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日本神話の読み聞かせシリーズ7「国ゆずり」

国土建設の大国主命と天の神の使いであるたけみかずちの神の国ゆずりの交渉です。どんな取引が行われたのでしょう。

伊邪那岐命、伊邪那美命の国生みで誕生した豊葦原の中津国の国造りは、須佐之男命、ついで大国主の命の活躍で進められていました。
 一方、高天原では、国造りのために、国の中心となる神を地上に下さねばならないときが来ました。しかし、地上の国はまだ荒ぶる神が多いのをごらんになって、会議を開き、先に天菩比命に様子を見るためにつかわすことにしました。
 天菩比命が地上にくだって何の連絡もないまま3年が経ってしまいました。そこで、神々はまた会議を開き、今度は、天若日子を遣わすことにしました。
 ところが、天若日子も自分の役目をすっかり忘れて、大国主の娘、下照姫と結婚し、自分が国を治めたいと思うようになりました。
 そこで、神々はまた会議を開き、鳴女(なきめ)というキジをつかわすことにしました。鳴女は天若日子の家の門の近くにある桂の木に止まり、天の神の言葉を伝えました。天若日子は不吉に思い、天の神から授かった弓矢でキジを射殺してしまいました。その矢はどんどん進んでいき、高天原にいる高御産巣日神の前に落ちました。高御産巣日神は矢を手にして
「この矢は、私が天若日子に与えた矢だ。この矢を正しいことにつかったならば天若日子に当たらない。もし、邪悪な心で使ったのなら、天若日子にかえるだう」
 矢は、下界に飛んでいき、天若日子の胸に命中しました。
 今度こそしっかりした使いを送りたい。誰がいいだろうか。神々は相談して、剣のような強さと勇気、岩のような動じない落ち着きを備えた建御雷神を降らせることにしました。建御雷神は、大国主の命に伝えました。
「我々は天照大神の命令を受けて高天原からやってきた。地上の国はまだまだ平和とは言えないが、あなたの治める出雲の国は土地が開かれ、人々も平安に暮らしている。地上の神々の代表のようなあなたが、まず天の神の気持ちをくんで天照大神の御子がこの国の中心者として治めることに賛成してもらえないだろうか。」
 大国主の命は、子供の神々と相談した結果、
「この国はおっしゃるとおり譲ります。ただ、私の住まいを立派なものにお造り下さい。そして、私をお祭り下されば、天の神をお守りし、国の発展に力を尽くしましょう。」
 建御雷神はこのことを天の神に報告すると、高御産巣日神から、返事が返ってきました。
「大国主の命よ。あなたは国造りに大変努力した。しかも、その国を自分の物とはせず、譲り渡そうとした。それはあなたの国を一層立派にしていきます。望み通りあなたの社を作ってお祭りしよう。」
 こうして出雲の国に壮大な神殿が出来上がりました。