キツネは欲張りか
簡単なお話から、討論への授業が展開できる。

キツネは欲張りか
―石川氏の話を教材化する―
道徳の授業が気になっていた。
私のクラスでは、こう言えばほめられる答えになるだろうというような発言が目立った。言わば、「いいこちゃん」的な発言である。
「子供を動かす法則と応用」に載っていた石川正三郎校長の話を思い出し、取り上げてみた。
「今日は、本も、テープも、もちろんフィルムも使いません。先生の話を聞いて下さい。」と言って、以下の話をした。
ある村はずれの森に、うさぎときつねがいました。
村はずれのお地蔵さんのところへ、2人(いや、2匹か)が来ました。
うさぎが言いました。
「私に、健康な足をくれてありがとう。おかげで、毎日元気に暮らしていま
す。」
次に、きつねが言いました。
「私に、賢い頭をくれて、ありがとう。でも、私は満足できません。健康な足も
ほしいのです。」
これに、答えて、お地蔵さんは言いました。
「うさぎさんには健康な足を、あなたには賢い頭をあげたのです。それなのに、
健康な足もほしいとは、それはあんまり欲張りだ、きつねさん。」
あなたは、きつねとお地蔵さんの、どちらの意見に賛成しますか。
調布大塚小では、ほとんどが、お地蔵さんに賛成。向山氏のクラス45名だけが、きつねに賛成ということだった。
私のクラスでは、お地蔵さん 18名
きつね 0名(欠席1名)
であった。
石川校長の挑戦に対して完敗である。
理由を聞いてみた。
① きうねに早い足をやったら、うさぎが食べられてしまう。→3名
② きつねは賢い頭で健康な足を獲得する努力をすべきである。→2名
③ うさぎは1つしかもらっていないのに、きつねは2つももらおうというのは、 お地蔵さんの言うように欲張りである。→13名
欲張りは、悪いことですか。
4名に聞いてみた。結果は、
① 悪いと思う。→1名
② 良いときもある。→1名
③ わからない。→2名
②について聞いてみた。
もっと良いことをしようというときは、欲張りになってもよい。という理由であった。
「良いことは?」とつっこむと、立ち往生してしまった。
(4名に限定したことで、生徒の多様な意見に迫れなかった。ここは、挙手などで全員の判断を確かめたい。
A君は、先生に言いました。
「先生、ぼくは運動が得意です。先生はそれを認めてくれて、体育を5に評価し
てくれくれました。ありがとう。」
Bくんは、先生に言いました。
「先生、ぼくは、5教科で4や5をとっています。だけど、ぼくは、健康な体も
ほしいのです。体育でも5をとってみたいのです。」
Bくんの考えは、きつねに似ていませんか?
欲張りは、いけないのでしょうか?
生徒の大半は、うなずきながら聞いていた。最後の問いには、首をふった。
うなずかない生徒も、真剣に考えている様子だった。
向上心とは、生徒には、なかなかストレートに表現できないものであるらしいころが分かった。