熱力学第一法則
気体を加熱し、圧縮するという状況を図示し、その図を既習事項を用いて説明する。さらに説明を元に数式表現する。図、説明文、数式表現、この3つの表現方法を自由に往復する作業を通じて法則の理解を図る。

1.復習
復習の対象は
三態変化と潜熱である。
三態変化を復習します。
3問出します。
復習1番 気体の分子
1番。
気体とはどんな状態ですか。
説明する図を頭の中に思い浮かべます。
下記リンク先の「物質の三態」の項で説明している次のgif動画のようなものがイメージできていればよい。
熱運動>気体
静止画でいえば次のようなものである。
2-4. 物質の三態と熱運動>■物質は忍者のように姿を変化させる!(上部、風船内の粒子の動き)
これらの図を見せたり、板書したりして、示す。
「このような図を思い浮かべた人?」
といって、挙手を促す。
正解です。ノートに○。
復習2番 気体を加熱
2番。
気体を加熱します。
気体の何が変化をしますか。
お隣と相談。
相談の様子を見守る。
話し合う様子が収まってきたと判断したら、次の指示を出す。
ノートに箇条書きにします。
できるだけ沢山書きなさい。
番号をつけて書きます。
板書
気体を加熱すると変化するもの
1.
2.
机間巡視
ノートを見て回り、書けている個数をみんなに報告する。例示として、内容を読み上げることもする。
3つ以上で高校生、などと煽ることもする。
いくつ書けましたか?
口々にどうぞ。
生徒の声を拾って、一番多かった生徒に発表させる。
1.体積が大きくなる(膨張)。2.温度が上がる。3.分子の熱運動が激しくなる。
が出ればよい。
文の形でなく、「何が」を表す名詞だけの答えでもよい。
どんな意見でも、明らかな間違いであっても、受け入れる。
「すごい発想だ」など、受け入れる理由をいう。
復習3番 気体を圧縮
3番。
気体を圧縮します。
気体の何が変化をしますか。
お隣と相談。
相談の様子を見守る。
話し合う様子が収まってきたと判断したら、次の指示を出す。
ノートに箇条書きにします。
できるだけ沢山書きなさい。
番号をつけて書きます。
板書
気体を圧縮すると変化するもの
1.
2.
対応は復習2番の時と同じ。
1.体積が小さくなる。2.圧力が高くなる。3.分子運動が激しくなる。4.温度が上がる。
が発表されればOKである。
復習3問の共通点
3つの復習に共通することは何ですか。
答えをノートに書きなさい。
書いたら書きました。
主に、鉛筆の動きを対象に、生徒の取り組む様子を見守る。
半分の動きが止まったら、
そろそろ打ち切ります。
と予告する。
15秒ほど待って、
そこまでとします。
と言って、打ち切る。
発表する人、起立。
起立があるかどうか、一瞬で判断する。
いれば、指名なし発表。
いなければ、列指名発表。
「分子の熱運動」「分子運動」「分子の熱運動が激しくなる」
などの答えが予想できる。
どんな意見でも、明らかな間違いであっても、受け入れる。
「すごい発想だ」など、受け入れる理由をいう。
2-1.中心課題 熱力学第一法則の内容を図で知らせる
復習終わり。今日の勉強に入ります。
加熱と圧縮。
両方に共通する特徴は何ですか。
発表。
復習したばかりである。
答えられない様子が見て取れれば、列指名で、どんどん発表させる。
立たせて発表させる。
「分子の熱運動が激しくなる」
そうだね。よく言えた。立派です。
正しくいえれば着席させる。
言えない生徒にも笑顔を向け、立ってなさい。あとでリベンジします。と言う。
列全員の発表が終わった後に、再挑戦させる。
二度目でも言えないときは、立たせておいて、別な列の列指名を行う。
言えた生徒は座り、言えない生徒は立ったまま。
立っている生徒に、座っている生徒に教えてもらいなさいと言い、待たずに列指名を続ける。
列指名が終わったら、立っている生徒に三度目の挑戦をさせる。
説明成功なら褒め、説明失敗には笑顔で立ってなさいと言う。
教師が笑顔で対応している限り、説明失敗でも雰囲気は明るい。
そのうち、失敗生徒も説明に成功する。
拍手。
頑張ったことをみんなで喜ぶ。
今のような場面でこそ、成長するんですよ。
できなかったことができるようになった。
よく頑張りました。
見守るみんなの姿勢もよかった。いいクラスだ。
苦労したことをこうした形でフォローしておく。
学級担任にも頑張った生徒のことを報告するとよい。
分子の運動エネルギーの総和を何といいましたか。
「内部エネルギー」
そうだ。
すると、「気体を加熱・圧縮する」をこう表すことができます。
気体があります。
シンダー、ピストンを書き、
左上に気体と書く。
加熱します。
ガスコンロ、炎、矢印を書き、
加熱
の文字を加える。
圧縮します。
ピストンが圧縮方向に移動する矢印を書き、
移動後のピストンを点線と斜線で書き表す。
始め、内部エネルギーはU1でしたが、
熱と仕事をもらったので、U2に変化しました。
U1→U2
を書き加える。
すると、下図ができあがる。

