乙武洋匡さんの生き方から学ぶ 「五体不満足」の授業
次の3点を学ばせたい。1.障害は不便ではあるが、不幸ではない。2.障害者であっても、配慮や工夫をすれば、健常者と同じようなことができる。3.障害者は「障害」という特徴をのぞけば、ふつうの人である。 No.2210294 http://homepage1.nifty.com/87-asai/sub2.htm
原実践:浅井孝信先生 コンテンツ作成:村岡壮一郎

次の点を子どもたちに学んでもらいたい授業である。
・障害は不便ではあるが、不幸ではない。
・障害者であっても、配慮や工夫をすれば、健常者と同じようなことができる。
・障害者は特別な人間ではない。「障害」という特徴をのぞけば、ふつうの人である。
もうすぐ赤ちゃんが生まれるお母さんに、生まれてくる子は、男の子と女の子とどちらがいいですか、と聞くことがありますね。
このときに、こんなふうに答えることがあります。
「男でも女でもいいです。五体満足であれば、どちらでも。」
○「五体不満足」と板書
両手、両足、そして頭がちゃんとあることを「五体満足」と言います。
でも、世の中には病気やけがで手や足がなかったり、手や足があってもうまく動かしたりできない人がいます。
みなさんも車いすを使っている人を見たことがあるでしょう。
こういう、手や足が不自由な人のことを、みなさんはどう思いますか。
・かわいそう ・自分は手や足がちゃんとあってよかった。 ・困っていたら手伝ってあげたい ・大変そう ・不便だなぁ
○乙武さんの写真(『五体不満足』の表紙)を掲示。
この方は乙武洋匡(おとたけひろただ)さんという方です。
乙武さんは数年前に『五体不満足』という本を出しました。
この方には両手、両足がありません。だから、五体不満足という題名にしたのです。
先天性四肢切断という病気で、おぎゃあと生まれたときから、手も足もなかったのです。
なぜ、そうなったのかは今もわかりません。ただ、とっても短いけど、腕と太ももはあります。
ですから、その短い腕を使って、この写真のように電動の車いすに乗って、自分で動くことができます。
この写真を見て、感じたこと、考えたことを書いてください。
・かわいそう ・歩けるのかなあ ・なんでにっこり笑っているのだろう
さて、この乙武くんが4歳の時のことです。幼稚園に入ることになりました。
電動車いすに載った乙武くんが幼稚園に行きました。ほかの子ども達はどうしたと思いますか。
・びっくりした ・みんな近づかなかった ・驚く ・なんで手がないのと聞いた ・かわいそうと言った
・なんでこんなのに乗っているのと聞く ・恐いと思った
○<資料1>を配布。教師が読む。
資料1
『五体不満足』のP.13~14を印刷して配布した。
「4歳になると同時に・・それ以降はなかのよい遊び友達となってしまうのだった。」
の部分である。(一部は省略した)
<要旨>
みんなから初めは質問攻めに合うが、説明をして納得してもらうと、なかのよい遊び友達になった。
※1,2ヶ月の間はいろんな友達から質問責めにあったこと。
友達がたくさんできて、楽しい幼稚園生活を送っていたということを補足する。
さて、乙武くんが小学校に入ることになりました。
入学したての時は幼稚園の時と同じように、「どうして、どうして」とみんなに質問責めにあったそうです。
でも、だんだんみんな慣れて仲良しになっていきました。
もし、このクラスに乙武くんのような子が転校してきたとしたら、みんなは仲良しになれると思いますか。
○挙手をさせる。
(・なれると思う ・多分なれると思う ・なれるか自信がない ・なれない)
では、このクラスに乙武くんが転校してきたとします。
みんなだったら、どんなことをしてあげたいですか。
・一緒に遊んであげる ・困っているとき助けてあげる ・階段はおんぶしてあげる ・消しゴムを落としたら拾ってあげる
・給食を運んであげる ・黒板に書いてあることをノートに書いてあげる
実はね、この乙武くんのクラスの子ども達も君達と同じように考えました。
両手、両足のない乙武くんのために、いろんなお手伝いをしてくれたそうです。
それを見て、担任の先生はお手伝いをする友だちになんと言ったと思いますか。
・えらいなぁ ・みんなやさしいね ・どうもありがとう ・親切だね
担任の先生はこう言ったそうです。
(板書する)「乙武くんには、自分でできることは自分でさせましょうね。その代わり、どうしてもひとりでできないことは、みんなで手伝ってあげてね。」
(全員で読む。)
なぜ、先生はこのように言ったのでしょうか。
・なんでもみんなが手伝うと、自分でなにもできない子になっちゃうから
・すぐ友達に頼る子になるから ・弱い子になるから
