「扇の的(平家物語)」を対句と対比で読み解く(2014)
光村中2国語。「扇の的(平家物語)」を、対句と対比を中心として読み解いていく授業。「冒頭」と「弓流し」の場面も合わせて授業が可能。平成26年度の授業構想。(TOSS福井推薦)

1 「冒頭」 音読・暗唱
P134「平家物語」の冒頭を音読する。
追い読み、交替読み、一斉読みなどで、何度も練習する。
古文と現代語訳の交替読みも、相手を替えながら何度も行う。
(以下、音読練習の時は同様に行う。)
最初の2行を暗唱したら、先生の所に来て暗唱テストを受けます。
合格したら、続きを覚えておきなさい。
時間を見て打ち切る。
以降、毎回授業の時間に暗唱テストの時間を設ける。
この冒頭の文章が言いたいことを、一言で言うと何ですか。ノートに書きなさい。
(主題という語を学習済みならば、「主題は何ですか」と聞いても良い。)
・人はいつか必ず死ぬ。
・人も物もいつかは滅びる。
・世の中はいつまでも同じではない。
などが出れば良い。
世の中はいつまでも同じ姿ではない。人も物も、いつかは必ず滅びて消えてゆく。
このような考え方を「無常観」と言います。
「平家物語」には、この「無常観」が作品全体を通して描かれていると言われています。
P142の「出典」に書かれている「平家物語」の説明を音読する。
「祇園精舎」に線を引きなさい。
「沙羅双樹」に線を引きなさい。
同様に、「鐘」と「花」、「声」と「色」に線を引く。
1行目と3行目は、言葉が対応していることを確認する。
「諸行無常」に対応しているのは何ですか。(盛者必衰)
「響きあり」に対応しているのは何ですか。(理をあらはす)
2行目と4行目も対応しています。
このように、文の長さがだいたい同じで、言葉が対応していることを「対句」と言います。
ほかに対句表現を探して線を引きなさい。
(おごれる人も久しからず←→たけき者もつひには滅びぬ
ただ春の夜の夢のごとし←→ひとへに風の前の塵に同じ)
2 「扇の的」 場面設定
P137の初めの説明(8行)を音読する。
誰と誰が戦っているのですか。「○氏と○家」と答えなさい。(源氏と平家)
どちらがどちらを追いつめているのですか。(源氏が平家を)
P137の9行目からP138の13行目まで音読する。
時刻はいつ頃ですか。丸で囲みなさい。(日暮れ)
黒板に、P138の絵を簡単にしたような絵を書く。
陸の側に二人(一人は馬に乗っている。もう一人は後ろで見ている。)、海の上に船が一艘(船に一人)。
人物、馬、船などの関係が分かれば良い。棒人間で良い。
同じようにノートに書かせる。
3人の人物は、それぞれ誰ですか。絵に書き込みなさい。(那須与一、源義経、年若い女房)
船の先には何がついているのですか。(扇の的)
那須与一は何をしようとしているのですか。(扇の的を弓矢で射ようとしている)
与一から扇の的までの距離は、どれくらいですか。(四十間=約72m)
3 「扇の的」 前半
P138の14行目「ころは二月…」~P139の5行目「…いふことぞなき」まで音読する。
与一の挑戦は簡単ですか、難しいですか。
与一にとって不利な条件は何ですか。全部ノートに書きなさい。
・風が激しい
・波が高い
・船(扇の的)が揺れている
・源平両軍が注目している(プレッシャーがかかる)
・2月の酉の刻(午後6時頃)なので暗い(※これはなかなか生徒から出ない)
「失敗すれば死」というのも、次の場面を読めば分かるが、ここでは出なくても良い。
与一の挑戦は成功すると思いますか。
P139の6行目「南無八幡大菩薩…」~P139の13行目「…なつたりける。」まで音読する。
与一はどんな覚悟でこの挑戦に臨んでいるのですか。分かる部分に線を引きなさい。
(「これを射損ずるものならば、弓切り折り自害して、人に二度面を向かふべからず。」)
失敗=源氏一族の恥=武士の恥=死、という考え方がここから分かります。
