高校倫理「アリストテレス」⑥ 正義と友愛
アリストテレスは、社会に生きる人間の生き方、あり方についても言及した。「人間は自然本性上ポリス的動物である」。人間が社会という共同体で、異なる他者とともに暮らし、よりよく生きていくためには何が必要なのだろうか。これからの社会に生きる高校生に授業したものをブラッシュアップし、再現する。

1.教科書の構成
【4】 アリストテレス
①イデア論批判
②形相と質料
③四原因説
④可能態と現実態
⑤徳の倫理
⑥正義と友愛(今回)
2.授業の展開
アリストテレスの言葉「人間は自然本性的にポリス的動物である」この言葉について追究していきます。
ところで、私たちは本質的に一人で生きている存在ですか?一人であるか。どうでないか?どちらだと思いますか?
(例)一人ではない。/誰かと関わって生きている。
アリストテレスは、人間はポリスという共同社会に生きる存在だということを述べているのです。
*ポリス=古代ギリシアの都市国家
また、教科書にも次のようにあります。アリストテレスにとって、ポリスは各人の幸福を実現するために共通の利益を追求する共同体であるから、「最善の国制とは、すべての人が幸福に生きることができるような制度」である。
そのような人々を幸福することを目的としたポリス。そのポリスが成立するうえで重要な社会関係に関わる徳について、アリストテレスは述べています。
ちなみに、社会という共同体で、人々が幸せに暮らすために、皆さんなら、何が必要だと思いますか?
ノートに2つ、3つ箇条書きにしてみてください。
どのようなことが必要だと思いますか?
*意見を述べる。
アリストテレスは、2つの徳を挙げています。一つは、なんでしょうか?
正義
もう一つは何ですか?
友愛
この「友愛」をカタカナ表記では「フィリア」といいます。
「正義」と「友愛」をノートに書いてください。
さらにアリストテレスは「正義」について詳しく言及しています。大きく2つ。そのうち1つを2つに分類しています。
順番に見ていきます。
最初に大きく2つ。何という正義がありますか?
全体的正義・部分的正義
あとでパッとみて分かるように、用語とその意味をノートに書いてごらん。
【ノート例】
●全体的正義・・・人々が法律にしたがう。
●部分的正義・・・人々の間で平等が実現している状態
アリストテレスは「部分的正義」について、更に2つに分類しています。
一つは、名誉や報酬を各人の功績に比例した形で配分、分けるという正義。これは何といいますか?
配分的正義
もう一つの正義はなんとありますか?
調整的正義
調整的正義。どんな正義ですか?
簡単に説明してごらん。
(例)不当な損害を償い、利害と得失を均等する正義のことです。
得たもののも、損失したものを、等しく調整していこうということですね。
これを何正義といいましたか?
調整的正義
さっきの「部分的正義」の下に、「配分的正義」と「調整的正義」。それぞれ書いてください。
【ノート例】
●全体的正義・・・人々が法律にしたがう。
●部分的正義・・・人々の間で平等が実現している状態
①配分的正義・・・報酬や名誉を功績に比例して配分する。
②調整的正義・・・不当な損害を償い、利害と得失を均等にする。
教科書31ページに戻りましょう。
また友愛についても,アリストテレスは、他者を愛する理由が,快楽を求めるもの、自分の利益によるもの,そして相手のよさに基づくものに区別し,真の友愛とは,お互いのよさに基づくものであると主張した。このような友愛は,相手から利益や快楽が得られるために人を愛するのではなく,相手がまさにその人自身であるがゆえに愛することであり,それは友を「もう一人の自己」のように扱うことである。そのような友愛こそが,真の共同関係を実現する原理なのである。(教科書p.31)
このように、アリストテレスは、人間が社会という共同体で生きるために必要なことは何なのかについて言及したのです。
私たちは学校という小さな社会に生きています。周りの人、異なる他者とよりよく生きていくために何が必要か。今以上に考えてみることで、さらに充実した高校生活につながるかもしれません。ともに頑張りましょう。