ノートづくりの指導のポイント
ノートづくりの指導のポイントを『いかなる場でも貫く教師の授業行為の原則』からまとめ,分析した。
1 ノートづくりのポイント
向山洋一氏は『いかなる場でも貫く教師の授業行為の原則』(明治図書)p.15〜17に,
ノートづくりのポイントを書いている。
それを紹介する。
(1)向山学級の子どものノートの特徴
1 全員のノートが違う。(少し違うというのではなく,全く違う)
2 それぞれ,美しくまとめられている。
(2)ノートづくりのポイント
(前半)
1 一単元を見開き二ページでまとめさせる。(見開き二ページに限定する)。
2 教科書・資料のまるうつしは認めない。
3 イラスト・図解をすすめる。
4 ノートづくりの時間を与える。
(後半)
5 見開き二ページごとに評価する。評価は「合格」のみ。ランクはつけない。
不合格は「修正する」「やり直す」ようにすすめる。
6 特に立派なノートは全員に紹介する。
(3)ノートづくりのポイント補足
1 評定は「合格」か「不合格」のみ。
ランク評価すると,うまくいかない。
2 口ではどのくらいのランクか言ってやることは大切。
3 (初めの頃はともかく),合格の基準をゆるめないこと。
4 「合格の基準」,それをどこにするかは,教師の力量である。
2 向山氏の「ノートづくり指導」の追試報告と分析
子どもたちは集中した。
45分間シーンとしてやり続け,休憩時間もやり続け,
「あと10分ください」と書き続けた。
これが午前中見学に出かけてから戻ってきた
5時間目から6時間目にかけての出来事だからなおさら驚いた。
向山実践を調べ直したのが大きい。
例えば,「ノート作りのポイント」の2,3を
私は少し勘違いしていた。
2 教科書・資料のまるうつしは認めない。
今まで文章の丸写しは「認めない」としてきたが,
資料は許してしまっていた。
「資料の丸写しも許さない」というと子どもたちの動きが変わった。
教科書の図を自分なりに加工し始めた。
どの子も違う図になった。
はるかに面白いまとめになった。
3 イラスト・図解をすすめる。
「図解」という言葉を見落としていた。
「図解」を説明するために河田学級のノートを見せた。
これで一発で分かる。イメージができた。
「すすめる」も見落としていた。
無理矢理させるわけではない。
何が何でも入れなさいではない。
今までも無理矢理やらせていたわけではないが,
教師がどう思っているかで
子どもたちの動きも変わってくるのだろうと,
実際の動きを見ながら感じた。
評定基準は当然,「合格」か「不合格」かである。
評定は「合格」か「不合格」のみ。ランク評価すると,うまくいかない。
この一文を見落としていて,
一時期,ABCのランク評価をしていたことがあった。
ところが,向山先生の言葉通り,うまくいかなかったのである。
Aを取った子は喜ぶが,それ以外は反応が薄かった。
ノートの変化も見られなくなった。
一部の子にはこれぐらいでいいやという空気が流れていた。
それが「合格」か否かに戻した途端に子どもの反応は変わった。
ノートまとめをしている教室に緊張感が漂った。
もう一つ,私が見落としていた文がある。
口ではどのくらいのランクか言ってやることは大切。
これで納得ができた。
例えば,向山学級や教材開発会議のレポート審査がそうだ。
パッと見た感じはではABC…で「ランク付け」してあった。
でも,よく考えたら違う。
実際には,会議に「参加できる」か否かという評定なのである。
ABCは「口ではどのくらいのランクか言ってやること」と
同じことなのである。
これがあるから,不合格でも次に向けての努力ができる。
こんな違いにも今まで気づいていなかったのだ。
サークルで「合格」か否かで評定し,「規準はゆるめない」
と言った時,
「『不合格』を出すとノートを破ってしまうような子が
学級にいるが,どうすればいいか」
という意見をもらった。
その時は,明確に答えられなかった。
向山先生の本に戻ると,きちんと書いてあった。
(初めの頃はともかく),合格の基準をゆるめないこと。
この「初めの頃はともかく」という部分だ。
今まで全く目にも止まらなかったところだ。
最初から高いレベルを一律に求めていたわけではないのだ。
「基準をゆるめない」という「詰め」の部分と,
「初めの頃はともかく」という「詰めない」部分がすごい。
ノートを書きながら子どもたちは口々に言った。
「こんなにきれいに書いたの初めてです。」
「今までで一番の最高傑作です。」
一番ノートまとめが苦手な子は日記にも書いてきていた。
「今までで一番よく書けている」と。
それでも,合否の基準はゆるめず評定している。
昨日は4人もってきて1人だけ合格。
3人の不合格者にはどこを修正すればよいか教え,
修正を「すすめた」。
すぐに直してきた子が1人。
先日,全員がノートを提出した。
不合格だった子も修正して,全員合格。
「先生,みんなのノートを見たいです。」
と言うので,ノートを広げて並べた。
どのノートもよく書いてあった。
その後,ペアでお互いのノートをほめさせた。
ふざけて茶化すようにほめている子もいない。
3分でも5分でもずっとほめ続けることができそうだった。
それほど,子どもたちの中でも満足感があったのだと思う。