VIEW: 35

熱力学第一法則

気体を加熱し、圧縮するという状況を図示し、その図を既習事項を用いて説明する。さらに説明を元に数式表現する。図、説明文、数式表現、この3つの表現方法を自由に往復する作業を通じて法則の理解を図る。

1.復習

復習の対象は
三態変化と潜熱である。

説明 . 1

三態変化を復習します。
3問出します。

復習1番 気体の分子

発問 . 1

1番。
気体とはどんな状態ですか。

指示 . 1

説明する図を頭の中に思い浮かべます。

下記リンク先の「物質の三態」の項で説明している次のgif動画のようなものがイメージできていればよい。
熱運動気体
静止画でいえば次のようなものである。
2-4. 物質の三態と熱運動■物質は忍者のように姿を変化させる!(上部、風船内の粒子の動き)

これらの図を見せたり、板書したりして、示す。

「このような図を思い浮かべた人?」
といって、挙手を促す。
正解です。ノートに○。

復習2番 気体を加熱

発問 . 2

2番。
気体を加熱します。
気体の何が変化をしますか。

説明 . 2

お隣と相談。

相談の様子を見守る。
話し合う様子が収まってきたと判断したら、次の指示を出す。

指示 . 2

ノートに箇条書きにします。
できるだけ沢山書きなさい。
番号をつけて書きます。

板書
気体を加熱すると変化するもの
1.
2.

机間巡視

ノートを見て回り、書けている個数をみんなに報告する。
例示として、内容を読み上げることもする。
3つ以上で高校生、などと煽ることもする。
指示 . 3

いくつ書けましたか?
口々にどうぞ。

生徒の声を拾って、一番多かった生徒に発表させる。
1.体積が大きくなる(膨張)。2.温度が上がる。3.分子の熱運動が激しくなる。
が出ればよい。
文の形でなく、「何が」を表す名詞だけの答えでもよい。
どんな意見でも、明らかな間違いであっても、受け入れる。
「すごい発想だ」など、受け入れる理由をいう。

復習3番 気体を圧縮

発問 . 3

3番。
気体を圧縮します。
気体の何が変化をしますか。

指示 . 4

お隣と相談。

相談の様子を見守る。
話し合う様子が収まってきたと判断したら、次の指示を出す。

指示 . 5

ノートに箇条書きにします。
できるだけ沢山書きなさい。
番号をつけて書きます。

板書
気体を圧縮すると変化するもの
1.
2.

対応は復習2番の時と同じ。
1.体積が小さくなる。2.圧力が高くなる。3.分子運動が激しくなる。4.温度が上がる。
が発表されればOKである。

復習3問の共通点

発問 . 4

3つの復習に共通することは何ですか。

指示 . 6

答えをノートに書きなさい。
書いたら書きました。

主に、鉛筆の動きを対象に、生徒の取り組む様子を見守る。
半分の動きが止まったら、
そろそろ打ち切ります。
と予告する。
15秒ほど待って、
そこまでとします。
と言って、打ち切る。

指示 . 7

発表する人、起立。

起立があるかどうか、一瞬で判断する。
いれば、指名なし発表。
いなければ、列指名発表。
「分子の熱運動」「分子運動」「分子の熱運動が激しくなる」
などの答えが予想できる。
どんな意見でも、明らかな間違いであっても、受け入れる。
「すごい発想だ」など、受け入れる理由をいう。

2-1.中心課題 熱力学第一法則の内容を図で知らせる

説明 . 3

復習終わり。今日の勉強に入ります。

発問 . 5

加熱と圧縮。
両方に共通する特徴は何ですか。
発表。

復習したばかりである。
答えられない様子が見て取れれば、列指名で、どんどん発表させる。
立たせて発表させる。
「分子の熱運動が激しくなる」
そうだね。よく言えた。立派です。
正しくいえれば着席させる。
言えない生徒にも笑顔を向け、立ってなさい。あとでリベンジします。と言う。
列全員の発表が終わった後に、再挑戦させる。
二度目でも言えないときは、立たせておいて、別な列の列指名を行う。
言えた生徒は座り、言えない生徒は立ったまま。
立っている生徒に、座っている生徒に教えてもらいなさいと言い、待たずに列指名を続ける。
列指名が終わったら、立っている生徒に三度目の挑戦をさせる。
説明成功なら褒め、説明失敗には笑顔で立ってなさいと言う。
教師が笑顔で対応している限り、説明失敗でも雰囲気は明るい。
そのうち、失敗生徒も説明に成功する。
拍手。
頑張ったことをみんなで喜ぶ。

今のような場面でこそ、成長するんですよ。
できなかったことができるようになった。
よく頑張りました。
見守るみんなの姿勢もよかった。いいクラスだ。

苦労したことをこうした形でフォローしておく。
学級担任にも頑張った生徒のことを報告するとよい。

発問 . 6

分子の運動エネルギーの総和を何といいましたか。

「内部エネルギー」
そうだ。

説明 . 4

すると、「気体を加熱・圧縮する」をこう表すことができます。
気体があります。

シンダー、ピストンを書き、
左上に気体と書く。

指示 . 8

加熱します。

ガスコンロ、炎、矢印を書き、
加熱
の文字を加える。

指示 . 9

圧縮します。

ピストンが圧縮方向に移動する矢印を書き、
移動後のピストンを点線と斜線で書き表す。

指示 . 10

始め、内部エネルギーはU1でしたが、
熱と仕事をもらったので、U2に変化しました。

U1→U2
を書き加える。

すると、下図ができあがる。

2-2.中心課題 熱力学第一法則を言葉で説明する

説明 . 5

この図は次のように解釈します。

  1. 容器内に気体が閉じ込められています。
  2. 始め、この気体の内部エネルギーUはU1でした。
  3. そこに、熱Qと、
  4. 仕事Wを加えました。
  5. すると内部エネルギーUがU2になりました。
指示 . 11

