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漢字の字源をさぐる〜「鳥」をもとに

「鳥」という漢字をもとに、漢字の字源を探りながら漢字について勉強していく。(福島ML推薦) No.1116139 http://www.d3.dion.ne.jp/~kenbun/ko/kannzi%20tori.htm
原実践者 薄井健文 (コンテンツ作成 大輪真理)

法則化シリーズ/国語/漢字文化

漢字の字源をさぐる~「鳥」をもとに

福島法則化アンバランス TOSS会津 薄井 健文

これは山田一氏の実践「漢字の語源をさぐる~石井順治氏の構想修正追試」の紹介である。

出典 : 第12期教育技術の法則化122 6年(1)ーこどもが生き生きと取り組む教育技術

この授業は、『シリーズ授業① 国語1 漢字の字源をさぐる』(岩波書店)に
紹介されたものである。実施記録および授業考察などが含まれていた。

追試をしようと思った理由は、次の二つである。

その1 授業以前に学級の話題となったこと。
(子どもの毎日帳に漢字の字源に関する追求がなされ、
それを学級に紹介したことから。)

その2 6年生として、漢字の成り立ちに興味を持たせ、
形成文字・会意文字のあることを理解させたい。
この実験を追試することで、それが可能となると考えたからである。

以下、追試したことを述べる。

1.集という漢字の成り立ちを考える(カードによる提示)

発問 . 1

これは、何でしょう。

子どもたちは、最初「冬」という字に似ているといっていたが、鳥であることを知らせた。

発問 . 2

では、これは何でしょう

これは、すぐにわかった。全員木だと答えた。

発問 . 3

では、これとこれを合わせたら、何という字になるでしょう。

なかなかすぐには、わからなかったようだが、
挙手した子を指名して、「集」という字であることがわかって
なるほどと思った子が、多かった。

説明 . 1

(「集」というカードを貼って)あのね。隹も鳥なのです。この字
(鳥)がだんだん変化していって、こんなふうになったのです。

発問 . 4

集まるの上の部分に似ていますか。

確かに似ていることを確認し、次の発問を行った。

発問 . 5

どうして「鳥」に「木」で「集まる」という字になったのだろうか。

次のような意見が出された。
C1 鳥が木にたくさんいる様子を表している。
C2 鳥は、木にとまるし、たくさんいるという様子を集まるという字にした。
 そこで、次のような説明を加えた。

説明 . 2

昔の字は、次のような形になっていました。
つまり、隹(鳥)が1羽でなく、3つも書かれています。
これは、たくさん鳥が木にとまっている様子を表しています。
それを、簡単にするために隹が一つになったのです。

なるほどといった子どもが多かった。

2.「鳩」という字の字源をさぐる

発問 . 6

では、つぎの字は、読めるかな。

口々に「ハト」と読んでいた。「ハト」と読むことを確認して、次の発問をした。

発問 . 7

どうして「鳩」という字が、こんな字になったのでしょう。

子どもたちの意見を書くと
①キュウカン鳥の仲間だから
②形から(右図参照)
③ハ(八)ト(十)で、九がぬけているから
④どこか体の一部に九がついている
⑤九というのは、大群で多いことを示す。
 (いつも群れている。)
⑥クックと鳴くから九とつけられた。

「この中に正解が1つあります。さて、なんでしょう。」
という教師の発言から、
さらに子どもたちは、どれかさがそうと懸命だった。

説明 . 3

正解は、⑥です。中国の人が、鳩という漢字を作るときに、
く、きゅっきゅっきゅっという鳴き声から漢字をさがした。
その時に、九という漢字があったので、これを借りてきて、
鳥と組み合わせて鳩という漢字にした。
「はと」というのは日本語で、日本人は
「はと」だけれども、向こうでは「はと」とは言わないからね。
つまり、この九は、鳴き声を表します。

同様に、「鵝」・「鴨」の字についても鳴き声であることを示しておいた。

3.「集」と「鳩」の成り立ちの違いをおさえる

説明 . 4

「集」は、「隹」の部分は、鳥を表していましたね。
下は、木でやっぱり意味を表していますね。
両方とも意味を表しています。
でも、鳩という字は、音と意味を表しています。
つまり、この二つの文字は、作り方が違います。

