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質量と重さと重力

重さと重力を区別する意味はあまりない。それより重力=質量×重力加速度(W=mg)の公式を使いこなすことが大切である。質量と重さは物理的にも日常的にも意味が似ており、重力とは概念が異なる。そのことを淡々と扱う授業展開を紹介した。

説明 . 1

宇宙ステーション。

ネットで動画や写真を探して紹介する。

若田宇宙飛行士のおもしろ宇宙実験 Try Zero-G

説明 . 2

ものは宙に浮いてしまいます。
重さを量ることができません。

発問 . 1

このような世界を何の世界といいますか。

口々にどうぞ。
「無重力の世界です。」
正解。

説明 . 3

軽い紙のようなものも、重いバーベルのようなものも、みんな浮いてしまいます。
無重力だからね。

ここで問題です。
宙に浮いている紙やバーベルを押します。

発問 . 2

紙とバーベルで、動かしやすさに違いはあるでしょうか。

選択肢
1.ある。
2.ない。
手を挙げさせて、分布を確かめる。
予想の理由が言える生徒がいれば発表させる。

説明 . 4

実験で示すことはできませんが、これは違いがあります。
紙のようなものは小さな力でもスーッと動いていきます。
バーベルのようなものは簡単は動いてくれず、動かすには大きな力が必要になります。
このとき、人間は紙を動かすときには「軽い」と感じ、バーベルを動かすときには「重い」と感じるのです。
地球上にしろ宇宙にしろ、動かしにくいとき、人間は「重い」と感じ、その「重い」の度合いを「重さ」といいます。

具体例を紹介してもよい。
宇宙ステーションの動画を見せる。
若田宇宙飛行士のおもしろ宇宙実験 Try Zero-G
1.ラジオ体操をしている場面。(0:40~3:50)
  手・腕はパッパッと素早く動かしている。軽いからである。
2.スポンジボールを動かす場面。(4:50~6:10)
  ボールはごく簡単に動かせている。軽いからである。
3.体幹を曲げるひねるの動き・腕立て伏せ(6:30~7:30)、側転(7:50~9:15)などの動作をする場面。
  こういう動きは心なしかゆっくりである。重いからである。

今の説明で、理解できた人?と尋ねる。

首を振る生徒が多ければ、違う説明をする。

説明 . 5

第2の説明です。

物体を動かそうとすると、宇宙でも地球上でも物体には運動の法則がはたらきます。
a∝F/m(加速度比例質量分の力、加速度は力に比例し、質量に反比例する)
この法則には、重力は関係ありません。
質量が大きいものを重いと言い、重いものは動かしにくいのです(加速度が小さい)。
質量が小さいものを軽いと言い、軽いものは動かしやすい(加速度が大きい)。

「どっちの説明がわかりやすかった?」
「もう一回聞きたい人はいますか」
と尋ね、聞きたい人がいれば、もう一度同じ説明をする。

説明 . 6

物体の動かしやすさについて、今の勉強でわかったことをお隣に説明します。

指示 . 1

ペアワーク、始め。

「重いと動かしにくい。動かしにくさを表す数値は質量である。」
「動かしにくさを表す度合いは質量で表す(慣性質量という)が、重さと言っても通じる」
「宇宙でも地上でも動かしにくさの度合いを表すのが質量である。動かしにくさと重力は無関係。」
「宇宙では、動かしにくさを表す質量は量れるが、重力は測れない。」
「重力は場所によって違う(地上・山頂、赤道・北極・南極、地球・月・火星、など)から、動かしにくさを表すには適さない。」
という内容が言えればよい。

指示 . 2

質量と重力の違いをノートに書きなさい。

「書けました」
半数ほどが書けたと言ったら、
まだ時間が欲しい人?
と尋ねる。
人数が多ければ「1分待ちます」、少なければ「30秒待ちます」と言って、最後の説明をする。

説明 . 7

質量・重さと重力の違いがテストで質問されることは99%ありません。
だから、説明が上手に書けなくても気にしなくてよい。
それよりも、

重力W=mg
がスラスラ言えて、mが質量、gが重力加速度9.8m/s2だとわかっていることが大切です。