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『夜明け前』『雪国』書き出しの一文を「視点のちがい」で授業する

向山学級四代目学級通信「スナイパー」??309に迫る10分間プラン。第8回静岡大集合の会IN浜松での模擬授業実施後の修正プラン。(TOSS静岡ML推薦) No.1117194 http://www4.ocn.ne.jp/~namiko/sitennnotigai2.htm

木曾路はすべて山の中である。」『夜明け前』島崎藤村
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」『雪国』川端康成
例えばこの二つの文の文体のちがい、視点のちがい、そして自然主義文学と新感覚派文学との対比などを授業してみたいものだ。この二つの文のちがいを見とれる力を育てたいと思う。
         向山学級四代目学級通信「スナイパー」№309(東京教育技術研究所)より

<提示>木曽路はすべて山の中である。

指示 . 1

2回読んだら座ります。全員起立

説明 . 1

主に明治期に活躍した島崎藤村という文豪の「夜明け前」という小説の書き出しの一文です。

指示 . 2

目を閉じなさい。どんなものが見えるか想像しながら聞きましょう。(ゆっくりと読む。)

指示 . 3

見えたもの全てノートに書きなさい。
(列指名。・道 ・木曾路 ・山)

指示 . 4

話者の位置(視点)を図に書きます。例を書くので、そのようにノートに書き、話者を目玉(提示)で書きます。なぜ、そう考えたのか、理由も書きなさい。
(何人か黒板に書いてもらう。それぞれの意見のおおよその人数を知りたいので、挙手させる。おかしいと思われる意見が出たら、それでいいのか確かめていく。)

A派:木曾路全てが見えるところだから、遠く離れて上から全体を見下ろしていると考えられる。
B派:Bのように、木曾路に沿って、歩きながら書いたものと考える。
   既に木曾路は全て山の中にあると知っているのであれば、あえて全体の見えるところにいる必要はない。

説明 . 2

話者が道沿いにあるとすれば、「木曾路」というように大きな言葉を使わない、やはり道筋がかなりの距離みえていることとなるので、Aと考えるのが妥当である。
(*H15年6月22日開催の「第8回静岡大集合の会IN浜松」の模擬授業後の感想アンケートで、「Bを否定するのは納得できない。」という意見を数人からいただいた。理由は次である。
 ・木曽路全体が見える位置でなければならないとは断定しきれない気がする。
 ・木曽路を知り尽くしているが話者ならば、空から見なくても良いのではないか。
 なるほどと思った。Bを全く否定することはできないと感じた。)

<提示>国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

指示 . 5

2回読んだら座ります。全員起立。はい。

説明 . 3

これは、昭和期に活躍した川端康成という文豪の「雪国」という小説の書き出しの一文です。

指示 . 6

目を閉じなさい。何が見えるか想像しながら聞きましょう。(ゆっくりと読む。)

指示 . 7

見えたもの全て、ノートに書きなさい。
(列指名。・寂しい里の村  ・山  ・トンネル ・汽車  ・雪国  ・雪に覆われたいなかの風景)

指示 . 8

話者の位置(視点)を図に書きます。例を書くので、そのようにノートに書き、話者を目玉(提示)で書きます。
(何人か、黒板に書いてもらう。それぞれの意見のおおよその人数を知りたいので、挙手させる。おかしいと思われる意見が出たら、それでいいのか確かめていく。)

A派:「トンネルを抜けると」とあるので、話者も汽車といっしょにトンネルを抜けなければならない。汽車の中だと言える。

指示 . 9

今から、「視点のちがい」について、ノートにまとめなさい。
できるだけ、詳しく書くんですよ。ノートいっぱい書けるといいですね。

指示 . 10

指名なし発表をします。机を中央に向けなさい。自信が無い人から発表しましょう。

・木曾路では、上から見ているが、雪国では中に入り込んでいた。
・木曽路は、遠くから広い範囲を見ているが、雪国では自分の視界に入ったい部分だけ見ている。
・木曽路では、上からある一定の場所で見ているが、雪国では、汽車に乗ったまま動きながら見ている。
・木曽路は、「説明」風で視点がないように見える。
・木曽路は三人称客観視点、雪国は一人称視点。

<参考>・教育トークライン 1999月号 4月号
        向山型「分析批評」の授業作り 第37回 「文学」の違いを書き出しで授業する 伴一孝
      ・第3回「『法則化』向山洋一DEEP研究会」課題レポート 1999.01.14(木)
        TOSSLANDナンバー1117003より(http://www.try-net.or.jp/~katazuka/d2.htm)
      ・「分析批評」の授業の組み立て方  浜上薫著 明治図書