子どもに与える絵の具の種類は何がいいか
文房具店に行くと、絵の具のチューブだけでも3種類は売っているのをご存じだろうか?材料を知っておくことは指導のイロハである。子どもに与える絵の具の用具にこだわろう。

1 絵の具の基礎知識
絵の具というのは、顔料からできている。要するに粒である。
顔料にも2種類ある。土や岩石からできている顔料と植物からできている顔料である。
洋画に使う顔料は、岩石から成る顔料がほとんどで、日本画に使う顔料は岩石と植物の2種類ある。
だが、顔料だけでは紙の上にのらず、水分が乾くとぱらぱらと紙から落ちてしまう。顔料と何かを混ぜないとすぐに使えない。たとえば油絵の具なら、顔料の粒と紙やキャンバスを接着させているのは油(オイル)である。
どこへでも簡単に持ち運びできるチューブという便利なものができたのは産業革命の後、ちょうど印象派の画家たちが出現した頃である。それまでは、それぞれの画家が顔料と油を自分で調合して使っていたのである。
2 絵の具の種類
小中学校でよく使う絵の具には水彩絵の具、ポスターカラー、アクリル絵の具などがある。それぞれ次のような特徴がある。
(ア)水彩絵の具
一般的に多く使われている絵の具である。色の種類も多い。
顔料をアラビア・ゴム溶液で練り上げたものである。
小中学生にはこの水彩絵の具が一番適切だと思う。
「淡彩絵の具」というのもある。水彩絵の具は不透明に(下の画用紙が見えないように)ぬれるが、淡彩絵の具は濃くぬっても透明になる。
(イ)ポスターカラー
顔料をより細かい粒子にしたのがポスター・カラーである。
粒子が細かい分不透明性が増し、ぬると表面が均一になる。
(ウ)アクリル絵の具
今から25年前に、一般的に使われ始めた新しい絵の具である。一時期、私もこれを生徒に使わせていた。
顔料をアクリル系の樹脂で接着させている。アクリル系なので水に溶けるが、乾くと固形化する。
上から水がかかっても絵の具が溶けないし、たっぷりとぬれば油絵のような表現ができる。
だが、絵の具をいったんパレットに出すと固まってしまうので、絵の保存にはいいが、描いた後に必ずパレットを洗う必要がある。固まった絵の具は、業者が出している溶剤で溶かせばかなりとれるが、絵の具を完全に取りさるためには一定時間溶剤につけておく必要がある。
アクリル絵の具が衣服につくと、アクリル樹脂が繊維にからみつくので、洗っても完全には取れない。特殊な溶液が必要である。
3 チューブの種類
絵の具のチューブだが、これにも3種類のタイプがある。
(ア)鉛チューブ
鉛が環境汚染につながるため、現在はあまり使われていない。
また、チューブが破れやすく、キャップをひねったときにチューブが破れたり、お尻が破れたりするという欠点もある。
鉛チューブの利点は、絵の具を使った分だけチューブがへこむので、外から見ても絵の具の量が一目でわかるという点である。
(イ)ラミネートチューブ
一般的に多く使われているチューブがこれだ。
欠点は、空気がやや入りやすいことだ。そのため、一度ふたを開けると、3年ほどたつと絵の具が固まってねっとりしてくる。
私は、ラミネートチューブが小中学生には一番適切だと思う。
(ウ)ポリチューブ
小学生向けの絵の具に多い。
欠点は、これも一度ふたを開けると空気が入りやすく、固まりやすいことだ。さらに、中に入っている絵の具が、外から見てもわからないため、ふたを開けてみたらもう絵の具が無くなっていたことがよくある。
よく小学校でこれを使っているが、私はこれらの欠点から、あまりおすすめしない。