子どもの絵の失敗をカバーする方法
子どもの絵がぐちゃぐちゃになったとき、絵を蘇らせる方法です。画用紙の汚れ・破れにも応用できます。

酒井式で『しゃぼん玉』の絵を描かせた。
【素材】 淡い色の色画用紙(うぐいす・クリーム・水色などから子どもが1色選ぶ。)
クレパス(黒またはこげ茶のどちらか)
水彩絵の具(赤・黄・青・白の4色)
みんな次々と完成していく中で、ハプニングが起きた。
出来上がり間近になって、1人の子が、失敗した部分をクレパスで塗りつぶしてしまったのだ。
絵が苦手で、途中何度も「どうすればいい?」と聞きに来た子だった。また、身の回りの整頓が苦手で、絵まで汚れまみれていた。そのたびに「うまくできているから、そのまま描いていいよ」と励ましてきたが、友達の絵を見て、どうしても納得がいかなくなったらしい。
せっかく彼の苦労した絵が、台無しになってしまった。
試しに「もう一度描いてみる?」ときき、新しい画用紙を与えた。すると、先に指導した絵とは似ても似つかぬ、マンガのような下描きになってしまった。これは失敗だった。即やめさせた。
以前、5年生の指導途中の絵を引き継いだとき、構図をうまくとるために、始めに描いた花の部分だけを切り取り、別の紙に貼り付けられていたことを思い出した。これだ。
しかし、子どもの絵に自分がはさみを入れることに、とても抵抗があった。
本当に切り貼りをして、いいのだろうか。
不安になって、美術が専門の堀田実氏(TOSS愛知教育サークル)に伺った。すると、
「ごちゃごちゃになっちゃったから、いいところだけ切ってはったよ」
ということでいいのではないでしょうか。
2年生ですし。
というお返事だった。
ここで初めて決心がつき、
うまくかけている部分を切り取り、
同じ色の色画用紙に貼り付けることにした。
昼休みのだれもいない教室で、さっそくその子を呼んで、相談してみた。
うまくかけている部分と、失敗した部分とを確認した。
その上でまた聞いた。
失敗したところ、全部とってしまってもいい?
本人の了解を得て、切り貼り作業はクラスの子の見ていない職員室でおこなった。
彼にもプライドはあるだろう。
蘇った絵を、翌朝その子に見せた。
どう? これでいい?
その子は、とてもうれしそうににっこりしてうなずき、そのまま運動場に走っていった。
クラスのほかの子はだれも知らない、2人だけの秘密になった。
その後、汚かった彼のノートの字が、びっくりするほどきれいになった。