4.漢字を二つのグループに分ける

次の漢字をカードに書いて、提示した。(黒板)

男 鳴 林 仲 思 花 靴 貨 島

指示 . 1

この中の漢字を、意味を表す漢字(集)のグループと
意味+音(鳩)のグループに分けなさい。

ノートに漢字のグループを書かせ、その後、発表してもらった。

それぞれ理由を示し、発言させたかったが、
時間が少なかったので、説明することにした。

説明 . 5

<意味>のグループは漢字の成り立ちが、次のようになっています。それに対して、<意味+音>のグループは、それぞれ「化」が、音を表しています。
 「化」は「化ける」という意味を持っています。
草が化けると「花」
革が化けると「靴」
貝が化けると「貨」
となります。

このように、「集」のように意味を表した漢字でできたものを会意文字といいます。また、「鳩」のように、意味と音の両方を表したものを形成文字といいます。

つまり、漢字の作り方に、違いがあるわけです。

ここで、授業を終えようとした。
すると、子どもたちから質問が出された。
「先生、島はどちらにはいるのですか?」と。

5.「島」はどちらのグループ?

「島」は会意文字だと思いますか。それとも、形成文字だと思いますか。

挙手してもらった。
 会意文字派・・・16名
 形成文字派・・・3名
 どちらかわからない派・・・7名
圧倒的に会意文字が多かった。そこで、次のような説明をした。

説明 . 6

会意文字だという理由は、鳥(渡り鳥)が、山で休む場所を表すということから
考えたのではないかと思います。

また、形成文字の人は、意味だけでなく、
トウという音も何か関係があるのではないかと考えたのではないでしょうか。

例えば 鳥(チョウ)→島(トウ)
     潮(チョウ)→

波間に浮かぶ山のようなものといった意味でしょうか。

実は、これは、漢字の研究者の中でも、意見の分かれるところだそうです。
したがって、?でおいておこうと思います。

以上で、授業を終えた。

<エピソード>

この授業を終えて、いくつかのよかった点および改善すべき点を述べておきたい。
 
 この授業のよかった点

① 漢字の成り立ちについて、子どもが興味を持つようになった。
② クイズ的な要素もあり、楽しく学習できた。
③ 子どもの発想のおもしろさに触れることができた。

反面、次の点で困った。

① 授業記録を読んで追試したので、発問や発言が、明瞭にわからなかった。
② 論文を書く上で、非常に困った。(発問、指示など)
③ 授業を追試しようとしたが、構想修正追試する結果となった。

そこで、困った点についてのみ考察を加えたい。
どこを修正追試したのか。

この組み立ての相違点としては、

(ア) (4)の班での発表か、一斉学習の中でグループ分けをさせるか。
(イ) 「島」を出すタイミング。

(2)のステップか(1)のステップか。

この点について少し述べておく。

(ア)については、子ども1人ひとりが、主体的に調べたものを発表させるという
意味においては、班での発表も有効である。
しかし、1時間で授業をということになると、それは無理である。
私は、(4)の方法をとることにした。

ただ、問題としては、グループ分けの際に内容が多すぎて、
検討する時間が少なくなったことは、事実である。
導入の部分をもう少し短縮するか、
または、「集」という漢字をいきなり持ち出して、
成り立ちについて問うといったことも考えられる。

(イ)については、石井氏の実践では、
「島」という漢字をどこまで扱っているかというと、
(1)と(2)で、島について関連あるものを扱っている。
そうした類として(1)・(2)のステップの後に、
かくされた問題として扱われている。

それは、子どもにとって興味ある問題であり、
そこで扱うしか方法はないように考えられる。
しかし、せっかく投げかけられた問題であっても、
子どもたちは、すぐに結論を知ることはできない。
いわば、おあずけ状態となる。

それよりも、分類分けの中から、「島」はどちらにといった方が、
自然ではないかと考える。
やはり、授業の組み立て方が異なれば、
こうした問題提示のタイミングも異なるのである。
 「島」という漢字については、漢字学者の間でも意見が分かれるといったエピソードは、分類、漢字の世界の奥行きを感じさせる上でよかったと思う。