『平家物語』~祇園精舎の鐘~
『平家物語』最終時。発展として、「祇園精舎の鐘」と、日本の価値観や文学に深い影響のある「無常観」との関わりを理解する

2012年12月中高東京セミナー 授業技量検定D表
実際にした検定授業から、講師の先生からいただいた講評を元に修正した。
1、最初に『平家物語』に関する授業と示す(見通しを持たせる)
2、生徒に想像させる。後から実際と比較し、「演出」をするように組み立てる。
教材名『平家物語』 最終時(第6時と想定)
「無常観」は、『平家物語』「いろは歌」のみならず、中学校教材では『徒然草』、高等学校古典における定番教材『方丈記』…様々な作品で扱われる。無常観は、単に『平家物語』 という一作品の根底にあるものではなく、日本の(特に中世)文学作品、そして、そこからの日本人の根底にある考え方の一つである。
『平家物語』は二学年で扱う教材である。指導要領に「古典に表れたものの見方や考え方に触れ」とされるように、『平家物語』を通して、生徒に日本人の「無常観」について考えさせる契機としていきたい。『平家物語』における「無常観」と、それ以外の作品にある「無常観」をふまえ、発展的に考える土台を作りたい。
単元計画としては、導入か、まとめとして考えられるが、ここでは、『平家物語』において「無常」という言葉は既に勉強したという前提として、今後の発展のためのまとめとして扱う。
【スライド】平家物語
『平家物語』 冒頭の暗唱できる人? 手を挙げた人で、さんはい。
「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり」
(暗唱できたことをほめる)
【スライド】平家物語 祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
(暗唱が全員でなかった場合、全員に読ませる)
【スライド】 平家物語 祇園精舎の鐘
祇園精舎の鐘ってどんな鐘だと思いますか? ノートに形を書きます。
お隣と確認。 同じような形だった人?(挙手)
その鐘からどのような音がすると思いますか。
一番近いものを次から選びます。(挙手で確認)
一、ゴーン
二、カーン
三、チーン
四、その他
【スライド】 祇園精舎の鐘の写真(現在インドにあるもの)
祇園精舎の鐘です。祇園精舎は2500年前の建物です。今は、遺跡で、鐘は後世建てられたものです。
描いた絵が似ていた人?違う? 音のイメージが変わった人?同じ? (挙手で確認)
インドの祇園精舎の鐘を日本に広めた本があります。
往生要集 といいます。「祇園寺から読みます。さんはい」
【スライド】
「はりの鐘」とあります。「はり」とは水晶のことです。
【スライド 水晶の写真】
祇園精舎の鐘は、『梁塵秘抄』、『栄華物語』にも出てきます。
【スライド】 梁塵秘抄 栄華物語 掲載文
どちらの平家物語の少し前の作品です。
その鐘からどのような音がすると思いますか。(水晶の写真を見せる)
一番近いものを次から選びます。(挙手で確認)
一、ゴーン
二、カーン
三、チーン
四、その他
水晶でできたベルを鳴らすとこのような音です。(実際に聞く)
『平家物語』の時代の人は、このような音をイメージしていたのかもしれません。
【スライド】現在(インド) 写真 約800年前(日本)写真 約2500年前(インド) ?
現在再建された祇園精舎の鐘はこのような形でした。
『平家物語』の時代、祇園精舎の鐘は水晶だとされていました。
では、実際の2500年前の、実際の祇園精舎の鐘はいったいどういう物だったのでしょう。
2500年前の実際の鐘からどのような音がすると思いますか。
一番近いものを次から選びます。(挙手で確認)
一、ゴーン
二、カーン
三、チーン
四、その他
では、聞いてみます。 聞こえた人? (いない)
祇園精舎の鐘の前にある説明文です。【スライド】
小さいので拡大しました。
指示 上の二字を読みます。(日本)
発問 どこの国の人が作りましたか?(日本)
発問 いつ作られたと書いてありますか?(1981年(昭和56年))
発掘調査の結果、また、インドの文化から祇園精舎に、実際は鐘はなかったとされています。
日本の人のイメージによって作られた鐘です。
【スライド】現在(インド)写真 約800年前(日本)写真 約2500年前(インド) ×
2500年前、実際にはインドになかった鐘。
しかし、時代や国を超えて、形を変えて今に引き継がれています。
【スライド】 祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
発問 祇園精舎の鐘は、何の響きがすると書いてありますか? (諸行無常)
説明 無常とは、辞書にこう書いてあります。
指示 皆で読みます。(「この世の中のものは、絶えず変化する」)
【スライド】『平家物語』「祇園精舎」~「塵に同じ」 までの本文 (諸行無常:赤 盛者必衰:赤)
『平家物語』では、平家を通して、栄えているものも、いつかは滅びるという無常を勉強しました。
【スライド】 無常:この世の中のものは絶えず変化する
しかし、滅びた後や、何もないところから 生まれてくることも無常です。
これから、『徒然草』や『方丈記』など、他の文学作品から「無常」について学んでいきます。
最後にもう一度、読みます。
「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり」
参考文献
ひろさちや『諸行無常を生きる』角川書店
中村元『図説仏教語大辞典』東京書籍 / 水原一『平家物語の世界 上』日本放送出版協会
兵藤裕己『平家物語~〈語り〉のテキスト』ちくま新書
冨倉徳次郎『平家物語全注釈 上』角川書店
三枝充悳『仏教入門』岩波書店 / 小林秀雄『モオツァルト・無常という事』新潮社
平岡定海『無常のうた―日本人の無常観とその歴史』毎日新聞
佐々木八郎『平家物語の研究』早稲田大学出版部
課題
説明が多い。
最も伝えたいところが説明になっているため、生徒から出る手立て(発問)にしていく。