「門出」(土佐日記)の言葉遊びを理解させる
「門出」には,作者の言葉遊びが2箇所ある。
1、「船路なれど,馬のはなむけす。」と
2、「潮海のほとりにて,あざれ合へり。」
である(「あざれ」は掛詞)。
これらを,極力教師が説明せず,発問・指示によって指導する。

十分に音読させ,現代語訳もした後の2時間目である。
まずは,設定を確認する。
ノートを出させ,発問していく。
なお,途中で現代語訳を見ても良いことになっている。
主人公は誰ですか。文中の言葉で書きます。(ある人)
職業は何ですか。漢字二字で書きます。(国司)
使用教科書では,「県(あがた)」の注に,「土佐国の国司であった」と書いてある。
正解した生徒に,「どうして分かりましたか。」と問うと,そのことを指摘する。
文中では,どこからどこまで行こうとしていますか。(土佐国から和泉国)
「門出」では,「和泉国までと,平らかに願立つ。」とあるので,土佐国から和泉国までの船路が話題になっている。
ただし,最終的には京を目指している。使用教科書では,地図に表されている。
「船路なれど,馬のはなむけす」(「船路だけれど,送別の宴をする。」)に着目させる。
この文はおかしいです。どうしてですか、隣の人に話します。
答えが出たペアの生徒に発表させる。「ど」(けれど)という、逆接でつないでいるのが一見するとおかしいのである。
逆接でつなぐと言うことは,お互いに反する言葉があるということです。何と何ですか。この文の中から,一字ずつで抜き出します。(「船」と「馬」)
「一文から」「抜き出し」という条件を付けることで,辛うじて正解できる。
正解した生徒に,理由を説明させる。「船の旅で,馬は使わないから」など。
板書 【船】路
↑
ど(逆接)
↓
【馬】のはなむけ…送別の宴
…陸路の交通手段
同じような関係にある言葉が,もう1箇所あります。次の部分から探しなさい。「潮海のほとりにて,あざれ合へり。」
(「潮」と「あざれ」)
一文で探させると難しいので、範囲を限定する。また、字数も限定する。
板書 【 】(一字)
↑
↓
【 】 (三字)
分かったらノートを見せに来ます。
板書 【潮】
↑
↓
【あざれ】
正解が出ても、納得していない顔の生徒がいる。
正解した生徒に、どうしてそうなるのか説明させる。「『あざれ』に含まれる『腐る』という意味が、『潮』(=塩)と反するから」などだが、それでも分からない場合に補助発問を入れる。
塩漬けは何のためにするのですか。(腐るのを防ぐため)
「腐るはずのない『塩』の海で,『腐っている』」。これも,作者のしゃれですね。
「あざれ」のように、1つの言葉が2つの意味を持つ表現を、「掛詞」と言います。
使用教科書 『新精選国語総合』(明治書院)