俳句の可能性2
中3光村「俳句の可能性」の実践。鑑賞文の「型」の視写から始め、徐々に自分で書く量を増やしていくことで、生徒が自分で鑑賞文を書くことができる。(TOSS福井推薦) No.6823701 http://wiki.tossfukui.net/wiki.cgi/ronbun?action=ID&b=ziCnx8NuNMKEYIuhE2G8hg 原実践:村上睦先生 コンテンツ作成:福原正教

概要
中3光村。野澤節子「せつせつと眼まで濡らして髪洗ふ」の句で、内容の読み取り、鑑賞文を扱う。教師が書いた鑑賞文を視写させ、自分で書ける生徒には自分で書かせた。2回目なので、自分なりの鑑賞文を書ける生徒が増えた。
内容の読み取り
板書
せつせつと眼まで濡らして髪洗ふ 野澤節子
ノートに写したら小さい声で3回読みなさい。
その後、追い読み、一斉読みで数回読む。
全員起立。覚えたら座りなさい。
季語は何ですか?
「せつせつと」「濡らして」「髪洗う」が出る。
「髪洗う」であることを教える。
季節はいつですか?
「夏」
作者は何をしているのですか?
髪を洗っている。
(俳句はほとんど作者=話者なので、ここでは特に区別せずに扱った。)
作者はどんな思いで髪を洗っているのでしょうか?
ノートに書かせて持ってこさせ、板書させる。
・暑いのでさっぱりしたい(多数)
・悲しい気持ち(2名)
補足
季節が夏であることを押さえた上で考えさせたので、「暑い」というイメージが強くなったと考えられる。
この句のポイントは「せつせつと」という言葉です。
「せつせつと」とはどういう意味ですか?
辞書を調べさせた。
・心に強くせまる様子
漢字で書くと「切々と」であることも確認する。
「切々と」の「切」は切実の「切」です。何か心に迫るような強い思いがある様子を表しています。
もう一度考えます。作者はどんな思いで髪を洗っているのでしょうか?
列指名で聞いた。
ほとんどが「悲しい気持ち」という答えであった。
補足
「作者のおかれている状況を、いろいろ想像して考えなさい」と指示したが、単に「悲しい気持ち」という答えがほとんどであった。
鑑賞文
たとえば、こんな想像をしてこの句を読むこともできます。
鑑賞文を配る。
前回と同じく、400字詰め原稿用紙の右側(200字)に教師が書いた鑑賞文を載せてある。
鑑賞文
作者は、人生の大きな悩みにぶつかっている。たとえば結婚を選ぶか仕事を選ぶか、というような重大な悩みである。髪を洗いながらも、そのことが頭から離れない。閉じた目を伝って流れ落ちる水も気にならないほど、そのことを強く思い続けているのである。
悩みが頭から離れないということは、「せつせつと」という言葉から分かる。「せつせつと」とは、「心に強くせまる」という意味だからである。
これを参考にして、自分なりの鑑賞文を書くように指示する。
生徒の鑑賞文
作者は、戦争の時代の人で、自分は助かったが家族はみんな死んでしまった。保護された場所で髪を洗っている時、家族のことを思い出し、目から流れる水も気にならないほど、家族のことを思い続けているのである。(以下略)
毎日ふろにも入らず仕事も休み、病気の夫のいる病院で夫を側で見守っていた。だがついに夫は死んでしまう。一人静かな家に帰り、ふろに何日も入っていないことに気づく。久しぶりに髪を洗おうとすると、シャワーも浴びていないのに顔がぬれていることに気づく。ふろに入ってさっぱりするものの、心はまだどんよりくもったままである。
補足
鑑賞文をそのまま写した生徒が約4分の1、少しアレンジして書いた生徒が約4分の3弱、自分なりの鑑賞文を書いた生徒が4名であった。