PECS(ペクス)
ペクスとは何か、ペクスの活用法を知る

PECS(ペクス)とは何か
Picture Exchange Communication Systemの頭文字PECSからペクスと読む。
絵カード交換式コミュニケーションシステムと訳す。
1.誰が作ったのか
アンディ・ボンディ氏とロリ・フロスト女史(ご夫妻)が共同で1985年に開発を完了した。
応用行動分析学の考え方が元になっている。
アンディ・ボンディ氏は応用行動分析学を専攻し博士を取得、自閉症児の指導経験を長く持つ。
ロリ・フロスト女史は言語病理学(speech-language pathologist)の修士を取得し、医療言語聴覚士として子ども支援の経験を長く持つ。
2.誰が普及させているのか
開発者が1992年にアメリカで設立したピラミッド教育コンサルタント社が普及に努めている。
日本では2006年5月に北九州市でピラミッド教育コンサルタントオブジャパン(株)が設立され、サービス提供を担当している。
世界15カ所にオフィスを持っている。
3.誰を対象にしているか
年齢不問、障害不問。
言語によるコミュニケーション能力の向上を図りたい自閉症などの人が対象となる。
自分の好きなものを明確に指し示す行動が観察されていることが唯一の条件といえる。
4.必要な用具はあるか
ピラミッド教育コンサルタントオブジャパン社からは、7種類の教材のほか、iPad対応のアプリ(PECSⅣ+)、googleOSにも対応したアプリ(Working4) などが提供されている。
教材の中には、絵カードを自作するためのデータCD2種類が含まれている。
また、東京教育技術研究所が「パッと行動支援絵カード / 学校生活編(4ヵ国語表記)」という教具を提供している。
用具ではないが、指導に当たっては、指導者が2名必要である。強化子を持って行動を誘い、できたらその強化子を与える人、対象者に対して身体プロンプトを行う人の2名である。
5.活用法を学ぶ場はあるか
ピラミッド教育コンサルタントオブジャパン(株)がワークショップを開催している。リンク先HPの<トレーニング>をたどっていくと申し込むことができる。(2019/08/24確認)
6.コミュニケーションを教えるに当たっての準備
コミュニケーションのトレーニングを行うには、合理的な動機づけが必要である。
「具体的な物品・活動・行為を得るため」とする。
様々な場面で、標的行動を増やすための報酬(強化子)として利用できる対象者の好きなものをリストアップする。
指導の6段階(フェーズⅠ~フェーズⅥ)
フェーズⅠ コミュニケーションの自発
自ら要求することを教える。欲しいものの絵カードを取って、実物と交換することを教える。確実にほしがるように環境を調整しておく。
フェーズⅡ 絵カード使用の拡大
動機付けを高める物品を増やす。物品は多様な種類で構成する。食べ物、おもちゃ、テレビを見る権利など。その結果、絵カードが遠くにあっても、コミュニケーションの相手が遠くにいても、コミュニケーションが成立することを目指す。
フェーズⅢ メッセージの選択
2枚の絵カードから正しい選択をできるようにする。順次枚数を増やしていく。最終的にすべての絵カードの弁別を学習する。
フェーズⅣ 文構成の導入
「私がほしいのは」+「おもちゃです」の構文を教え、「おもちゃです」の部分に自分のほしい物品の絵カードを貼らせて、物品を手渡す。
色・形・大きさなどの属性を教え、その属性を用いて要求しているものを明確にすることを学ぶ。
フェーズⅤ 簡単な質問への応答
フェーズⅥの「コメント」スキルの前段階となる。「何がほしいの?」という質問に答えることを学習する。
フェーズⅥ コメント
「何が見えるの?」「何が聞こえるの?」「何を持っているの?」などの質問に答えられるようにする。「何が見えるの?」に対して「スプーンが見える」と答えたときは、スプーンは与えず「そうだね、スプーンが見えるね」という返事を与える。