「やませ」の要因を「理科的な見方・考え方」を働かせて考える
地理的分野では、気象の発生と人々の生活を結びつける内容が多い。その気象がなぜ起こるのか、どう影響を与えているのかを授業化するためには、理科の知識や「理科的な見方・考え方」が不可欠な時がある。「やませ」を事例に、教材研究の進め方を提案する。

1 「やませ」とはなにか。
東北地方や北関東地方で夏に吹く北東の冷たい風が「やませ」である。その冷たい風から起こる冷気は、夏の東北地方の稲などを冷やすなど、農作物の成長に打撃を与える。その打撃は昔、人々の食料難を招き、飢餓を引き起こすことが多々あった。
2 「やませ」はなぜ起こるのか。
冷たい風「やませ」は、北東から吹いてくる。北東では、オホーツク海高気圧が見られる。オホーツク海高気圧は寒冷な性質のある勢力が強まる
ことで起こる。
発生の流れは、以下の①から③である。
①西からの偏西風の蛇行が大きくなる(図参照)
②南北2つ偏西風がぶつかると、一部は南の方に押し出され、オホーツク海高気圧が生まれる。
※高気圧だがオホーツク海上だから冷たくなる。
③オホーツク海高気圧から吹き出す冷たく湿った風が東北地方などに吹き荒れる。

この“冷たく湿った風”を東北地方の人々は「やませ」と呼んだ。「やませ」は、北海道から東北地方、北部の関東地方に冷気を吹きつけ、気温低下や日照不足をもたらす。また、教科書にもあるように、東北地方では主に米づくりに打撃を与えた。そのため、この「やませ」に負けない米づくりに向けて、東北地方の農業では、米の品種改良などが始まった。
なお、「やませ」を引き起こすオホーツク海高気圧は年々変動が大きくなっている。しばしば出現する年とほとんど出現しない年があり、一帯の夏の気象や天候を決める要因となっている。このように、「やませ」など地理的事象及び気象がな
ぜ発生するのかを「理科的な見方・考え方」をいかした教材研究をすることで、生徒にとって地理の授業がより面白くなったとの実感がある。