学習カードはこう作る
学習カードは個人差を吸収し.全ての子どもに最適な運動を保証するシステムのひとつであるといえます。

1. 学習カードはシステムである
体育の授業では,学習カードがよく使われる。
では,何のために学習カードを使っているのか。
それは,極論すれば個人差に対応するためであると考える。
体育の学習では個人差が出る。個人差がが出ると,学習意欲がわかなくなる子供たちもいる。自発的に学習しなくなってしまうのである。
個人差に対応し,子どもが一人で学習していけるように学習カードを構成すればよいのである。
つまり,学習カードは個人差を吸収し,全ての子どもに最適な運動を保証するシステムのひとつであるといえる。
2. 学習カードはこう作る
では,どのようなカードを作ればよいのだろうか。
根本正雄氏は次のように述べている。
1. 学習の筋道がわかるようにする。
2. どんなめあてで学習するかがわかるようにする。
3. どんな方法で学習すればよいかがわかるようにする。
『日本教育技術方法大系第10巻 体育科指導大事典』
習熟過程が見えるようにしなければならないということである。運動の系統性を子どもに示し,見通しをもたせるのである。
学習の筋道が分からない。どんなめあてを立てればよいかもわからない。そして,どんな方法で学習していけばいいのかもわからない。このような状態では,体育の学習はできない。
子供たちが学習カードを見たときに,運動のステップ,習熟過程が示してあれば,めあてを立てやすい。
自分がいまどの段階までできているのかがわかる。
そして,その実態に応じて各自の課題を設定し,めあてを立てるのである。
どの子も同じ運動をするのではなく,一人一人が自分の課題を応じて運動していく。
また,教師はその課題が適切かどうかを確認する必要があるだろう。
また,習熟過程が細かく示してあれば,伸びがわかりやすい。
根本氏は次のようにまとめている。
1. 技のステップを細かくしておく。
2. ステップに照らして,伸びを発見する。
3. 伸びを子どもに知らせて,ほめる。
個人差がある場合には,伸びを認めてほめていくことが大切である。ほめられれば子供たちの意欲は増す。他人と比較ではなく,自分の力を伸ばすのである。
3. 学年の特性に応じて作る
根本正雄氏は,低学年の学習カードは,多様な動きづくりを目指した内容にすると述べている。
低学年の学習内容は,基礎感覚づくり,基礎技能づくりが中心である。
そのため,
一つの運動ができるまでのスモールステップを示すよりも,一つの運動につながる基礎的な動きをたくさんできるようにしていく
『体育授業技術入門』根本正雄著
のである。
低学年の子どもには,言葉で示しても分かりにくい。そのため,絵や図・イラストなどを使って学習カードを作成していく。
具体的な絵・図・イラストの方がどもにとっては分かりやすく,意欲が高まるという。
できるようになった動きは,色を塗っていく。色を塗ることによってできたか,できなかったかの評価ができる。
「いろいろな動きを作る」というねらいが,色を塗ることによって達成されていく。
根本氏は,低学年の学習カードの原則として,次の2点を挙げている。
1. イラスト,絵を多くする
2. 色を塗ったり,シールを貼ったりする
中・高学年の学習カードになると,また別である。根本氏は,次のような原則を挙げている。
1. スモールステップにする
2. 手順・方法を示す
子どもが運動したいと思うのは,自分がやってできそうだと思ったときである。
したがって,スモールステップにして示すと効果的が増す。ステップが粗いと意欲が低下する。
ステップが小さくなっていると自分のめあてがつかめる。自分の能力に合わせて,課題が選択できるので,個人差が吸収できるのである。
ステップが小さくても,運動の手順や方法がわからなければ学習ができない。
学習のポイントが示してあると,運動しやすい。
一つの課題が達成できたら,次の課題に挑戦できるようになっているとよいのである。
4. 台上前転の学習カード
以上の点に留意して,台上前転の学習カードを作成した。
拙著『台上前転新ドリル』P.131を参照していただければ幸いである。