古典文法テキストの復習 「に」の識別を例に
既習事項の復習をテンポよく進めます。識別の手がかりを最初に5つ示して、それをもとに識別の問題を指導しました。

識別の手掛かりとして、以下の5つを最初に全て示しながら教える。
①単語の区切れ
②接続
③活用形
④現代語訳
⑤用いられる形
以下、具体的な授業展開である。
例 「に」の識別
問題 【 】内の「に」を文法的に説明せよ。
A 翁やうやう豊か【に】なりゆく。
B 勢ひ猛の者になり【に】けり。
C いと暗き【に】来けり。
D 憎き【に】、その法師をばまづ斬れ。
E 学びて知るは、まことの智【に】あらず。
①だけで識別できるAから扱う。
まず何をしますか。(単語に区切る)
単語に区切りなさい。(翁/やうやう/豊かに/なりゆく。 つまり、「豊かに」で一語である。)
用言の活用が十分に定着していなければ、補足する。テキストを見せながらでも良い。
「豊かなり」の活用を言いなさい。(語幹:豊か 活用語尾:なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ つまり、「豊かに」までが「豊かなり」の連用形である。)
Aの答えを書きなさい。(ナリ活用形容動詞の連用形活用語尾)
156~157頁の一覧から選んで書かせても良い。
次に、①②までで識別できるBを取り上げる。
まず何をしますか。(単語に区切る)
単語に区切りなさい。(勢ひ/猛/の/者/に/なり/【に】/けり。)
次に何をしますか。(接続を見る)
接続は何形ですか。(連用形)
用言の活用が十分に定着していなければ、補足する。テキストを見せながらでも良い。
動詞「なる」の活用を言いなさい。(語幹:な 活用語尾:ら/り/る/る/れ/れ つまり、「なり」は連用形である。)
Bの答えを書きなさい。(完了の助動詞「ぬ」の連用形)
次に、④現代語訳を考慮しなければならないC、D、Eを扱う。
Cの識別をします。まず何をしますか。(単語に区切る)
単語に区切りなさい。(いと/暗き/に/来/けり。 つまり、「に」は一語。)
次に何をしますか。(接続を見る)
接続は何形ですか。(連体形)
体言・連体形に接続するのは⑴格助詞、⑵接続助詞、⑶断定の助動詞 とまだ3つも可能性があり、答えを絞れない。
次に何をしますか。(現代語訳する)
ここは助詞なので、③活用形 は該当せず、④の手掛かりを使う。
現代語訳しなさい。(とても暗い夜【に】逃げてきた。)
Cの答えを書きなさい。(格助詞)
Dも、接続の確認までは同様にする。
次に何をしますか。(現代語訳する)
現代語訳しなさい。(憎い【ので】、その法師を真っ先に斬れ。)
Dの答えを書きなさい。(接続助詞)
Eも、接続の確認までは同様にする。
次に何をしますか。(現代語訳する)
現代語訳しなさい。(学んで知るのは、真の知恵【で】はない。)
Eの答えを書きなさい。(断定の助動詞「なり」の連用形)
最後の⑤を紹介する。
断定の助動詞はどのような形で用いられますか。テキストから探しなさい。
断定の助動詞「なり・たり」の項目に書いてある。
みんなで読みます。(「に」に存在の意味を表す動詞がつく。)
「存在の意味を表す動詞」が抽象的で分かりづらい。
つまり、断定の助動詞は「あり」「侍り」「候ふ」とよくセットで用いられるということです。
板書
【に】・・・あり
【に】・・・侍り
【に】・・・ 候ふ
→【に】は断定の助動詞
Eは「あら」(=「あり」)に着目して「断定の助動詞」と答えることもできます。これが⑤の「用いられる形」という手掛かりです。