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奇跡のリンゴ

農薬や化学肥料を当たり前のように使う現代の農業。しかし、最も農薬に依存したリンゴ栽培で、無農薬・無肥料に挑戦した男がいた。(TOSS長崎ML推薦) No.6216147 http://blog.goo.ne.jp/n-kenji522/e/06c0c7fd173c5e1a6a4d1b430b19149b
原実践 中尾憲治先生 コンテンツ作成 大輪真理

<対象>小学校高学年~中学校の総合的な学習、もしくは道徳で実施

<解説>昔は農薬など存在しなかった。除草剤や殺虫剤などがなくても
立派に稲や野菜を育ててきた。しかし現代は違う。リンゴに限らずほとん
どの栽培作物で農薬や科学肥料が使われている。研究によれば農薬を
使わなければ、害虫の被害によってリンゴの収穫は90%以上も減ると言
われている。翌年も続けるならば収穫は確実にゼロになり、その状況を打
破するには農薬意外にないと言われている。しかし、そんなリンゴ栽培の
常識に果敢に挑戦した人間がいた。名前を木村秋則という。氏の筆舌を
尽くしがたい努力の日々には感動がある。そこに焦点をあてるならば道徳
としても授業可能だ。氏の著書を読んでから、決めてもらえばいいと思う。

説明 . 1

人とリンゴは数千年ものつきあいだと言われています。(ピンポン球を提示)
しかし、昔のリンゴはこんなに小さくて、とっても渋かったそうです。

発問 . 1

このリンゴ食べたいですか?

「いいえ」 「食べたくありません」

発問 . 2

もしあなたがリンゴ農家だったら、たくさん売れるように、また栽培しやすい 
ようにどのようなリンゴにしたいですか?(中学生には品種改良という言葉で)

指示 . 1

ノートに箇条書きでたくさん書きなさい。

「大きい」「甘い」「赤い」「害虫に強い」「病気に強い」「細菌に強い」・・・

発問 . 3

どんなに甘くて大きいリンゴでも、虫や病気に弱いリンゴは育たなかったの     
ですが、あるモノの発明で虫や病気・細菌などの被害を考えなくても良くなり
ました。そのあるモノとは何でしょう?

「農薬」

発問 . 4

リンゴの木1本には何種類くらいの虫がつくでしょう?

「10」「50」「100」・・・・(リンゴにつく害虫がリストアップされたHPを提示)

説明 . 2

リンゴの木には200種類を超える害虫がつくと言われています。新しい害 
     虫や病気が広がるたびにリンゴは全滅し、農家は大きな被害を受けてきま
     した。 農薬をまかないリンゴの木は収穫量が1割になり、2年で枯れていく
     そうです。ふつうのリンゴ農家では1年間に13回農薬をまくそうです。

発問 . 5

リンゴはこう言われています。「○○なしでは育たない」○○に入る言葉は?

「農薬」

説明 . 3

しかし、このリンゴ業界の常識に戦いを挑んだ人がいます。木村秋則さんで
す。リンゴ農家の婿養子となって栽培をはじめたのですが、農薬のせいで
皮膚が炎症をおこし、薬に弱い奥さんは散布するたびに1週間ほど寝込む   
そうです。

発問 . 6

あなたが木村さんなら奥さんのためにどうしますか?

「農薬を使わない」「リンゴ栽培をやめる」「奥さんを働かせない」

説明 . 4

木村さんが選んだ方法はこれです。『自然農法 福岡正信』(スライド提示)
読書家で研究家の木村さんが偶然手にした本でした。自然農法というのは
簡単に言うと農薬も科学肥料も使わず栽培することです。本に書かかてい
るのは稲作や野菜の栽培でしたがそれを応用すれば、リンゴもできると考え
たのです。発生する虫は手でとってビニール袋に入れていきました。

発問 . 7

1年目にリンゴの自然農法は成功したと思いますか?

「成功した」「失敗した」(挙手で確認)
   ※2年目以降も「成功したと思いますか?」と聞きながら説明していく。
  【1年目】2ヶ月で虫が大量に発生し、4ヶ月で葉がなくなる
  【2年目】花すら咲かず、ただ害虫を捕る毎日
  【3年目】かまど消し(破滅者)と呼ばれ、村八分状態。
  【4年目】食べるものもなく草を野菜の代わりに入れて食べる。
       学用品も買ってやれず、給食費も払えない。
  【5年目】木が枯れていく。
  【6年目】虫退治のために思いつくすべての方法も行ったがダメ(万策尽きた!)

発問 . 8

万策尽きて、自分のせいで家族を路頭に迷わせていると考えた木村さん
     は、ある晩、丈夫なロープをもって一人山道を登って行きました。
    何をしにいったと思いますか?

「自殺」 (自殺という言葉は生徒の実態を考慮して使ってください)

自殺するための丈夫な枝を探していた木村さんですが、偶然にも農薬も肥  
料もやらないのに元気に育っているリンゴの木を見つけます。(実際はどん
ぐりの木を見間違えていた)そこでひらめいたのです。この自然と同じような
状況をつくればリンゴは育つのだと。その日から木村さんは草刈りをやめ、
落葉と枯れ草が積み重なり、昆虫と微生物が元気に生活できる豊かな土地
づくりをめざします。さらに大豆をまいて、窒素を固定する根粒菌を増やす
のです。また、虫はすべて害虫と思っていましたが、害虫を食べる益虫の存
在に気づき、数のバランスを保てばいいことも分かりました。
それから2年後、ようやく白い花が咲きました。 自然栽培を始めてから8年   
目のことです。実がなって売れるリンゴができたのはさらにそれから2年後
かかりました。

発問 . 9

木村さんのリンゴは『奇跡のリンゴ』と呼ばれています。奇跡とはどういう意
     味でしょう?。

「信じられないくらいおいしい」 「実がなることが奇跡」

説明 . 5

木村さんのリンゴ、とてもおいしいく、ネットでは発売と同時に10分で完売
で、このリンゴが食べれるレストランは、1年先まで予約で一杯だそうです。
さらに、『奇跡』と呼ばれるのには理由があります。木村さんのリンゴは腐ら 
ないそうです。(ネット上にたくさん写真があるので提示してください)
     半年たっても、2年たっても腐らないで枯れていくそうです。
     自然にも人間にもとっても優しい自然農法。もっと世の中に広がっていくと
     いいですね!

<参考文献・サイト>

『奇跡のリンゴ』 石川拓治 幻冬舎
『リンゴが教えてくれたこと』 木村秋則 日本経済新聞出版社
『自然から学ぶ 生き方暮らし方』 天野紀宜 農山漁村文化協会
『わら1本の革命』 福岡正信 春秋社
プロフェッショナル仕事の流儀 『農家 木村秋則の仕事』