梅の花見にこそ來つれ鶯のひとくひとくと厭ひしもをる
向山型国語に挑戦73ノ授業記録です。

小学3年生に授業した。
第1時(45分)
教材文の書かれたプリントを配付。
数名の子に読ませた。
「讀み人と知らず」と「古今和歌集」について,説明した。
「讀み人知らずは,誰が作ったか分からないという意味です。」
「古今和歌集は,紀貫之が作った和歌集です。百人一首に出てくる歌がたくさん載っています。」
「來,鶯,厭ひ」を子どもたちは読めなかった。やんちゃが「うぐいす」と読めたので,ほめた。
「來」と「厭ひ」は,私が読み方を教えた。こうして,読み方を確定した。
自分なりの読み方で区切って詠んでごらん。
続いて,3名を指名して読ませた。
全員が,「梅の花」で区切った。
「鶯の」で切った子と切らない子がいた。
何通りの読み方がありましたか。
子どもたちが「わからない」というので,もう一度読ませた。すると,今度は全員同じになってしまった。
「梅の花」で切った人,「梅の花見に」で切った人。
挙手で確認した。
20名が「梅の花」,
10名が「梅の花見に」で切るといった。
「厭ひ」は,嫌がるという意味です。「をる」は,「いる」ということです。
続いて,子どもたちに目をつぶらせた。
先生が読みますから,風景を頭の中に描きなさい。
この和歌を読んで聞かせた。
何が見えましたか。
子どもたちからは,「梅の花」「鶯」「梅の木」「人」という意見が出た。
梅の花は,一つではなく,多数咲いていると子どもたちは言った。
また,「人」も一人ではないという意見が出た。
出た意見を教師が絵で示した。
黒板に描いた図。

話者の目玉を書き入れなさい。
6通りの意見が出たが,AとB二つに集約した。
Aは鶯側,Bは人側に話者がいるという意見である。
Aは6名
Bは24名
という意見分布だった。
理由をノートに書きなさい。
Aグループ(話者は,Aの場所にいる。)
イなぜなら,「厭ひしもをる」は,「いやがっている」という意味だから,鶯のところから見ている。
ロなぜなら,その場所からみんなを見てるから。
Bグループ(話者は,Bの場所にいる。)
イなぜなら,Aの場所ならウグイスが見えないからだ。
ロなぜなら,この和歌は鶯がいやがっている様子で,人が来ていやがっているから。
ハBの場所ならば,鶯を見ることができるから。
「鶯が嫌がっている」という意見で,論争になった。そこで,意見を整理するため次の発問をした。
「厭ひしもをる」のは誰ですか。
鶯 27人
人 3人
何て言って嫌がっているのですか。その部分に○をつけなさい。
1ひとくひとく
2厭ひしもをる
3ひと
三つの意見が出た。
「ひとくひとく」派が多かった。
「ひとくひとく」と漢字にしなさい。
人来 25人
人苦 5人
鶯は,「ひとくひとく」と鳴きますか。
鳴かない。
「ホーホケキョ」だと知っている子がいた。
鶯の鳴き声が「ホーホケキョ」と言われるようになったのは,江戸時代からです。この歌ができたのは,江戸時代より600年ほど前です。この頃には,ウグイスの鳴き声は「うーくい」と言われていました。だから,ウグイスという名前になったと言われています。
もう一つのウグイスの声の言い方が,「ひとく,ひとく」です。でも,どうしても,「ヒトクヒトク」には聞えませんね。これは,小鳥の鳴き声を「チーチクパーチク」というのに似ています。
第2時(15分)
この和歌はどんな意味になりますか。今の言葉で書きなさい。
次の解釈が出された。
イうめの花を見に来る人を「ひとくひとく」とうぐいすがいっていやがっている。
ロ梅の花見に来た人が,鶯の何かをじゃましに来たから,うぐいすがいやがっている。
ハ意味は,梅の花を見にきたうぐいすが,人がいっぱい来ていやがっている。
二梅の花見にうぐいすが来た。人が来てじゃまだなと思っている。
ホ梅の花を見に来た人が鶯のじゃまになって鶯がひとくひとくと鳴いてやがっている。
もう一度,この和歌を読ませた。
感想を書かせて授業を終えた。