詩「わたしと小鳥とすずと」の授業
小学3年生に行った金子みすゞの詩「わたしと小鳥とすずと」の授業です。
金子みすゞの詩
わたしと小鳥とすずと
金子みすゞ
わたしが両手をひろげても、
お空はちっともとべないが、
とべる小鳥はわたしのように、
地面をはやくははしれない。
わたしがからだをゆすっても、
きれいな音はでないけど、
あの鳴るすずはわたしのように、
たくさんうたは知らないよ。
すずと、小鳥と、それからわたし、
みんなちがって、みんないい。
授業のポイントは何か
この詩を授業するならば、次の点は落とせない。
① 詩の構造
第一連(例示)
第二連(例示)
第三連(まとめ)
② 逆説的表現のよさ
①の「構造」を授業する方法はいくつかあるが、この詩には「結合分断法」が適している。
結合分断法
本来分かれている段落や連を、結合させて提示し、「どこで切れるか」を検討させる方法。
この方法で授業すると、子どもたちは文章を、「内容」で分断したり、「形式」で分断したり、あるいは両者で分断したりする。
つまり、「構造」を分析せざるをえなくなるのである。
②の「逆説的表現のよさ」とは、最後の行の「いい」について、何が「いい」のか直接表現されていないことのよさである。
これは、「書き換え法」で授業すると、よく分かる。
書き換え法
書かれている内容を、別の表現方法で書き換えさせる方法。
この詩の逆説的表現を直接表現に書き換えさせると、例えば次のようになる。
原文(逆説表現)
わたしが両手をひろげても、
お空はちっともとべないが、
とべる小鳥はわたしのように、
地面をはやくははしれない。
書き換え文(直接表現)
小鳥は両手をひろげると、
お空をいっぱいとべるけど、
とべないわたしは小鳥とちがい、
地面をはやくはしれるよ。
原文の逆説表現のよさが、はっきりしてくるのである。
授業をなさる先生も、この線で授業を組み立てることにされた。
授業はどうなったか
実際の授業は、以下のようになった。
模造紙に書いた詩(連を結合したもの)を提示する。
起立して、三回読んだら座りなさい。
子どもが読んでいる間に、詩(連を結合したもの)を印刷したプリントを配付する。
早く座った子は、何度も読んでいる。
意味の分からない言葉はありませんか。
「みんないい」が出された。
みんなで辞書を引き、「良いのくだけた言い方」であると結論づけた。
これは、本当は三つに分かれた詩なんです。
どこで分かれているのか、自分のプリントに線を入れてみてください。
全員が正しい分け方をした。
理由を発表させると、次の意見が出された。
<子どもの意見>
話が変わっているから。
小鳥の話/すずの話/まとめ
小鳥/すず/すずと小鳥と私
句点(。)で切る。
発問二
ここ(第一連)は、小鳥と誰のお話ですか。
「みすゞさん」だと言う。
話者についての理解が不十分なので、「わたし」と「みすゞ」とを混同している。
話者と作者の違いについて説明した後、第一連は「わたしと小鳥のお話」であるとまとめた。
ここ(第二連)は、どうですか。
「わたしとすずのお話」だと言う。
この後、正しく三連に分けた詩を板書しながら、子どもたちに視写させた。
「みんなちがって、みんないい。」を分かりやすく書くとすると、どう変えるかな。
ノートに書かせて発表させた。
<子どもの意見>
みんな違っていても、一人ひとりい いところがある。
みんな違って、みんな一つずついい ところをもっている。
みんながちがって、みんないい。
みんな自分がもっているいいものが 違っている。
みんなはそれぞれ違っているけど、 みんなはそれぞれいい。
みんな違うことができて、いいとこ ろがある。
ここで時間となった。
授業者は、時間にきちんとした方なので、ここで授業を終えられた。
そこで、私からお願いして、少し授業させていただくことにした。
以下は、私の授業(五分間程度)である。
発問一
「みんないい」って書いてあるけど、「小鳥」の「いい」ところは、どこに書いてあるのですか。
子どもたちは、「わたしが両手をひろげても」など、苦し紛れにいくつかの意見を出してくる。
これを一つずつ、全部否定する。
そのうちに、子どもたちは「書いていない」と言い出す。
「わたし」についても、「すず」についても、子どもたちは書いていないと答えた。
みんな「書いていない」って言いますけど、実はこれ、全部、書いてあるのです。
どこに書いてあるのか、次の時間にお勉強できそうですね。
ここで、逆説表現に気づいた子が数名、懸命に発言しようとしてきたが、「次の時間に・・・」と打ち切った。
この子たちは、この後の休み時間、他の子に自説を主張していた。
どう授業すべきか
一時間で扱うならば、次のようにする。
① 模造紙で詩(連を結合)を提示する。
② 音読させる。
・起立して三回音読。
・数名指名読。
・隣の子と確認読み。 等一人最低一〇回
③ 「この詩を見て、思ったこと、考えたことを何でもよいからノートに書いて
持って来なさい」と指示してノートチェック。
④ 詩を三つに分けさせる。
⑤ 「『いい』ところはどこに書いてありますか」とゆさぶる。
⑥ 直接表現に変換し、原文と比べさせる。