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原則を使えば,要約は誰でもできる③

向山型要約指導。説明文編。その3.

意味段落の要約をしました。
 これまでは,形式段落の要約でした。
 形式段落から意味段落にシフトチェンジしても,作業の枠組みは同じです。
 手続きは一つ増えますが。
 形式段落の要約は,次の流れで進んでいました。
【形式段落の要約作業】
 ① 親文をさがす。
 ② キーワードをさがす。
 ③ 一番重要なキーワードを決める。
 ④ キーワードをつなげて文を作る。
   ※ 20文字以内
     最重要キーワードが文末。
 意味段落の要約は,①の前にもう一つ作業が入ります。
「親段落をさがす」という作業です。
 親段落とは,意味段落の中で,「まとめ」にあたる段落です。
 子ども達に教えました。
「説明文は,はじめ・なか・おわりに分かれている」
「『はじめ』や『おわり』には,まとめや筆者の主張が書かれている」
「『なか』には,例が書かれている」
「意味段落も,組み立ては同じ。意味段落の中で『はじめ』『なか』『おわり』がある。親段落には,『まとめ』や『主張』が書かれている。そして,たいてい最初か最後の段落にある」
 もちろん,これらだけを説明したわけではありません。
 これまでの要約作業の中で,タイムリーな時に子どもに話して聞かせました。
 意味段落の要約は,意味段落[4]➉⑪⑫⑬で教えました。

教材文

⑩ 寒冷地にすむ動物は,防寒用のすぐれた毛皮を身に着けている。
⑪ ニホンカモシカは,日本の山がく地帯にすんでいる。ニホンカモシカの冬毛は,実にりっぱである。体から直角に毛が立つように生えているのだ。カモシカたちは,雪がふっているのに,物かげにも入らず,雪にうもれてすわっているときがあるが,その毛を見ると,なるほど,寒さ知らずなのだろうと思う。
⑫ 毛によって,外気と皮ふの間に空気の層が作られ,外気の温度のえいきょうを直接受けないようになっているのである。
⑬ すぐれた毛皮を身に着けているのは,寒い地方にすむ動物だけではない。先に挙げたフェネックなども,その体の表面は密生した毛におおわれている。寒い地方の動物の毛皮が防寒用であるのに対して,フェネックなどの毛皮は,強い太陽熱から身を守り,かんそうした空気によって,水分が体の表面からうばわれるのを防ぐ役目を果たしているのである。

やりかたは,いつもと同じです。
 音読の後,次のように言いました。
「➉から⑬全部を要約しなさい」
「え~」と子ども達。
「これも20文字ですか?」と子ども達。
「これも20文字です」
「え~」と子ども達。
 教室は,どよめきましたが,それでも,みんな果敢に挑戦してきました。
 いつもどおり,ものの5分で黒板は要約いっぱいになりました。
 子ども達から,出た要約は,ざっと次の○種類ありました。
A 寒冷地の動物の防寒用の毛皮。
B 雪や熱から身を守る動物達の毛皮。
C 身を守る毛皮。
 文末が,最重要キーワードになっていない子もけっこういましたが,それでも,三つのカテゴリーのどれかの要約になっていました。
 黒板が埋め尽くされた後,どれがもっともふさわしい要約か,意見交換をしました。
 その後,私が問いました。
「親段落は,どれですか?」
 ➉という意見と,➉⑬という意見に分かれました。
 ➉⑬のグループの主張は,こうです。
「毛皮の役目について,➉は,寒地だけ。暑いところも必要だから,⑬もまとめ」
「そのとおり!」「たいしたもんだ!」と告げて,言いました。
「Cも大きくは違っていない。これに,つけ足したら,完璧な要約になる。何?」
 ある子が言いました。
「暑さ,寒さです」(お見事)
「暑さ,寒さをつけて,要約してごらんなさい」
 次の要約を完成させて授業を終えました。

暑さ寒さから身を守る毛皮。

次の時間は,[5]⑭~⑳で練習をしました。要約スキルが上達しています。