議院内閣制における行政のしくみ~大統領制と比較して考える~
東京書籍の教科書『新しい社会・公民』を使った授業である。日本の政治(行政)がどのように行われているか、国会との関係(議院内閣制)を意識しながら学んでいく。

教科書78ページを開きなさい。
行政という太字を丸で囲みます。
行政とは何ですか。
教科書に27文字で説明が書かれています。見つけてアンダーラインを引きなさい。
「国会が決めた法律や予算にもとづいて、国の政治を行うこと」
その通り。その行政の各部門を指揮・監督しているところを内閣といいます。
内閣のリーダーは誰ですか。
「内閣総理大臣」
テンポよく確認していく。
教科書の続きを読む。
「今日、行政の活動は、わたしたちの生活のすみずみにまでおよんでいます。景気の安定や雇用の確保などの経済政策・・・・」
今読んだところに番号を振ります。教科書に書き込みなさい。
①景気の安定や雇用の確保などの経済政策、
②道路建設などの公共事業、
③医療や年金などの社会保障、
④公害規制や環境保全、
⑤教育・文化の向上、
⑥消費者保護
教科書の資料3「国のおもな行政機関」を指で押さえなさい。
今、教科書の本文に書き込んだ①~⑥の仕事は、「国のおもな行政機関」の中のどの機関が担当していると思いますか。
ノートに予想を書いてごらん。
正解は以下のようになる。(①経済産業省、②国土交通省、③厚生労働省、④環境省、⑤文部科学省、⑥消費者庁)
ただし①に含まれている「雇用の確保」は、厚生労働省の仕事である。補足説明した。
このように、聴いたことのある省庁の名前と具体的な仕事がリンクしてくると、イメージが出来上がってくる。
内閣総理大臣から任命された国務大臣が、たいてい各省の長になります。
ところで、現在の内閣総理大臣は誰ですか。
フルネームで、できれば漢字で、ノートに書いてごらん。
「えー」
意外と書けないものである。
「日本の総理大臣だよ。知らないの?」
と、あおる。
正解した生徒がいれは、おおいにほめて、黒板に書かせる。
安倍晋三さんは、どうやって総理大臣に選ばれたのでしょうか?
これも知らない生徒が多い。
「国民から選挙で選ばれた」なんて答えを平気で言う生徒がいる。
安倍総理は、国民の選挙で選ばれたわけではありません。
では、誰が選んだのですか。
すぐに答えが出てこなければ、「既に習いましたよね」とヒントを与えてもよい。
私が教えているクラスでは「国会の仕事」を暗唱させているので、それを復唱させた。
みんなで言います。国会の仕事。法律の制定、予算の審議・議決、内閣総理大臣の使命。(続きがあるが、ここまで)
「あ、国会だ」
その通り。総理大臣は国会議員の中から、国会議員が選びます。普通は国会で多数を占めいている与党の党首が選ばれますから、もしA君が総理大臣になりたければ、まず選挙に当選して国会議員になること、それからその中で信頼を得て与党の党首になることが必要です。
ところで、アメリカの行政のリーダーは、総理大臣とはいいません。
役職名は何ですか。
「大統領」
大統領は、国民から直接、選挙で選ばれます。こうすることで、立法権と行政権を分けています。これに対し、日本のようなやり方を議院内閣制といいます。立法権と行政権の結びつきが、より強い制度です。
議院内閣制と大統領制は、どちらがよいと考えますか。
議院内閣制、大統領制、どちらか選んでノートに書きなさい。書けた人は、理由も書くのですよ。
十分な時間をとってから、指名なしで発表させる。
「大統領制の方がいいです。行政のトップは直接国民が選んだ方がよいと思うからです」
「議院内閣制の方がいいです。なぜなら、国会と内閣の対立が少なく、政治が安定しそうだからです」
「大統領制の方がいいです。国家権力が分かれている方が、どちらかが暴走しても食い止めることができそうだからです」
どちらも一長一短であることが理解できればよい。
教科書の資料4「日本の国会と内閣の関係」の図を見なさい。
内閣は、国民から選挙で選ばれた国会の信任に基づいて成立し、国会に対して連帯して責任を負います。
このようなしくみみを何といいますか。
「議院内閣制」
念のため、もう一度確認した。
国会は、内閣の行う行政が信頼できなければ、内閣不信任の決議を行うことができます。これに対し内閣は、衆議院を解散して総選挙を行い、国民の意見を問うことができます。このように議院内閣制では、お互いに抑制し合いながら、国民の意見を反映し、安定した政治を行うことができるように工夫されているのです。
最後に教科書の資料「国会と内閣の関係」の図をノートに写させて授業を終えた。