「ねこ」か「のらねこ」か 『サラダでげんき』登場人物の検討
「登場人物」について初めて取り上げました。1年生でもしっかり読み取り、討論できることが分かりました.

(東京書籍 1年下)
『言葉を根拠に討論する一年生』漆山仁志・著(明治図書)から、
「四 登場人物の検討で討論の授業を仕組む」を追試した。
日づけ、サラダでげんき
を書きなさい。
とうじょう じんぶつ と書きなさい。
お話に出てきた登場人物はなんですか。
ノートに書きましょう。
登場人物について扱うのは初めてだが、あえて定義については触れないでおく。
後の検討で理解させたいからである。
ノートへの書き方も教える。
「・」をかいて、その下に答を一つ書きます。
1行に1つです。
これを「箇条書き」といいます。
時間は5分です。どうぞ。
子どもたちから出たのは、次の通りである。
・りっちゃん ・のらねこ ・犬 ・すずめ ・あり ・おまわりさん
・うま ・白くま ・アフリカぞう ・おかあさん ・ねこ ・ひこうき
・サラダ ・でんぽう ・やさい ・スプーン
「ねこ」まではよかったが、
「ほかにないですか?」と問うと、どんどん違うものが出てきた。
「スプーン」が出たところで発表を止めた。
この中で、おかしいものはありませんか。
登場人物の定義を知らないため、子どもたちは「おかしいものなんて、あるの?」とでもいいたげな反応だった。
そこでヒントを出した。
「スプーン」はどうですか。
なおわからない状態だったので、教科書を探させた。
「スプーン」はどこに出ていますか。
「14ページ」という子と「13ページ」という子とがいた。
14ページには文章中に文字で出ていたが、13ページは挿絵であった。
ここで挿絵か文かを検討させればよかったが、時間の都合で教師が教えた。
挿絵はね、この絵を描いた人が、このお話を読んで想像して、それで絵にしました。
挿絵を描いた人はだれですか?
そうですね、「ちょう しんた」さんですね。
長新太さんが、こうだろうなと想像して絵にしたので、本当にこのとおりかどうかは、
お話を書いた人に聞いてみないと分かりません。で
すから、絵を見て決めるのではなくて、文に書いてあることをみんなが読み取らないといけませんね。
14ページのスプーンは消え、13ページのスプーンで検討することになった。
「スプーン」は、自分で動いたり、しゃべったりしていますか。
ここでも先を急ぐあまり、登場人物がどういうものか、教師が誘導した。検討した結果、スプーンは消えた。
ついで、登場人物がどういうものか教えた。
スプーンのように、自分から動いたりしゃべったりしないものは登場人物ではありません。
ということは、
登場人物は、自分から動いたりしゃべったりするのですね。
このことを元に、検討の結果、「ひこうき」「サラダ」「でんぽう」「やさい」も消えた。
ほかにおかしいものはありませんか。
漆山氏の実践どおり、「ねこ」がおかしいという意見が出た。
理由は「『ねこみたいにね』とあるだけで、『ねこ』は出てきていない」ということだった。
よって、「ねこ」が消え、「のらねこ」が登場人物に加わった。
そのとき、ある子が叫んだ。
だったら、「犬」でなくて、「となりの犬」!!
これには驚いた。
「『犬』はどこにでもいるけど、ここに出てきているのは『となりの犬』」だ
と言うのだ。
正直言って、そこまで考えていなかった。漆山氏の実践でも「犬」となっていた。
「先生も気がつかなかったよ。天才だね。すごいなあ。」 思いっきりほめた。
しかし、時間が来て、「白くま」がどうなのかは、検討するのを忘れてしまった。
1年生でもここまで討論できる。さすがだと思った。
実質25分の実践であった。また機会があるなら、もっと時間をかけて、ゆっくり検討させたいと思う。