自分の指導法と違う「描きかけの絵」を引き継いだとき
指導途中の絵を引き継いだとき、何を悩みどういう選択に至ったかの実践記録です。3原色と、キミ子方式を取り入れました。

臨時講師時代の6月末、突然5年生担任になった。
6月上旬から描いているという、指導途中の写生絵画『窓辺の花』を引き継いだ。
7月上旬に「絵画展」があり、それまでには仕上げなければならない。
ところが、
過去に自分が指導してきた方法と、全く異なる画風だった。
引き継いだときの状況は、次の通りであった。
【素材・使用用具】
薄手の四つ切り画用紙(白)・画板・えんぴつ・水彩絵の具12色
【絵を描く場所】
教室外で校内の好きなところ(渡り廊下・図書館・踊り場など)。
【絵の状況】
1.植木鉢またはミニプランターに入った花の部分は、彩色済み。
2.彩色はかなり薄く、絵の具の色そのもの。
3.その『花』の部分だけ切り抜き、別の画用紙に貼ってある子がたくさん。
4.背景の下描き途中だが、えんぴつの線を何度も消したあとがある。
5.画用紙は、あちこち破れ、くたくた。
私が過去に習い指導してきたのは、
・箸ペン(墨汁)かマジックで下描きをし、1度描いた線は消さない。
・彩色は、画用紙が透けないくらいとても濃い。
・展示会用なら、画用紙は厚手を使用。
だった。
あまりにも正反対の指導法であり、面食らってしまった。
これからどうするか、次の点で迷った。
【迷い】
1.先に描いた線をマジックでなぞらせ、先に描いた花も、上から濃く彩色させるか。
2.このまま進め、背景は花より薄く彩色させるか。
「TOSS愛知教育サークル」の堀田実氏にメールで相談した。
よく似た画風の絵が、商店街のHPに載っており、その画像を添付した。
すると次のようなアドバイスをくださった。
絵を見ていて、下絵がきの線は鉛筆のまま、重色を徹底して指導されてはと思いました。
一旦鉛筆でかいた上にペンでなぞらせると、子どもの心理としてはどうしても「なぞるだけ」になってしまいがちです。
なぞる時は、対象を再度よく見たりしないのです。
■鉛筆である程度細かいところを描き込ませる。
■淡彩(薄塗り)で何度も重色をさせ、立体感や色の微妙な変化を追求させる。
(中略)
■「キミ子方式」のように三原色、原色でなくとも3~5色だけ選んで彩色させるのもいいかと思います。
・・・やったことはありませんが。
堀田実氏(TOSS愛知教育サークル)より
そこで、やっと次の方向が定まった。
【結論】 このまま続けさせる。
1.先の彩色には、手を加えない。
2.「3原色」(赤・黄・青)で指導する。
3.背景は、花より薄く彩色させる。空は「キミ子方式」にする。
4.一度描いたえんぴつの線は、絶対に消させない。
5.破れた部分は、裏から画用紙を貼り、補修する。
三々五々散らばって描いていた子どもたちは、全員教室に集め、一斉指導し、仕上げさせた。
このことにより、友だちとのんびりくつろぎながら描く気持ちから、集中して描く気持ちに切り替えさせることができ、はかどった。
何とか期限までに、宿題にせず、仕上げさせることができた。
参考文献:
『3原色の絵具箱1 描いてみよう!もやし・イカ・空』松本キミ子・堀江晴美(ほるぷ出版)