VIEW: 94597
130

「天地の文」(福沢諭吉) 実践記録

光村図書6年「声に出して読もう」の実践記録。音読の後、発問をして中身について検討した。

天地の文 
                      福沢諭吉

天地日月(てんちじつげつ)。東西南北。きたを背に、南に向かひて右と左を指させば、ひだりは東、みぎはにし。朝は東より、次第にのぼり、暮れはまたにしに没して、夜くらし。一昼一夜(いっちゅういちや)変わりなく、界を分けし、午前午後、前後あわせて二十四時、時をあつめて日を計(かぞ)へ、日かずつもりて、三十の数に満つれば、一ヶ月、大と小にかかはらず、あらまし分けし、四週日(よんしゅうじつ)、一週日の名目は日月火水木金土、一七日(ひとなぬか)に一新し、一年五十二週日、第一月(だいいちげつ)の一日は年立ち回るときなれど、春のはじめはなお遅く、初めて来(きた)る第三月、春夏秋冬、三月(みつき)づつ、合はせて三百六十日、一年一年又一年、百年三万六千日、人生わづか五十年、稚(おさな)きときに怠(おこ)たらば、老いて悔(く)ゆるも甲斐(かい)なかるべし。

明治4年、福沢諭吉が子ども用の習字手本として作ったもの。
当時日本に入ってきたばかりの時間、週日など、暮らしの基本となる決め事が調子のよい言い回しで書かれている。

教科書に書かれている学習のめあては、「声に出して楽しもう」。
まずは、声に出して、何度も音読した。
調子よく読めるようになった頃、内容について考えさせた。

発問 . 1

この文章を二つに分けるとします。どこで分けますか。

子どもたちからは、様々な意見が出たが、クラスの3分の1以上の子が手を挙げたのは、以下の箇所。

暮れはまたにし没して、夜くらし。 / 一昼一夜変わりなく、~

理由を聞くと、前半は方位に関すること、そして後半は時間に関することだという意見が出た。
きちんと、内容について読み取っている。
しかし、ある子が、次の意見を発表した。

~人生わづか五十年、 / 稚きときに怠たらば~

「人生わづか五十年」までは、すべて事実。その後は、作者の意見であると発言した。
事実と意見での分け方。
以前教えた「事実」と「意見」の違いを踏まえた意見であった。

この意見をさらに発展させ、別の子が次のような指摘をした。

~百年三万六千日、 / 人生わづか五十年、~

人の寿命は様々なので、「人生わづか五十年」も作者の意見であり、
事実と意見で分けるのであれば、上記の箇所になるという指摘だ。

「人生わづか五十年」というのは、当時の一般的な寿命だったのだろう。
 今では、正確とは言えない。

発問 . 2

他にも正確とは言えない、という箇所はありませんか。

文章を批判的に読むことをクリティカルリーディングと言う。大切な読解力の一つである。

子どもたちは、以下の箇所を見付けた。

・「三十の数に満ちれば一ヶ月」 → 31日や28日の月もある。

・「合わせて三百六十日」   → 365日。(うるう年は、366日。)

・「百年三万六千日」     → 三万六千五百日。

130