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月月に月見る月は多けれど月見る月はこの月の月

繰り返しがおもしろい短歌「月月に月見る月は多けれど月見る月はこの月の月」を授業します。

月々に月見る月は多けれど月見る月はこの月の月

詠み人知らずの歌である。
『日本随筆大成第2期巻8』所収の鈴木忠侯『一擧博覽』の巻之2・53に「良夜の歌」として「宦家の女中は、八月十五夜に芋を箸につらぬき、其穴より月を見て、月々に月見る月は多けれど 月見る月はこの月の月、といふ歌を吟ぜらるゝとなり」とあるのが出典らしい。(『新編国歌大観』(角川書店)を調べても,この歌は載っていなかった。)
範読の後,何度も音読させる。

発問 . 1

月という漢字はいくつありますか。

7つまたは8つという答えが出るだろう。

発問 . 2

「月々」の「々」は漢字ですか。

じつは、漢字ではない。
「同の字点(どうのじてん)」と呼ばれる符号である。
「月々」を「月月」と書けば,「月」という漢字は8つになる。
この8つの月に番号を付ける。

発問 . 3

月には二つの意味があります。どんな意味とどんな意味ですか。

満月とか三日月とか半月とかいう空の月と,1月2月3月という暦の月が出てくるだろう。
前者を「空の月」,後者を「暦の月」と呼称することにする。
ここで①~⑧のうち,どれが空の月で,どれが暦の月かが問題となる。
が,これをそのまま発問してしまうと,授業がぐじゃぐじゃになる。

発問 . 4

⑧は空の月ですか,暦の月ですか。

と限定して発問すべきであろう。
⑧がどちらかを決めれば,①~⑦は自ずと定まるからである。

発問 . 5

季節はいつですか。

秋だということを教える。
旧暦の秋は,七・八・九月であること,中秋の名月といって八月の満月がいちばん愛されたことも教える。
旧暦は月の満ち欠けを元にしていたので,毎月15日が満月である。
中秋の名月といえば旧暦では8月15日に決まっていた。
が,現在の暦では,中秋の名月は年によって日が変わる。

A 毎月毎月,月を見ることができる月は多いけれど,月を見る価値がある名月は,今月のこの月です。
B 毎月毎月,月を見ることができる月は多いけれど,月を見るのに適した月は,この名月が出ている今月です。

A・Bどちらの解釈もあり得るだろう。
⑧を空の月とすれば,⑥も空の月でAとなる。
⑧を暦の月とすれば,⑥も暦の月でBとなる。

発問 . 6

なぜ8月だとわかるのですか。

正解は「『月』が8個あるから。」
この歌は,そういう言葉遊びの歌なのである。