名誉を命より重んじる武士の考え方(価値観)が表れている場面です。
P138~P139の中に、対句表現があります。探して線を引きなさい。
(「沖には平家、舟を一面に並べて見物す。」←→「陸には源氏、くつばみを並べてこれを見る。」)
平家側と源氏側とで、与一の挑戦を見守る気持ちはどのように違うでしょうか。(ここは想像で良い。状況から考えて、大きく外れていなければ可とする。)
4 「扇の的」 後半(1)
P140の1行目「与一、…」~P140の11行目「…どよめきけり」まで音読する。
与一の挑戦は成功したのですか。(成功した)
この場面に出てくる色をすべて書きなさい。
・青(海)
・赤(夕日、扇)
・金(扇の日輪)
・白(波)
対比によって強調されている色は何ですか。(扇の赤・金の日輪が、海の青によって強調されている。)
射抜かれて落ちていく扇は、何を象徴していますか。(平家の没落する運命)
P140の1行目「ひやうど」とは、何を表していますか。(矢を放つ音)
このように、音を表す言葉を擬音語と言います。
この場面で、ほかに擬音語を探しなさい。(ひいふつと)
「さつと」もありますが、これは音というより、扇が舞う様子を表していると考えられます。
このように、ものの様子を表す言葉を「擬態語」と言います。
この場面に対句表現があります。探して線を引きなさい。
(「沖には平家、ふなばたをたたいて感じたり」←→「陸には源氏、えびらをたたいてどよめきけり」)
平家と源氏の反応は、同じですか、違いますか。
「同じ」…どちらも与一の成功をたたえて盛り上がっている。
「違う」…平家は「敵ながらあっぱれ」と感心している。源氏は与一の挑戦の成功に喜んでいる。
どちらの意見もあり得る。
5 「扇の的」 後半(2)
P140の12行目「あまりの…」~P141の12行目「…言ふ者もあり。」まで音読する。
新しい登場人物が出てきました。十字以内で探して、囲みなさい。(年五十ばかりなる男)
この男はどちら側の人間ですか。(平家側)
P141の4行目「御定」とは「御命令」という意味です。
どういう命令ですか。(あの男を射よ)
誰が、誰を通じて、誰に命令したのですか。(義経が、伊勢三郎義盛を通じて、与一に)
与一は命令に対してどうしたのですか。(命令を遂行して、男を射殺した)
この場面から対句表現を探して線を引きなさい。(「平家の方には音もせず」←→「源氏の方にはまたえびらをたたいてどよめきけり」)
平家と源氏の反応は、同じですか、違いますか。
「違う」…平家は味方を射殺されたことに驚き、声を失っている。源氏は与一の腕前に再び盛り上がって喜んでいる。
源氏側の反応は、さらに2通りに分かれます。どんな反応ですか。
(「あ、射たり」(ああ、よく射た)と「情けなし」(心ないことを))
どちらの反応が多いと思いますか。(ここは自由な想像で良い。)
6 「弓流し」
P142の初めの説明(6行)を読む。
闘いの最中に、義経は何を落としたのですか。(弓)
それを命がけで拾った義経に対し、老臣たちは何と言ったのですか。(「どんなに高価な弓であろうとも、どうしてお命に替えられましょうか。」)
つまり、老臣たちは何が一番大事だと考えているのですか。(命)
P142の7行目「弓の惜しさに…」~12行目「…感じける。」まで音読する。
義経の弓は、強い弓ですか、弱い弓ですか。(弱い弓)
義経はなぜ弓を拾ったのですか。(自分の弱々しい弓を敵に拾われて嘲笑されることを恐れたから)
つまり、義経は何が一番大事だと考えているのですか。(武士の名誉、誇り)
この場面で対比されているのは何ですか。
義経←→老臣たち
義経の考え方←→老臣たちの考え方
武士の名誉(誇り)←→命
義経と老臣たちの考え方を対比することで、義経の武士としてあるべき生き方を強調していると言えます。
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