ルールの大切さを教える
「ルールを守る」という道徳授業の提案。 コンテンツ作成:河田孝文先生 コンテンツ移行代理:平田純也

一 ルールとは何か?
「指導要領解説」に掲げられている重点課題の一つに,
「法やルールの意義やそれらを遵守する」
がある。
「ルール」とは,何か。
ルールを守らなければ,どうなるのか。
「ルールを守れ」というが,私たちは,ルールというものについて,これまで教えてきたのか?
ルールそのものを取り上げ,意義や重要性について教える道徳授業を私は知らない。
「なぜルールを守らないといけないのか」「ルールを守らなければどうなるのか」教える授業が必要である。
「ルール」とは,何か。
辞書で調べる。
【ルール】きまり。規則。
「きまり」を辞書で調べる。
【きまり】(1)物事のおさまり。結末。決着。(2)きめられた事柄。定め。規定。
【規則】(1)行為や手続きなどを行う際の標準となるように定められた事柄。きまり。
(2)法則。秩序。(3)国会以外の諸機関によって制定される法の一種。法律・命令などとならぶ実定法の形式の一つ。衆議院規則・参議院規則・最高裁判所規則・会計検査院規則・人事院規則などのほか、地方公共団体の長の定める規則などがある。規則は法律に違反することができない。
なんとなくわかるが,なんだかよくわからない。
これでは,子どもに教えられない。
子どもが理解できるように簡潔に教えられる定義が必要である。
異論はあるだろうが,子どもに簡潔に教えるために,「ルール」について定義する。
極めて簡潔に。
子どもがイメージできるように。
次のようにルールを定義した。
参加する人が守らなければならないきまり。守らない場合は,罰せられる。
いくつかあてはめてみよう。
例えば,「サッカー」サッカーに参加する人が守らなければならないきまり。守らない場合は,罰せられる。
サッカーには,「ボールを直接手で触らない」というルールがある。これを破るとどうなるか。
相手チームのフリーキックというペナルティ(罰則)となる。
その他さまざまあてはめて考えるとよい。
「バスケットボールのルール」「野球のルール」「すもうのルール」「将棋のルール」
「守るべきもの」「守らなければ罰せられる」という二点において,先の定義は全てあてはまることがわかる。
あてはめたものは,全て競技である。
競技,とりわけスポーツのルールは,極めて厳密で厳格である。
なぜ厳密で厳格なのか。松岡正剛氏は,「知の編集術」(講談社現代新書)で次のように解説する。
「スポーツにルールが発生し,めきめきと進化していったのは,古代の遊び型のスポーツには『賭け』があったからだった。初期の競技の大半は貴族や民衆の賭けのために行われていた」「競技者の誰に賭けるかという熱狂があまりに高じてくると,だんだんプレーのやりかたも厳密になってくる。それは争いにもなる。それでルールが発達し,審判(レフェリング)という制度もくっついてきた。」
ルールというものの概念は,おそらくスポーツが期限だろう。
スポーツのルールの起源は,まさに勝負の世界だったのだ。勝てば儲かり,負ければ大損。それは,賭け者の生死にもつながる。もちろん,競技者の生死にも関わる。
だから,スポーツのルールは,「絶対やぶってはならないもの」という拘束性がともなっているのだ。
また,破れば,ペナルティという忌避できない罰則があるのだ。
国についてあてはめてみよう。
「国のルール」とは,法律である。
例えば,刑法。
「第204条 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」
極めて具体的な行為と罰則が示されている。
法律が厳密で厳格な理由はあえて言うこともないだろう。
一番の理由は,国を維持するためである。
法律がなければ,国は,崩壊する。
国を構成する人が,一人一人自分の価値基準によって行動したらどうなるだろう。
「ほしい物は,勝手にとってよい」「気に入らない人は殴る」などなどが許されるとどうなるだろう。
実際,このような状況は過去,何度も起こった。
戦場となった町,クーデターが起こった町,やりたい放題が見逃される世の中。
政府の機能が低下,あるいは停止した状態である。
このような状態をアナーキーという。
周りを常に警戒し,自分の身は自分で守る世の中は,想像しただけでぞっとする。
政府は,その国の大多数の人々の幸せを保証するために,法律をつくった。
法律は,その国で生活するためのいわば行動基準だ。
国民は,法律に沿って自分の行動を決める。
または,自分(あるいは他人)の行動の正誤は法律によって判断する。
法律から逸脱した行為は,罰せられる。
法律は,国のルールである。
スポーツのルール同様,審判がいる。
裁判所である。
裁判所が,罰則の内容と量を決定する。
二 子ども達に教えたいこと
ルールの大切さについて,子ども達に次のことを教えたい。
① ルールは,守らなければならない。
② ルールを破るとペナルティがある。
特に,「ルールにはペナルティが伴う」という部分が大切である。
中学生が校則を破り暴走する一番の原因はそこにある。
中学生は,校則を破っても,罰せられない(叱責や指導はあるだろうが,本人にとってはほとんどマイナスではない)。
中学生は,それを知っている。
ある私立中学校の校長が新年度のあいさつで次のようなことを話したそうだ。
「校則を守れない人は,どうぞ他の学校へ行ってください」
「ルールを犯せば,学校にいられなくなる」
重い罰である。
公立の中学校は,これができない。
だから,暴走してしまう。
「ルールは,守るべきもの」という部分だけ教えていたのでは,不十分である。
「守るか破るか」が最終的には個人の判断基準に任せてしまうことになるからである。
ルールを守るか破るかは,本人のモラルの問題なのである。
ルールとモラルを混同して教えてしまうから,何を教えたのかわからない授業になってしまうのである。
「ルールを破ればペナルティを課せられる」
これを小学校のうちからきちんと教えるべきである。
では,どのように教えるのか。
まず教えておかなければならないのは,
「ルールの意義」である。
① ルールは,集団の参加者全員のためにある。
② ルールは,参加者の知恵と経験と労力をかけてつくられている。
③ 集団に参加しているものは,ルールを守らなければならない。
④ ルールを守らなければ,ペナルティを課せられる。
これらを,ゲーム,スポーツ,社会,学校などの面から教えていく。
次の授業を構想している。
(1) ルールとはなにか。
ゲームのルールを紹介する
「いかなるゲームにもルールがあります。次のルールは,何というゲームでしょう」
(例)オセロ/①黒が先手 ②打てる箇所がない場合パスになり ③ 打てる箇所がある場合は必ず打たなければなりません。 ④打てる箇所がある場合は必ず打たなければなりません ⑤双方が打てなくなったらゲーム終了
「なんというゲームでしょう?」「オセロ」
「ルールを破った人はどうなりますか?」「負ける」「そう,ルールを破った人は,負けるのです」
オセロのほかに,あと2~3ゲームのルールを紹介する。
スポーツのルールを紹介する
「スポーツにもルールがあります。次のルールは,何というスポーツでしょう」
(例)サッカーのルールを紹介する。①相手に飛びかかるのは反則 ②相手をつまずかせたら反則 ③ボールを奪うために相手に突っ込んだら反則 ④相手に唾を吐きかけたら反則 ⑤相手を蹴ったら反則 ⑥ボールを手で触ったら反則
「なんというゲームでしょう?」「サッカー」「ルールを破った人はどうなりますか?」「ペナルティがあります」「そう,ルールを破ったチームは,フリーキックとなりますね」
このあと,「日本の村八分」「バビロニアのハンムラビ法典」などルールの歴史を紹介し,そして,日本の法律につなげていく。