「楽しさ」の中で「ルール」もきちんと指導するバスケットボール
「楽しい」体育ももちろん大切である。しかし、スポーツには「ルール」が存在する。体育の授業でも、基本となるルールはきちんと身につけさせなければならない。それを楽しく身につけられる実践である。

1 正しいルール指導の必要性
これまでの体育では、「楽しい」と「運動量」を課題としてボール運動を指導してきた。
しかし、考えを改めさせる場面に出会った。
バスケのクラブチームにやってきた中学生。ルールがめちゃくちゃである。何度もトラベリングを繰り返す。しかも、本人は気づいていない。
「楽しむ」ことももちろん大切だが、ルールについても指導する必要性を感じさせられる場面だった。
体育の授業で「厳密」にジャッジすることは難しい。ただし、正しいルールを児童に指導することは必要である。
2 イメージ語で伝える
児童たちのゲームの中でよく見られるのが「トラベリング」である。ボールをもち、相手ディフェンスを受けると慌てる。そこで、足をバタつかせる。
その場面で、どう動くことができるかを指導する。
①ピポット
片足を軸足にして、もう片方の足を前後左右にステップして相手からボールを遠ざける。
通常、指導するが、中々実践することができない。中には、ダンスを踊るようにクルクル回って進んでいく児童も見られる。
そこで、
「片方の足をコンパスのように固定して、ク
ルクル回ります。」
とイメージ語で指示を行う。
100%とまではいかないが、何となくわかった雰囲気である。それを強化するのが、練習である。
毎時間、二人一組でのアップを行う。その1つにピポットの要素を含むものを入れる。
「相手からボールを触られないように遠ざけなさい。でも、足はコンパスのままですよ。」
初めは慣れずに戸惑っているが、次第にスムーズな回転ができるようになっていく。
②トラベリング
「ボールをもったら3歩以上歩いてへいけない。」とルールの説明を行うが、理解できても実践することが難しい。
村田斎氏は、次のような指示を出している。
「ボールを持ったら2.999歩まで歩くことができます。」※1
「3歩以上歩けない」では子どもたちに2歩しか歩けない、という印象を与えてしまう。だが、村田氏の指示だと、2歩目で踏み切り、シュートする動きに結びつけることができる。
3 「ルール」<「楽しさ」
ルールを指導しても、すぐに実践できるわけではない。単元終了時でも、できていないことがほとんどである。
しかも、ルールを「徹底」し過ぎてしまうと、何度も笛が入り、ゲームが中断する。「楽しさ」も失われてしまう。
ルールは大切だが、5割程度でいい。
ルールを理解し、気づかせることが目的である。だから、ゲームの流れを重視して、「大目に見る」ことも大切である。
将来、「バスケをやりたい」と思った時に役立つ、と考えるぐらいがちょうどいい。
※1『楽しい体育の授業』2012年7月号
P.35村田斎氏「バスケットボールの特長を無理なく伝える、とっておきの言葉」より引用