友達の輪に入ることが苦手な子にどう対応するか〜特別支援の視点〜
集団が苦手な子どもたちへの対応の事例を紹介する。

3つの要因を考える
友だちの輪に入れない子を、粗く3つの要因に分類してみる。
⑴集団そのものが苦手
⑵コミュニケーションが苦手
⑶人間関係での課題がある
集団そのものが苦手
次のような事例がある。
Aさんは、休み時間、一人で図書室
で読書をしている。毎日である。
担任の先生が声かけをすると、
「私は一人がいいんです」と答えた。
この場合、どう考えるといいんのだろうか。
そもそも「友達の輪に入ることがその子にとって必要か」ということにいきつく。
上の事例の場合、「一人の方がいい」という子どもがいる、ということだ。
そういった場合、休み時間などは「一人で過ごす」ことで安定をしているのだから、無理に輪の中に入れる必要はない。
しかし、クラスの係活動など、一緒に行う場合には「仕事は一緒にします」というふうに「区別」して指導する。
次の事例がある。
B君は、みんなが遊んでいるところ
に行ったが、声などが大きくその場
にうずくまって、それ以降、入ろう
としなくなった。
B君は「聴覚過敏」の特性があり、大きな音や嫌いな音は極端に嫌がるのである。
B君は友だちの輪の中に入りたくないのではなく、むしろ入りたい、一緒に楽しみたいと思っていることが多い。しかし、過敏が強いので、入れないのである。
この場合、静かな場所で少人数で遊ぶような場を設定すればすんなり入れることがある。
コミュニケーションが苦手
自分から「遊ぼう」などが言えず、結局、中に入れずひとりぼっちになってしまうような事例である。
コミュニケーションのスキルが不足している児童である。
次の視点で対応する。
人や物を介する
以前、受け持ったC君の事例である。
コミュニケーションが苦手で一人ぼっちになることが多かった。
「一緒に遊びなさい」など促してもその場限りのものにしかならない。
そこで「将棋」を使うことにした。
学級で「将棋」を紹介し、流行らせたのである。
将棋をクラスに持ち込み、子どもたちとさす。
それを見ている子どもたちに「やってみる?」と誘い、どんどん仲間を増やしていく。
将棋が遊びの一つになってきた頃に
C君にも将棋を教えたのである。
お家の人にも伝えて、「DS」の将棋ソフトで将棋をさすようになった。
自然と将棋をさす相手を子どもたちは探し始め、C君ともやりはじめるようになった。
「将棋」を通して友だちになっていったのである。
放課後にC君の家に遊びに来るなど人間関係の変化も見られるようになった。このように「物」を介することでコミュニケーションの場をつくっていくこともできる。
また、低学年の場合は昼休みに一緒に遊び、コミュニケーションが苦手な子のよさを周りに伝えていくことで「輪」をつなぐ。ここでは「教師」を介して場をつくっていくのである。
人間関係での課題がある
端的にいえば「いじめ」である。
いじめを受けた子どもは「集団」に入ろうとしない。
また、進行形であれば、仲間はずしにあって「友だちの輪に入れない子」というふうに見えてしまう場合もある。
次の事例がある。
Dさんは、休み時間、ずっと教室
で本を読んでいる。
Dさんは「いじめ」を受けていて周りの子どもたちから「無視」をされていたのである。
向山洋一氏の「いじめの構造を破壊する」(明治図書)をよく読み、追試する。また。同僚の先生方にも協力を求め、学校全体で対応する。
「友だちの輪に入れない」という事実を多面的に捉え、対応していくことが重要である。