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持久走大会やマラソン大会を,段階的に廃止する実践事例

持久走とマラソンの意味をはき違えていることが,そもそもの問題である。

以前の勤務校で、持久走大会が行われていた。各学年ごとに決まった距離(低学年は800M、中学年は1500M、高学年は2000M)を競走する。すると必ず、どの学年でも歩くくらいのスピードでかなり遅い子が出てくる。その子がやっとの思いで校庭に戻ってくると、「がんばって!」「もう少し!」「ファイト!」と言った声援や拍手が起きる。一見、美しい場面と見られがちだが、私はその走っている子の事を考えると見ていられなかった。

持久走とは「一定の時間走り続けることを指導する」ことである。対してマラソンとは、一般的に「長く距離を走ること」の俗称として使われているが、本来は42.195キロを走る競技の名称である。

当時、浜井俊洋氏に以下の事を教わった。 かつて「持久走」は「陸上運動」領域で行われていました。ですから「持久走」→「マラソン・駅伝大会」という図式は全国でみられました。 中でも「業前・業間の持久走」が盛んに行われたようです。これは,教育によって身体の鍛練を行うことを目的としていた戦前の体育の考えの名残で,体育の時間だけでは十分に「持久力の向上」が望めないので,業前や業間に活動を行い運動量を補ったというのがそもそもの始まりです。そこへ陸上運動の楽しさである「競争」の要素が入ったため競争の準備段階」として「業前・業間の持久走」が行われるという形が多かったようです。しかし,昭和52年の改訂によって,「持久走」は「体操」領域に組み込まれ,「競走を伴う長距離走は,児童の心身の発達の状況から見て,学校では適当ではない。」(S52指導要領改訂時の説明)とされるようになり,その性格は変わったのです。

そして、私は体育主任として「校内持久走大会実施計画案」を提出した。「趣旨と内容」と題して以下の内容を提案した。

説明 . 1

新学習指導要領では、基本的な考え方として「生涯に渡って運動に親しみ健康な生活 を送るための素地をつくる」ことが強調されている。さらに持久走とは「一定の時間走り続けることを指導する」と記されている。マラソンという言葉は,一般的には長く距離を走ることの俗称として使われているが,本来は42.195キロを走る競技の名前である。よって,昨年度まで取り組まれてきた持久走大会はマラソン大会の意味合いで行われてきたと言える。持久走をマラソンや長距離走と混同してしまうのは危険である。ここで言う危険とは児童の命に関わると意味である。

説明 . 2

②今年度から本来の持久走の意味を捉え直した内容に変更したい。そこで考えられる 種目としては「ペースランニング」である。自分のペースで一定の時間走り続ける種目。健康づくりに直結した走り方になり,ジョギングのイメージといえる。走り続ける時間を自分で決め,ゴール近くにおかれる時計を見ながら一定時間走る。時間は3分,4分,5分の3つの部の中から自分でエントリーする。

この提案が通り実施した。特に苦情はなかった。救われた!という安堵の声が耳に届いてき。 二年目は「記録会に変更、二学年ごと開催」 三年目、ついに「持久走記録会の廃止」となった。

生涯スポーツへと続く,そのような体育的行事を実施していきたい。

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