そうですね。きっと先生は乙武くんにできることは自分でちゃんとやる子になって欲しかったんだと思います。
じゃあ、乙武くんが自分でできることってどんなことなんだろうね。
次の中から一人でできると思うことに○をつけてみてください。
○<資料2>を配布。
資料2
乙武くんが自分一人でできることは何でしょうか。次の中から選んで番号に○をつけましょう。
1.電動車いすで動く。
2.歩く。
3.階段を上がる、下りる。
4.字を書く。
5.ごはんを食べる。
6.洋服を着る、ぬぐ。
7.お風呂に入る。
8.ボールを投げる。
9.ボールをける。
10.バットでボールを打つ。
答えを記入させ、正解を発表する。
1.電動車いすで動く。 ○できる
2.歩く。 ○できる
3.階段を上がる、下りる。 ○できる
4.字を書く。 ○できる
5.ごはんを食べる。 ○できる
6.洋服を着る、ぬぐ。 ×できない
7.お風呂に入る。 ×できない
8.ボールを投げる。 ○できる
9.ボールをける。 ○できる
10.バットでボールを打つ。 ○できる
※ここで乙武くんのビデオを見せるとよい。
私は平成11年放送のTBS「サンデーモーニング」 の特集を5分に編集したものを見せた。
『乙武レポート』というビデオが講談社から出ている。
TBSのレポータ ーの時のドキュメンタリー。86分。3400円
みんなは休み時間に、校庭で遊んだり、教室で遊んだりしますよね。
乙武くんは休み時間に何をしていたと思いますか。
・本を読む。 ・外でみんなが遊ぶのを見てる。 ・キャッチボールをする。
※ビデオを見せた場合、運動系の答えも多く出されるだろう。
乙武くんは休み時間に、野球やサッカー、ドッジボールをして遊んでいたそうです。
もちろん、みんなと全く同じようにはできません。どうやって遊んだのだと思いますか。
・ハンデをつけた ・野球だったらボールを打つのだけやらせてあげた
・キーパーをやった
乙武くんでも一緒に遊べるように、「オトちゃんルール」というのをクラスの友達が考え出してくれたのです。
※<資料3>を配布し、ルールの説明をする。図を板書するとよい。
資料3
オトちゃんルール
『五体不満足』のP.36~38を印刷して配布した。
「ボクも参加できるような、・・・「あたりまえ」と受け止めていた。」の箇所である。
<要旨>
・野球
打ったときに、友達が代わりに走る。内野と外野の間に線を引き、この線を越えたらホームランにする。
・サッカー
シュートは3点。
・ドッジボール
オトちゃんがボールを持ったら、敵は半径3m以内に寄らなければならない。
両手、両足がなくても、ルールを工夫すれば、みんなと一緒に楽しく遊ぶことができるのですね。
みなさんは乙武くんはかわいそうだと思いますか。
○挙手させる。(思う。思わない。わからない。)
※おそらく、ほとんどの子が「思わない」と答えるだろう。
今日の授業の最初の方で、手や足が不自由な人をどう思うかと聞いたら、「かわいそう」と答えた人がたくさんいました。
けれど、今、乙武くんがかわいそうかと聞いたら、ほとんどの人が「かわいそうだと思わない」と答えました。
乙武くんのように手足が不自由な人もいれば、目が不自由な人もいます。
耳が不自由な人もいます。そういう人達はかわいそうなのかな.......。
今から、耳が不自由な男の子の書いた作文を読みます。
ぼくは耳が聞こえません。1さいのときに高い熱を出して、聞こえなくなったのだそうです。
ぼくは人の話を聞くときは、耳で聞くのでなくて目で聞くのです。これはたいへんなことです。
数の1(いち)と7(しち)は同じ口の形だし、ほかにもむずかしいことがたくさんあります。
でも、ぼくは自分のことをかわいそうだとは思っていません。
だって、「かわいそう」とか「不幸」などと思っても、耳が聞こえるようになるわけじゃないから、「これがぼくなんだ」と決めています。
「じゃあ、耳の聞こえる友だちとおんなじか?」と聞かれると、首をふってしまいます。
ぼくにはいっぱいたいへんなことがあるのです。
目覚まし時計の音が聞こえません。
駅や電車やバスの放送が聞こえません。
まだまだ苦労があります。
こういうと、やっぱり不幸じゃないかという人もいるでしょうが、ちがいます。
「かわいそう」とか「不幸」というのは、心のさびしい人のことをいうのです。
ぼくは、かわいそうでも不幸でもありません。
お父さんやお母さんや弟や、いっぱい心のやさしい人にかこまれているから、ぼくは今、幸せなんです。
この作文の原典は「ふれあいの手話3」丸山浩路著 学研
私はJVE19号P44大野木一雄氏の実践から引用した。
○次のように板書する。
体が不自由=かわいそう、不幸→不便なだけ
今日の授業の感想を書いてください。