問 . 6

話者が見ているのは夏の風景ですか秋の風景ですか。

説明 . 3

立秋は,今の暦でいうと8月7日か8日。
暑い暑いときです。
秋が来たと目にはさやかに見えないのですから,まだ夏の風景なのですね。
やはり,風がビュービュー吹いているとは考えにくいですね。

発問 . 7

では,「風の音」とは何でしょう。

・風鈴の音
・風によって動いた草の音
・実際に聞こえた音ではなく,風を肌で感じた。

という意見が出た。すべて認めた。
「『風の音』とは,ヒューヒューとかゴーとかいう音ではなく,今出た意見のようなものだったのかもしれませんね。」