2-2.中心課題 熱力学第一法則を言葉で説明する
この図は次のように解釈します。
- 容器内に気体が閉じ込められています。
- 始め、この気体の内部エネルギーUはU1でした。
- そこに、熱Qと、
- 仕事Wを加えました。
- すると内部エネルギーUがU2になりました。
先生のあとについて、いいなさい。
容器内に気体が閉じ込められています。
図の①を指さして、生徒に復唱させる。
「容器内に気体が閉じ込められています。」

始め、この気体の内部エネルギーUはU1でした。
図の②を指さして、生徒に復唱させる。以下同様。
「始め、この気体の内部エネルギーUはU1でした。」
そこに、熱Qと、仕事Wを加えました。
「そこに、熱Qと、仕事Wを加えました。」
すると内部エネルギーUがU2になりました。
「すると内部エネルギーUがU2になりました。」
先生の指す場所を見て、みんなだけでいいます。
- 容器内に気体が閉じ込められています。
- 始め、この気体の内部エネルギーUはU1でした。
- そこに、熱Qと、
- 仕事Wを加えました。
- すると内部エネルギーUがU2になりました。
この図を写しなさい。
自分で自分に説明しながら書くんですよ。

机間巡視をして、一人一人の様子を観察する。
ちゃんと声を出しながら書いている生徒がいたら、必ず取り上げて褒める。「言いながら書いている人がる。こういう人は力がつくぞ」
図を丁寧に書いている生徒も取り上げて褒める。「頭の中にも丁寧に記憶が作られている」
やらない生徒には軽く促す程度で良い。
進行状況を確認する。「書き終わった人?説明練習していなさい。まだの人、急げ」
もう一度。
先生の指す場所を見て、みんなだけでいいます。
教師は順番に黒板を指さし、生徒に説明をいわせる。
- 容器内に気体が閉じ込められています。
- 始め、この気体の内部エネルギーUはU1でした。
- そこに、熱Qと、
- 仕事Wを加えました。
- すると内部エネルギーUがU2になりました。
ノートの図を指差しながら、お隣に説明します。
終わったら交代。
始め。
全体練習をしたあとだから、ペア練習への意欲が高い。
パッと向き合って、説明し合う様子が見られるはずである。
2-3.中心課題 熱力学第一法則を数式で表現する
言葉の説明を数式で表現する
図を見て、U1、Q、W、U2の関係を式で表します。
ご近所で相談。
終わったら、ノートに書きます。
できたら、できました(と言いなさい)。

相談やノート作業の様子を見守る。
3分あれば、終わる内容である。
見計らって、打ち切る。
発表できる人?
どうぞ。
「 U1+Q+W=U2 」
生徒の発表を聞いて、板書する。
同じ人?
正解です。図を見ただけで、これがわかった人は天才です。
等式変形します。
板書
U2-U1=⊿U=
⊿は変化したということを表す記号で、既出である。
生徒が忘れているようであれば、説明する。
続きを発表。
板書
U2-U1=⊿U=Q+W
素晴らしい。よくわかったな。
等式変形に慣れてない生徒が相手なら、どれだけ褒めても足りない。
この式を熱力学第一法則といいます。
図で説明できてもいいし、文章で説明できてもいい。
式も、図も、文章も同じ内容を説明しています。
板書
U2-U1=⊿U=Q+W
式を写しなさい。
書けたら、書けました。
みんなで読みます
さんはい。
「 U2-U1=⊿U=Q+W 」
「熱力学第一法則」
よし。
3.熱力学第一法則への理解を深める
この図の矢印の向きはとても大切です。
この矢印は、2本とも、気体の中に入る向きを表しています。
数式では、+で表します。
だから、丁寧に書き表すと、こうなります。
板書
U2-U1=⊿U=(+Q)+(+W)
つまり、
加熱されて、熱を受け取ると、Qは+で、内部エネルギーが増加する。
圧縮されて、仕事を受け取ると、Wは+で、内部エネルギーが増加する。
Qが負の値なら、⊿Uは増えますか。減りますか。
みんなで、さんはい。
「減ります」
その通り。よくわかったね。
Qが負になる現象の例を挙げます。
ご近所で相談。
見つかったら、ノートに書きます。
ノート作業の様子を見守る。
鉛筆の動く様子がない生徒には、
例を書くんですよ
と声かけをする。
半数以上が書き終わっていれば、
そろそろ打ち切ります
と予告しておいて、打ち切る。
発表してください。
「冷やす」「冷ます」「放熱」などが答えられればよい。
次、先生は何と言うでしょう。
予想がつく人?
口々にどうぞ。
<次に先生が言うことを予想させる>ということを折に触れてやっておくとよい。
どんどん言わせる。
「Wが負」
この答えが出れば○。うんと褒める。
30秒以内に出なければ、教師から言う。
Wが負なら、⊿Uは増えますか。減りますか。
さんはい。
口々にどうぞ、で発表させてもよい。
「減る!」
正解。
Wが負になる現象の例を挙げます。
ご近所で相談。
見つかったら、ノートに書きます。
対応はQが負の時と同じである。
「膨張」「ピストンを引く」などが出ればよい。