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力学的エネルギー保存則を大づかみに捉える(②/③持続する運動現象の理由を考察する)

振り子のような運動がなぜ長時間継続するのか、理由を考えさせる。その理由を使う練習を通じて保存則の要点を理解させる。(オープン審査A合格)


持続する運動現象の理由を考察する

説明 . 1

実験を観察します。

振り子の単振動を演示実験し、30秒観察させる。
この運動はなかなか減衰しない。40分放置すると振幅は小さくなったが振動はまだ続いていた。

説明 . 2

質問をするので、「はい」か「いいえ」で答えます。

発問 . 1

この運動には、

運動エネルギーKはありましたか。---①

以下、同様に、質問して答えさせる。
T:重力による位置エネルギーUはありましたか。---②
T:弾性力による位置エネルギーUはありましたか。---③
T:力学的エネルギーEはありましたか。---④

問の答えは順に①「はい」、②「はい」、③「いいえ」、④「はい」になる。

説明 . 3

おもりは往復運動を繰り返し続けます。

発問 . 2

それはなぜですか。

指示 . 1

エネルギーという言葉を用いて説明しなさい。
4人で相談。
始め。

相談時間は3分以上を確保する。
相談の収束しない班が半数以上残っていれば、5分までは待つ。
収束しない班が1~2班まで減れば、3分前でも打ち切って、発表させる。
T:発表どうぞ。
生徒自ら起立して発表するよう促す。

説明に対する評定の基準は次の通り。
(1)エネルギーという言葉を使っている。(10点)
(2)運動エネルギー、位置エネルギーという言葉を使っている。(各20点)
(3)力学的エネルギーという言葉を使っている。(30点)
(4)運動エネルギー、位置エネルギー、力学的エネルギーという3つの言葉を使っている。(70点)
(5)増える、減る、和が等しい、などの適切な述語を使っている。(10~30点)

模範的解答例
位置エネルギーが減ると減った分だけ運動エネルギーが増え、位置エネルギーと運動エネルギーの和である力学的エネルギーが一定に保たれているから。

生徒に発表させると、すぐには満点説明はできない。数名の発表を聞いた後、どうすれば100点の説明になるか、更に相談させる。
T:100点に近づけます。更に相談。
T:減点はキーワードの不足です。
生徒たちから模範的回答を引き出すよう努める。
生徒だけで100点にならないと判断できるときは、打ち切って教師が正解を言う。

次第に止まるという体験に基づく主張への対応

相談させていると、次の点を指摘する生徒が出る可能性がある。
「長い時間振動させると、振動の振幅が減衰していく。つまり、力学的エネルギーは保存されず、減少する。」
その場合は、減衰が極端な現象を演示するとよい。
例えば、スズランテープに軽いおもりで作った振り子を振動させ観察させる。

この実験動画の場合、2分後にはほとんど静止した。

動画を見せるなり演示をするなりして、以下の質問をする。
質問が出ないときはこの部分を省略して説明4に飛ぶ。

T:なぜすぐ減衰するのですか。
生徒はすぐに気づく。
S:空気の抵抗があるからです。
そこから逆に考えさせる。
T:空気の抵抗を極限まで減らしていくとどうなるのですか。
S:いつまでも振動が続く。
T:「エネルギー」という語句を使った言い方で。
S:力学的エネルギーが保存される。
T:そうだ。

説明 . 4

空気などの抵抗がないという前提で考えてください。
おもりの位置P1、P2、P3に対する力学的エネルギーE1、E2、E3を考えます。
E1、E2、E3の間にある関係を式で表し、ノートに書きなさい

板書
E1 □ E2 □ E3

指示 . 2

□の中に、関係を表す数学記号を書きます。
1分で書きなさい。

E1  =  E2  =  E3
という関係になる。
鉛筆の動きが止まった生徒が半数を超えれば、発表させる。
T:発表、どうぞ。
積極的に挑戦する生徒が自ら起立して発表するよう促す。
S:「E1 = E2 = E3 です」「イコールが入ります」
などの発表がある。
T:正解。ノートに〇。

指示 . 3

「E1 = E2 = E3」という関係を何といいますか。
教科書から探して、指を置きなさい。

生徒の動きを見守る。
半数の動きが止まれば発表させる。
T:隣と確認。
生徒は「力学的エネルギー保存の法則」に指を置いていることを確認し合う。

指示 . 4

みんなで言います。

T:さんはい。
S:力学的エネルギー保存の法則です。

逆も言わせる。
T:力学的エネルギー保存則の式を簡略形で言いなさい。
S:E1 = E2 = E3です。
T:よく言えました。

板書
E1  =  E2  =  E3
力学的エネルギー保存の法則

指示 . 5

ノートに書きなさい。

保存という考え方を使う練習

指示 . 6

動画を見ます。

【ばね振り子の周期】水平方向・斜面・鉛直方向の振動の違いは?
URL:https://www.youtube.com/watch?v=yijUBu0X9k8&list=PL5hZ1Tzk9L4jfEba4E1q3PAoK2FqRnFP1&index=28

YOUTUBEに公開されている上記の動画の冒頭の15秒を見せる。
音声はoffにする。力学的エネルギー保存則とは関係の薄い用語がたくさん出てきて混乱を招くからだ。

説明 . 5

ばねに結合された台車が水平方向の往復運動を継続しています。

発問 . 3

なぜ運動が継続するのですか。

指示 . 7

エネルギーという語句を使って、理由をノートに書きなさい。

運動の継続性という点で、振り子とまったく同じ現象。
作業時間1分。

模範的解答例
弾性力による位置エネルギーが減ると運動エネルギーが増えて、力学的エネルギーの和が保たれているから。

説明 . 6

弾性力による位置エネルギー、運動エネルギー、力学的エネルギー、保存という4つの語句を使っていれば完璧です。

T:4つとも使った人。
挙手をさせて、確認する。
T:完璧です。ノートに花丸。
T:使わない言葉があった人。
挙手で確認する。
T:足りない言葉を書き加えます。書き加えたら〇をつけなさい。