あなたもできる!力をつける「向山式ノート指導」
向山式ノート指導を追試すると、子どものノートはがらりと変わる。 板書を写すだけの退屈で消極的なノートから、自らの意思を盛り込んだ積極的で楽しいノートに変貌する。 それだけではない。楽しく熱中してノート作業する過程で、ほとんどの子が要点をまとめる力を培える。 No.1700010 http://plaza.harmonix.ne.jp/~kawata3/jissen/note-sidou/note-sidou0.htm
一 向山式ノート指導の概要
向山氏は、ノート指導の概要を次のように紹介している。
1 一単元を見開き二ページでまとめさせる(見開き二ページに限定する)。
2 教科書・資料の丸写しは認めない。
3 イラスト・図解をすすめる。
4 ノートづくりの時間を与える。
5 見開き二ページごとに評価する。評価は「合格」のみ。ランクはつけない。不合格は「修正する」「やりなおす」ようにすすめる。
6 特に立派なノートは全員に紹介する。
教育トークライン№49より
そして、次の留意点を最重要ポイントとしてあげている。
合格の基準を緩めないこと
二 追試上の修正ポイント
この手順にそって指導を続ければ、半年で素晴らしいノートが作れるようになる。
しかし、それぞれの指導過程には、子どもとのかかわりの中で向山氏の優れた微細技術・見えない技術がはたらいているはずである。
子どものやる気を引き出す微細技術である。
また、上手にまとめるためのポイントに気づかせる見えない技術である。
私には、まだそのような技術は身についていない。
そこで、未熟な技術を補うべく次の部分を付け加えた。
10の観点に沿ってチェックし、8点以上を合格にする。
【10の観点】
1 タイトル 二ページ全体のタイトルがあるか。
2 見やすさ 見やすくすっきりまとめられているか。
3 工 夫 読み手を惹きつける面白さや工夫があるか。
4 イラスト イラストを使っているか。
5 図 図や表を使っているか。
6 マ ス ノートのマスをきちんと利用しているか。
7 丁寧さ 文字を丁寧に書いているか。
8 詳しさ 大切なことを詳しく書いているか。
9 キーワード 単元の重要語句・重要事項を書いているか。
10 考 え 自分の考えや感想を書いているか。
※希望する子には、チェック一覧表を公開する。
※合格するまで何度でも足らない部分を修正してよいことにする。
ノートづくりの時間は一時間とする。時間内にできない子のために締切日を決めて(3~5日)それまでに提出すればよいことにした。
三 ノート指導の実際
6年生の理科ノートを例に指導の手順を述べる。
最初の向山式ノート指導の場面である。
単元「ものの燃え方」の「空気とろうそくの燃え方」の実験が終わった後で、次のように話した。
これまでの実験と、分かったことをノートにまとめます。黒板の約束を守って書きましょう。
【板書】
(1) 見開き二ページちょうどでまとめる。
(2) 教科書・資料の丸写しはしない。
(3) イラスト・図を入れる。
ノートのまとめは、絵や習字と同じ一つの作品です。読む人が分かりやすく楽しくなるような作品にしてください。
できたら見せに来るよう告げてから作業をはじめさせた。
約30分後、ある子が見せに来た。
先の10の観点を書き込んだ名簿に○をつけていく。
3点である。
「タイトルあるといいなあ。字ばかりでなく図を入れると見やすくなるよ。」
とアドバイスして合格するまで修正するよう促した。
その子は、足らない部分を一生懸命補い始めた。
やがて、他の書き上げた子が少しずつやってくる。
一人ずつ、チェック項目に○を記入していく。一人あたり10~20秒程度で大まかに見る。
この一時間で見せに来た子は14~15人だった。
みんな不合格である。チェック項目を見ながらアドバイスを受けた子は、修正をはじめた。
結局、終了のチャイムまでに完成した子は一人もいなかった。
締め切りを三日後の課題にして、とりあえずこの時間は終わった。
締切日には、全員のノートがそろった。
そこで、再びチェック項目に○を記入していく。
ノートの隅に、赤鉛筆で、薄く小さく点数を記入する。
ノートを返すとき次のように言う。
みなさんのノートまとめを採点しました。
ノートの隅に小さく薄く赤鉛筆で点数が書いてあるはずです。
8点以上の人?合格です。7点以下の人?
残念ながら不合格です。
足らないところを補って合格にしましょう。
このようなノート指導を繰り返せば、早い子で数回、遅い子でも3ヵ月後にはノートのまとめ方が上達する。
半年経つと、子どものノートは半年前とは比べ物にならないほどバラエティに富んだものに変わった。
また、向山氏が力説していたとおり、「ノートづくり」は子ども達に大好評となった。
四 子どものノートの変化
子どものノートがどのように変わったか、いくつか紹介する。
1 一人目
1回目 6点
半年後 10点
2 二人目
1回目 5点
5回目(1学期末) 10点
五 子どもの感想
S君の日記に登場した「ノートづくり」についてのコメント。
今年から社会や理科には(課)があって、2ページにまとめるようになった。
めんどうくさくても、後で見ると、なかなか面白いものだ。
これは、一つ一つの時代やページをまとめるので、後でのテストでこれを見れば、一目りょうぜんというわけでなかなか便利。
それに、点数をつけられるので「よっしゃー」とか、「おっし~い。がんばるぞ。」とか思えるし、どこが足りなかったかなんてこともわかる。
今のところ、さぼらず一生懸命やっているので、まあまあかな。