先生のあとについて、いいなさい。
容器内に気体が閉じ込められています。

図の①を指さして、生徒に復唱させる。
「容器内に気体が閉じ込められています。」

指示 . 12

始め、この気体の内部エネルギーUはU1でした。

図の②を指さして、生徒に復唱させる。以下同様。
「始め、この気体の内部エネルギーUはU1でした。」

指示 . 13

そこに、熱Qと、仕事Wを加えました。

「そこに、熱Qと、仕事Wを加えました。」

指示 . 14

すると内部エネルギーUがU2になりました。

「すると内部エネルギーUがU2になりました。」

指示 . 15

先生の指す場所を見て、みんなだけでいいます。

  1. 容器内に気体が閉じ込められています。
  2. 始め、この気体の内部エネルギーUはU1でした。
  3. そこに、熱Qと、
  4. 仕事Wを加えました。
  5. すると内部エネルギーUがU2になりました。
指示 . 16

この図を写しなさい。
自分で自分に説明しながら書くんですよ。

机間巡視をして、一人一人の様子を観察する。
ちゃんと声を出しながら書いている生徒がいたら、必ず取り上げて褒める。「言いながら書いている人がる。こういう人は力がつくぞ」
図を丁寧に書いている生徒も取り上げて褒める。「頭の中にも丁寧に記憶が作られている」
やらない生徒には軽く促す程度で良い。
進行状況を確認する。「書き終わった人?説明練習していなさい。まだの人、急げ」

指示 . 17

もう一度。
先生の指す場所を見て、みんなだけでいいます。

教師は順番に黒板を指さし、生徒に説明をいわせる。

  1. 容器内に気体が閉じ込められています。
  2. 始め、この気体の内部エネルギーUはU1でした。
  3. そこに、熱Qと、
  4. 仕事Wを加えました。
  5. すると内部エネルギーUがU2になりました。

ノートの図を指差しながら、お隣に説明します。
終わったら交代。
始め。

全体練習をしたあとだから、ペア練習への意欲が高い。
パッと向き合って、説明し合う様子が見られるはずである。

2-3.中心課題 熱力学第一法則を数式で表現する

言葉の説明を数式で表現する

指示 . 18

図を見て、U1、Q、W、U2の関係を式で表します。
ご近所で相談。
終わったら、ノートに書きます。
できたら、できました(と言いなさい)。

相談やノート作業の様子を見守る。
3分あれば、終わる内容である。
見計らって、打ち切る。

指示 . 19

発表できる人?
どうぞ。

「 U1+Q+W=U2 」
生徒の発表を聞いて、板書する。
同じ人?
正解です。図を見ただけで、これがわかった人は天才です。

説明 . 6

等式変形します。

板書

U2-U1=⊿U=

⊿は変化したということを表す記号で、既出である。
生徒が忘れているようであれば、説明する。

指示 . 20

続きを発表。

板書

U2-U1=⊿U=Q+W

素晴らしい。よくわかったな。
等式変形に慣れてない生徒が相手なら、どれだけ褒めても足りない。

説明 . 7

この式を熱力学第一法則といいます。
図で説明できてもいいし、文章で説明できてもいい。
式も、図も、文章も同じ内容を説明しています。

板書
U2-U1=⊿U=Q+W

熱力学第一法則
指示 . 21

式を写しなさい。
書けたら、書けました。

指示 . 22

みんなで読みます
さんはい。

「 U2-U1=⊿U=Q+W 」
「熱力学第一法則」
よし。

3.熱力学第一法則への理解を深める

説明 . 8

この図の矢印の向きはとても大切です。
この矢印は、2本とも、気体の中に入る向きを表しています。
数式では、+で表します。
だから、丁寧に書き表すと、こうなります。

板書

U2-U1=⊿U=(+Q)+(+W)

つまり、
加熱されて、熱を受け取ると、Qは+で、内部エネルギーが増加する。
圧縮されて、仕事を受け取ると、Wは+で、内部エネルギーが増加する。

発問 . 7

Qが負の値なら、⊿Uは増えますか。減りますか。
みんなで、さんはい。

「減ります」
その通り。よくわかったね。

指示 . 23

Qが負になる現象の例を挙げます。
ご近所で相談。
見つかったら、ノートに書きます。

ノート作業の様子を見守る。
鉛筆の動く様子がない生徒には、
例を書くんですよ
と声かけをする。
半数以上が書き終わっていれば、
そろそろ打ち切ります
と予告しておいて、打ち切る。

指示 . 24

発表してください。

「冷やす」「冷ます」「放熱」などが答えられればよい。

発問 . 8

次、先生は何と言うでしょう。
予想がつく人?

指示 . 25

口々にどうぞ。

<次に先生が言うことを予想させる>ということを折に触れてやっておくとよい。
どんどん言わせる。
「Wが負」
この答えが出れば○。うんと褒める。
30秒以内に出なければ、教師から言う。

発問 . 9

Wが負なら、⊿Uは増えますか。減りますか。

指示 . 26

さんはい。

口々にどうぞ、で発表させてもよい。
「減る!」
正解。

指示 . 27

Wが負になる現象の例を挙げます。
ご近所で相談。
見つかったら、ノートに書きます。

対応はQが負の時と同じである。
「膨張」「ピストンを引く」などが出ればよい。